2017年10月29日

海外記事訳:「ペンギン・モダン・クラシックスのデザイン史(1)」


PenguinModernClassics-cover-1961-1963-1966.jpg
左)1961年、ハンス・シュモラーによるペンギン・モダン・クラシックスの最初のデザイン。
中)1963年、ゲルマノ・ファセッティがマーバー・グリッドを用い改良したデザイン。シュモラーに釘をさされていたので、書体の変更はできなかった。ベース・カラーもそのまま引き継いでいる。
右)1966年、ファセッティは書体をヘルベティカに変更し、自分の好きなようにデザインを一新した。
* 画像は下記ペンギンHPの記事より。



一年前だったら、全ページ英語で埋まった本を手にしたとたん、確実にひるんでいたはずだけれども、毎日英語の勉強をしているうちに少しは免疫ができたようで、厚めのペーパーバックを開いたとしてもそう臆することはなくなり、むしろできるだけ沢山読んでみたいと思うようになってきた。とはいっても、まだ一年そこいらでスラスラと読めるようになるわけでは当然ない。相変わらず辞書を引きながらたどたどしく一行一行、いったり来たりを繰り返しながらも、なんとか大雑把な意味はつかめているんじゃないか、という風に自信があるのかないのかはっきりとしない感じだ。ただ、今のところそれが苦にはなっていないという点だけは、ひとつはっきりしている。
東京でも洋書を豊富に揃えている書店というのは限られていて、もちろんそういった数少ない店に毎日通えるわけでもないから、普段はアマゾンやオンラインショップをサーフしながら、画面越しに何か面白そうな本がないもんかと見ているのがけっこう楽しい。良さそうだけどちょっと高いなぁとか、これ専門用語が多そうだから無理だなとか。そんなことを考えながら読みたい本を探していると、大抵ペンギン・モダン・クラシックスから出ているものに当たってしまう。もし同じタイトルで別出版社のものがあったとしても結果、無意識にペンギンの方を選んで購入してしまったりする。本のテキストは同じだから誰が序文を書いているか、だったり編集やデザインの違いが、購入するか否かの分かれ目にきっとなるのだろう、そういう点でもペンギンの本は良く出来ているなぁと思う。特に最近のペンギン・モダン・クラシックスのペーパーバックは、選択肢のひとつでもあるデザイン面で、上品さとシャープさを備えているような印象がある。
知らない作家や気になったタイトルがあったときなどは、ときおりその本の出版社のHPに飛んでいき、そこで簡単な紹介文を見たりしてもう少しディティールを知る。いつだったか、ナボコフの本を調べていたときにペンギンのHPをのぞいたら、タイミングよくペンギン・モダン・クラシックスのデザインの歴史を紐解くといった感じのシリーズ記事が目にとまったので、すごく興味がわいた。ペンギン・ブックスのデザインに関しては研究本が出たり、詳しいWebサイトがあったりするので、以前から気にはなっていた。今回は全3回あるその連載記事のはじめ<パート1>を部分、訳しながら読んでみたいと思う。
記事の中にもあるが、モダン・クラシックスは約半世紀前の1961年に誕生した。タイトルを増やしながらも、何年かおきにデザインや名称を変えつつ今に至っている。その時代に見ているデザインというものは、おそらく時流に合ったものだから、それが時代を反映しているかなんてことは意識してもわからないものだろうが、十年、二十年と経ってくると、ちょっと古いなぁとか、なんとなくそれが出版されていた頃の雰囲気を感じ取れるもので、Decade 単位で振り返ってみると面白い発見があるようにも思う。今見ると、相当に古さを感じる誕生当時のモダン・クラシックスのデザインも、当時はすごく斬新で新鮮だったのかもしれない。1960年代を想像しながら改めてこのペーパーバック・シリーズを見直してみるのもまた楽しいんじゃないかと。



■ 「ペンギン・モダン・クラシックスのデザイン史(1)」 ( 1961 - 1980 )
Designing Penguin Modern Classics (Part 1)

Japanese translated by Tagong-Boy ( Original text from Penguin HP )
https://www.penguin.co.uk/articles/on-writing/cover-story/2017/may/penguin-modern-classics-design-part-1/


ペンギン・モダン・クラシックスのデザイン史を祝す3回シリーズの記事、第一弾は、ペンギン・クラシックスのクリエイティヴ・エディターを務めるヘンリー・エリオットがこの象徴的なシリーズのルーツを探る。


1961年4月、「ペンギン・モダン・クラシックス」という新たな装いと新しい名前で4つのタイトルがペンギン社から出版された。ソーントン・ワイルダーによるジュリアス・シーザー暗殺にまつわる書簡体小説「三月十五日 カエサルの最期」。カーソン・マッカラーズによる「心は孤独な狩人」は、アメリカ・ジョージア州の田舎に住む耳が聞こえず口のきけない主人公の話。ナサニエル・ウエストによるニューヨークの報道局を舞台にしたブラック・コメディ「孤独な娘」。そして、ロナルド・ファーバンクの「Valmouth」は、英国南海岸の海水浴場にいる百歳を超えたお茶目な女性たちの物語。 はじめから、タイトルのセレクションは大胆かつ自信に満ち国際的だった。
In April 1961 four titles were published by Penguin with a new look and a new name: Penguin Modern Classics. They were The Ides of March by Thornton Wilder, an epistolary novel about the assassination of Julius Caesar; The Heart is a Lonely Hunter by Carson McCullers, about a deaf mute in the rural US state of Georgia; Miss Lonelyhearts by Nathanael West, a black comedy set in a New York newsroom; and Ronald Firbank’s Valmouth, a story of naughty centenarian ladies in a seaside resort on the south coast of England.
From the beginning the selection of titles was 'bold, confident and international'.



マーガレット・ドラブル(英作家)なら30年後の1992年にこのシリーズをこう評するだろう。 今日、再び30年がたち、このシリーズはまだしぶとく自信にあふれ、前世紀の偉大な作家たちを読者に紹介する国際的なタイトルがさらに増えている。 最初のジャケットはタイポグラファーのハンス・シュモラーによってデザインされた。彼はダヴグレイ(紫がかった灰色)、オレンジ、白と黒の差し替えができるパレットで水平のグリッドを作った。シュモラーはエリック・ギルの書体「ジョアンナ」を用い、デザインは大胆なモノクロイメージを出すために空間の余裕を出した。ギルはジョアンナを「装飾的な要素が一切ない」と評した。彼はとりわけこの書体が好きだった。ギルは末娘の名をとり、その書体をジョアンナと名付け、1931年に発表した論文「タイポグラフィに関するエッセイ」の背景にこのジョアンナを選んだ。そして「タイポグラフィに関するエッセイ」は2013年にモダンクラシックスのリストに加わった。
This is how Margaret Drabble would describe the series three decades later in 1992. Today, almost three decades later again, the series is still bold and confident, with increasingly international titles that introduce readers to the greatest writers of the last century. The first jackets were designed by the typographer Hans Schmoller, who created a horizontal grid with an interchangeable palette of dove grey, orange, black and white. His design allowed space for bold, monochrome images and he used Eric Gill’s typeface Joanna. Gill described Joanna as ‘free from all fancy business’. He was particularly fond of this typeface: he named it after his youngest daughter and selected it to set his 1931 monograph, An Essay on Typography - which joined the Modern Classics list itself in 2013.

EricGill-EssayOnTypography.jpg
現在出ているエリック・ギル「タイポグラフィに関するエッセイ」のペーパーバック版表紙。正味140ページ弱とけっこう薄い。デザイナーの間ではけっこう有名な本だが読んだひとはそう多くはないと思う。僕も未読。河野三男さんによる邦訳版「評伝 活字とエリック・ギル」が朗文堂から出ているみたいだ。
* 画像は Amazon.co.jp より。



1963年10月、ペンギン社のアート・ディレクター、ゲルマノ・ファセッティはデザインを改良した。彼はシュモラーのオリジナルである青味がかったグレーの配色をそのままにしたが、残りをマーバー・グリッドに置き換えた。この(新しくなった)デザインはよりすっきりと、そしてアートワーク用の空間に余裕ができた。 マーバー・グリッドは、ペンギン・クライムシリーズのカバーのために、ポーランド人デザイナー、ロメク・マーバーによって考案された。しかし、それはとても用途が広かったので、すでにペリカン社や小説のタイトルにも採用されていた。 ファセティはモダンクラシックスの書体を変更したがっていたが、最初のうちシュモラーはジョアンナを使うよう、彼を強く説得した。1966年3月になってから、ファセッティは自分の思い通りにデザインした。彼はジョアンナをヘルベティカに置き換え、モダン・クラシックスを新しくなったペンギン・クラシックスのデザインと同調させるためにタイトルと著者名をカバーの上に押し上げた。

へルベティカは1950年代にハース鋳造所によって開発されたスイスの書体だ。元々はハース・グロテスクと呼ばれていたが、1960年に、スイスのラテン語名であるヘルヴェティアに着想を得て、より魅力的なヘルベティカという名前になった。 色の組み合わせは自由度が増した。上部のパネルは白、黒、トレードマークの緑灰色で変化し、アートワークがカバー全体を占めるときにはなくなる場合もあった。 落ち着くまでに時間は要したが、こうして、このペンギン・モダン・クラシックスのデザインは次の15年間は変わらずにいた。
In October 1963, the Penguin Art Director Germano Facetti refined the design: he retained the bluish-grey colour scheme of Schmoller’s original, but reset the covers using the ‘Marber Grid’, which was cleaner and allowed more space for artwork. The Marber Grid was devised by the Polish designer Romek Marber for the Penguin crime covers, but it was so versatile it had already been adopted for Pelican and fiction titles too. Facetti wanted to alter the Modern Classics typeface, but initially Schmoller persuaded him to stick with Joanna. It wasn’t until March 1966 that Facetti got his way. He replaced Joanna with Helvetica and pushed the title and author name further up the cover, to bring Modern Classics in line with the updated Penguin Classics design.
Helvetica is a Swiss typeface, developed by the Haas type foundry in the 1950s. It was originally called Haas Grotesk, but the more attractive name Helvetica was adopted in 1960, inspired by Helvetia, the Latin name for Switzerland. The colour scheme became looser. The upper panel varied between white, black and trademark green-grey and in some cases disappeared altogether when the artwork filled the entire cover. Having taken a while to settle down, the design of Penguin Modern Classics then remained unchanged for the next fifteen years.


MarberGrid-PenguinCrimeSeries.jpg
マーバー・グリッドを使ったペンギン・クライム・シリーズのフォーマット。
* 画像は右リンクより: https://needmoredesigns.com/history-of-the-marber-grid/


Penguin by Illustrators: Romek Marber (Creative Review)
https://www.creativereview.co.uk/penguin-by-illustrators-romek-marber/


(2)へつづく


ヘルべティカを使った企業のロゴ
Helvetica-Logos.jpg
ヘルベティカは世界で最も良く使われているベーシックなフォントの一つで、公共機関のサインや企業のロゴで見ることが多い。(* 画像は右リンクより:http://tagong-boy.tumblr.com/post/166847142686/


スイスの切手
Stamp-SwissPost-Helvetia.jpg
スイスの切手やコインは「Switzerland」や「Swiss」ではなく現在も「ヘルヴェティア」表記のまま。
日本でいうと倭国や邪馬台国みたいな言い方になるのかな。
(* 画像は右リンクより:http://tagong-boy.tumblr.com/post/166873119136/






posted by J at 07:00| Comment(0) | 海外記事を英語で読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月25日

Her glancing eyes

HerGrancingEyes-Oct-2017.jpg
" Her glancing eyes "
( Oct. 2017 / 257 x 364mm ) Acrylic and Coloured Pencil on paper


画像大きめ版: (JPG - 2.1MB) http://tagong-boy.tumblr.com/post/166178333121/

posted by J at 09:00| Comment(0) | ■ Drawings | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月19日

歌詞和訳:"Gravity" by Anekdoten


Gravity - Anekdoten

北欧スウェーデンのプログレ・バンド「アネクドテン(Anekdoten)」。
Anekdoten は英語の Anecdote にあたるスウェーデン語で、話や奇談の意。バンドについてはあまり詳しいことは知らず、とくに追いかけて聴いていたわけでもないんだけど、この「Gravity」という曲がほんと好きで、聴きはじめるとけっこうエンドレスになっていることが多い。2003年6月リリースのアルバムより。
もし、全盛期のキング・クリムゾン(アルバムで言うと「暗黒の世界」から「RED」にかけて)が、タイムスリップをして、現在にやってきたらきっとこんな感じの音で演奏をしていたんだろうなと思ってしまう。メロトロンの大洪水をバックにして、歪んだギターと泣きのメロディが足踏み合わせ重戦車のごとく突き進んでいく感じがけっこうたまらない。
今回訳詞では、重厚でドラマチックな音楽に合った幻想SF風の神秘的な歌詞に合わせ、各単語もそれらに見合った意味合いになるよう、かけ離れない程度に少し強調してみた。例えば「fiery angels」は(燃え立つ天使たち → 炎をまとった天使たち)という風に。



アネクドテン「重力」歌詞和訳

Anekdoten "Gravity" - lyrics (songmeanings.com)
http://songmeanings.com/songs/view/3530822107858715614/
メロディに合わせた詞の改行・分断はせず、なるべく意味の通る一つの文になるようにした。
またコーラス・パートやサビのリフレイン等で歌詞が重複する箇所は省いてます。



Soon an angel's leaving, they're ruled by laws of gravity.
Soon this door is closing and you'll never know unless you go.
No, you'll never know if you won't go.
Wishing well of wonders, glitter box of dreams inside lie bitter pills.
You know I never wanted to sing for your lover,
but the angels sang of love and outside the night was falling.

間もなく一人の天使が去り、重力法の支配下となる。
すぐにこの扉は閉まり、君は行かなければ分からない。
そう、もし行かないのなら決して分からないだろう。
奇跡の願い井戸と、苦い薬の入ったキラキラ輝く夢の箱。
僕が君の恋人のために歌いたくなかったのはわかるだろ。
天使たちは愛を歌い、外はすっかり夜になっていた。

* laws of gravity : ニュートンの万有引力の法則の英語綴りは「Newton's law of universal gravitation」。歌詞では、laws of - となっているので、法律・法令の意味でとった。


Fly - fiery angels, kiss the sky, won't you shine your light down on me?
Fly - through the blazing cosmic eye, no, you'll never know if you won't go.
Eleven ways to lose your mind, seven ways to shine,
four doors that may take you in, one that's closed behind.
I should have seen you leaving but I never thought you'd go.
No, I never thought you'd walk away.

さぁ飛んでゆけ! 炎をまとった天使たちよ。限りなく空高くへ。その明かりで僕を照らしてくれないか。
さぁ飛べ! めらめらと燃える宇宙の目を突き抜けて。しかし、行かないのなら決して分からないだろう。
正気を失うための11の方法。そして輝くための7つの方法。
君を引き入れる4つの扉。後ろで1つが閉まった
君が去るのを気付くべきだった。しかし、行ってしまうとは決して思わなかったんだ。
そう、君がどこかへ行くだなんて考えはしなかった。

* 「11」と「7」と「3」 : 出てくる数字には何かの意味があるんだろうな、と思い考えてみたら、この三つはちょうど素数だった。三番目に登場する4つの扉は1つが閉まったわけだから、開いている扉は残り3つということになる。見えない法則だったり、神の定めた規律(逆らえない運命)みたいな意味合いを示しているのかもしれない。


It's getting dark, too dark to see and angel's a long time gone.
Too many things I can't combine with logic reason.
How can I tell the black from white if all is black and blue?
God knows where I'm going when the keeper waves me through...

暗闇が訪れ、何も見えない。帰りの遅い天使。
つじつまのあわないことが沢山だ。
もしすべてが黒と青(全身あざだらけ)なら、どうやって、善悪の判断をつけられるんだ?
番人が僕に手を振り通してくれるとき、僕がどこへ行くのかは誰もわからない。

* tell black from white : 「善悪の判断をつける」(直訳:白と黒を見分ける)
http://eow.alc.co.jp/search?q=%5Btell%5D+(A%7C%7B1%2C2%7D)+from
このイディオムと続く「black and blue(あざになるの意)」の箇所は、色と二つの意味がかかった言葉遊びになっているんだろうな。






Anekdoten - Gravity ( Live at Progressive Circus, Malmö, Sweden 2016 )
https://www.youtube.com/watch?v=EHGY8qknbmY
このライヴ・ヴァージョンもすごくいい。



これまでに歌詞を訳したミュージシャン一覧: タイトルが、だいぶ充実してきた。

The Cure(ザ・キュアー) / Jannine Weigel(ヤンニーン・ワイゲル) / SAHA(サハ)
Wire(ワイヤー) / New Order(ニュー・オーダー) / The Wake(ザ・ウェイク)
Porter Robinson & Madeon(ポーター・ロビンソン&マデオン) / Felt(フェルト)
Charity Children(チャリティ・チルドレン) / Angel Olsen(エンジェル・オルセン)
Robert Wyatt(ロバート・ワイアット) / Eno-Moebius-Roedelius(イーノ・メビウス・ローデリウス)
Anekdoten(アネクドテン)


posted by J at 09:00| Comment(0) | 洋楽の歌詞和訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする