2018年04月04日

Paperback Cover Design Gallery (4) ポストモダン前夜の名作をタイポグラフィで



April is the cruellest month, breeding
Lilacs out of the dead land, mixing
Memory and desire, stirring
Dull roots with spring rain.


四月は最も残酷な月、死んだ土から
ライラックを目覚めさせ、記憶と
欲望をないまぜにし、春の雨で
生気のない根をふるい立たせる。

T.S. エリオット「荒地」(I. 死者の埋葬)、より (岩波文庫 p83 / 岩崎宗治訳)

"The Waste Land" T. S. Eliot
https://www.poets.org/poetsorg/poem/waste-land



「四月は最も残酷な月」で始まるインパクトのある「荒地」の冒頭。ちょうど四月に入ったこともあり、ふと、この部分を思い出した。今回は、このエリオットの「荒地」を起点に、20世紀初頭、ポスト・モダン前夜の文学を象徴する有名な作品のブックカバーの中から、ユニークなタイポグラフィ・デザインのものを選んでみた(フランケンシュタインは19世紀モノになるけれど、古典ということで)。


– Paperback Cover Design Gallery vol. 04–

TS.Eliot-WasteLand-Joyce-FinnegansWake.jpg

T.S.エリオット「荒地」(1922) W.W. Norton社のLiveright Classics版ハードカバー
世界で最も有名な詩人のひとり、T.S.エリオットの代表作。英語圏では、これを読まずして現代文学を語れないほど大きな存在なので、一度原文で読んでみなければいけないな、と思いながらも今のところ日本語訳で済ましたままでいる。元詩だけだとさほど長いものではないが、岩波文庫に目を通すと、注釈だけでも一冊の半分以上のボリュームがあって、やっぱり、英語で読もうという気は薄れてしまう。イタリアの未来派を連想させる、モダンなタイポグラフィ。
ザ・フーの名曲「Baba O'Riley」の歌詞はこの「荒地(The Waste Land)」を意識しているといわれている(サビの部分はそのままやもんね)。


ジェイムズ・ジョイス「フィネガンズ・ウェイク」(1939) ペンギンブックスの電子書籍版
世界で最も難解な小説を挙げろといわれたら、必ずこれが一番最初にくるだろう、という位に理解しがたいことで有名なジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」。言葉遊びや造語・引用が複雑に交錯しているので、まるでアルファベットを使った暗号文みたいだ。そのため、翻訳もほぼ不可能に等しく、なんて厄介なものをジョイスは書いたんだろうと思いながらも、いずれは読んでみたい本の一つとして、みなの記憶の片隅にしっかり存在しているような、そして結局そういう存在のまま終わってしまうような、非常に不可解な小説。という教科書的な予備知識を知っていると、この表紙デザインにおけるタイポグラフィーは、人の脳の中で幾重にも言葉が重なり、また思考が分裂してゆくだろう「フィネガンズ・ウェイク」の本質的な部分を上手く視覚化しているようにみえる。電子書籍だけじゃなく、紙の本もこのデザインにしてほしいな。


* 画像は右リンクより:http://tagong-boy.tumblr.com/post/172518262181/

Kafka-Metamorphosis-MaryShelly-Frankenstein.jpg

フランツ・カフカ「変身」(1915) W.W. Norton社のペーパーバック版
何年か前に、カフカ「変身」の英語版新訳として出され、映画監督のデヴィッド・クローネンバーグが序文を寄せていたこともあって少し話題になったこのバージョン。2000年はじめ頃にペンギン・モダン・クラシックスのデザインを手がけたジェイミー・キーナンがこの表紙をデザインしている。小説の主人公グレゴール・ザムザが変身してしまった「虫」の姿を、16世紀前後の古いイタリアの装飾書体を用いて、グロテスクかつ同時に美しいシルエットに仕上げ、また昆虫特有のディティールをも上手く表現している。これほどアイデア溢れるタイポグラフィはなかなかそう見れないだろうと思う。個人的に、最も優れたブック・デザインの一つじゃないだろうか、と。そして、カフカのこの表紙デザインについては、近いうちに詳しくやろうと思っているので、今回はさわりだけ。キーナンがデザインしたペンギン・モダン・クラシックスのデザインについては以前、記事訳の際に書いたことがあり、興味ある方は下記記事を参照ください。
尚、このペーパーバックは日本のアマゾンでも買えるが、著者名とタイトルだけの検索ではけっこうヒットしにくいので、「W.W. Norton / Kafka / Susan Bernofsky」等のキーワードを入れて探すとすぐに表示されると思う。

海外記事訳:「ペンギン・モダン・クラシックスのデザイン史(2)」
http://tavola-world.seesaa.net/article/penguin-modern-classics-design-history-2.html


メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」(1818)
ポーランドのグラフィック・デザイナー、Maciej Ratajskiさんデザインによるブック・カバー。この表紙の本、オンラインショップなどで見当たらないため、もしかすると実際に出版されいるものではなく、単にグラフィック作品として制作されたものかもしれない。あるいはポーランドで小部数刷られ、限定的に流通しているのかもしれないが詳しくはわからない(小説自体はパブリック・ドメインになっているので自費制作で製本することも可能だ)。フランケンシュタインの本はさまざまな表紙で沢山の種類が出回っているが、そのわりに今一ついいものが少ない。これはあまりにもいいタイポグラフィだったので紹介したかった。この小説はポスト・モダンとは言えないが、かといって二世紀前に書かれたとも思えないほど現代的なところもある。映像化されたり、テーマを引継いだ新たな作品が数多く作られているから身近に思えるのかも。


プロジェクト杉田玄白 趣意書(山形浩生)
http://www.genpaku.org/sugitaidea.html
「フランケンシュタイン」は青空文庫にもあって、翻訳のパブリックドメインのことを調べていたら山形さんの面白い記事をみつけた。膨大にある古典書物の翻訳をどうやって今の時代に出してゆくのか、にはじまり日本の(文芸系)翻訳出版界のことなどなど。


いまの翻訳が進歩しないのは、翻訳者がえらい先生づらして、翻訳も作品でございというような気分でいるからだ。「あたしの翻訳いじってくれるな」ではいつまでたっても先にいけない。翻訳なんか、作品でもなんでもないぞ。もっともっと機械的なものだと思う。それに、いろんなえらい先生だの作家だのがやった翻訳って、そんなにうまくないぞ。



2018年04月01日

Ribbon Collar Shirt

RibbonCollarShirt-Mar-2018.png
Ribbon Collar Shirt
(Mar. 2018 / 148 x 210mm) Ink and Digital Effects

画像大きめ版: (PNG - 1.2MB) http://tagong-boy.tumblr.com/post/172449008841/

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2018年03月27日

世界の鉄道:住宅地を走る列車(コスタリカ)

Train-SanJose-CostaRica-1.jpg
* 下動画からのキャプチャー画像


いや、これびっくりした。コスタリカの首都サン・ホセを走る「Incofer」という鉄道。一見ごく普通の住宅地、ここはおそらくメインストリートではなく、一歩奥に入った裏通りのような場所なのだと思う。一般道のすぐ脇に線路が並走していて、柵や仕切りのようなものもないせいで、列車がやってくると何かちょっと違和感が。ここを閑静な住宅街、と言っていいんだろうか、少し考えてしまう。トラムが市街中心部の幹線道路を走っているのなら、まだ見慣れた光景だけれども、さすがにこれは不思議な感じがした。中南米って、あまり鉄道が発達してる印象がなかったせいで、余計に驚きの振れ幅が大きくなったような。
現在四つの路線があって、通勤列車(Commuter trains)と貨物列車が同じ路線を共有しているとか。運賃は1000〜1500コロン(1ドル=約560コロン)だそうで、日本円換算だと180〜280円弱となる。思ったよりも高かった。コスタリカって案外物価高めなのかも。



Train in San José, Costa Rica


Train-SanJose-CostaRica-2.jpg
https://www.youtube.com/watch?v=xrhmgHHI-Fc

RouteMap-Incofer-SanJose-CostaRica.jpg
Route Map of the Commuter Train (from wiki)


Incofer
http://www.incofer.go.cr/

Rail transport in Costa Rica - wiki
https://en.wikipedia.org/wiki/Rail_transport_in_Costa_Rica

Traveling with Pets in San José, Costa Rica >> Buses & Trains
http://www.toursanjosecostarica.com/news-from-the-barrio/previous/2

posted by J at 09:00| Comment(0) | 世界の鉄道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする