2018年04月28日

歌詞和訳:"The Mother We Share" by Chvrches


"The Mother We Share" by Chvrches (HostessEntertainment)
日本向けオフィシャル。だけど画質が悪いので、高画質版で見たい方は下記アドレスを。

https://www.youtube.com/watch?v=7uj0hOIm2kY


いや、やっと大好きなチャーチズの歌詞がひとつ訳せて(しかも初めて)、ちょっと自分の中では感慨深いものがある(少し大げさに言い過ぎたかな)。まぁでも、この「The Mother We Share」はとても思い入れのある曲な上に、歌詞も遠まわしな表現を使って書いている感があって、実際何のことを言っているのかつかみづらく、訳すのにけっこう時間がかかってしまった。歌を流し聴きする中で、目や耳で歌詞を追っているときは、頭の中で言葉の意味いくつかはなんとなく絡み合ったりはするが、実際日本語にして書き出すとなると何かしら一つの語に置き換えないといけないし、他にもいろいろ難しい箇所がでてきたりなかなか納得いく歌詞訳にならなかった。また自分の頭の中にあるうちは、誰にも知られないから違っていてもそれでいいんだけど、こうしてつたないながらもネットに書くと、やっぱり誰か上手な人や詳しい人の目に触れる可能性もあるわけで、それは見えないプレッシャーとして冷や冷や感じていたりもする。

で、歌詞の話を続けよう。おおよそはおそらく、同じ方向を向いて一緒に歩んでいた二人が、何かをきっかけにそれぞれ別の道を歩むことになり、互いの結論を出すにいたるまでに経てきた時間・葛藤のことを歌っているのだろうと思う。きっと男と女の恋愛の結末、が主だったんだろうけれども、直接的な表現を使っていないのと、置き換えている言葉やフレーズの説明が明確でないので、もう少し広い解釈での人と人の関係として捉えることもできるんじゃないかと。MVは歌詞や曲のテーマから映像を制作している場合も多いから、何かそこにヒントはないだろうか? と見返してもみるが、何か大事なものを喪失し心にぽっかり穴の空いた女の子が、時空を越え別な世界へ行く、といったファンタジーっぽい世界を描いていて、あまり参考にはならなかった(映像自体はメランコリックですごくいい)。また、海外のLyrics Siteにあるコミュニティなんかをのぞいてみると、チャーチズの歌詞はほんと沢山の解り方をする人がいて、でも決定的にコレだ! というのは出てなかったりする。
この曲は特に "The Mother"の意味が難しく、母たるもの、母性、源、根源、核心といったところが近いのだと思い、そこから、二人の間で共有し大事にしてきた普遍的な価値感、のようなものを指しているんだろうなと解釈した。この箇所は「私たちが共有する核たる部分」という風に訳している。

何年か前まで、僕の音楽に対する興味は、2000年位でぱったりと止まっていて、それ以降のものには全く何の関心も持てず何を聴いても同じように聴こえつまらないなぁと思ってばかりだった(それは音楽だけじゃないが)。そうした状態が随分と長い間続いていたんだけれども、チャーチズの歌うこの「The Mother We Share」を聴いたとき、そうした気持ちが一気に崩れた。なので初めて聴いたときは本当に衝撃的で、高校生だった頃の、知らない音楽ばかりが次から次へと現れるような、何を聴いても新鮮にみえた当時の感覚に近いものがふっと戻ってきた感じがあった。だから、この曲を聴くたびに、なにか今の時代の接点をつなげてくれたというか、ホコリをかぶっていた好奇心を呼び戻してくれたというか、まだ新鮮な気持ちを持てるんだという自信のようなものがわいてくる。


チャーチズ「ザ・マザー・ウィ・シェア」歌詞和訳

Chvrches "The Mother We Share" - lyrics (songmeanings.com)
http://songmeanings.com/songs/view/3530822107859445636/
メロディに合わせた詞の改行・分断はせず、なるべく意味の通る一つの文になるようにした。
またコーラス・パートやサビのリフレイン等で歌詞が重複する箇所は省いてます。



Never took your side, never cursed your name.
I keep my lips shut tight until you go oh.
We've come as far as we're ever gonna get
until you realize that you should go.

君の味方はしなかったし、名前を呪ったりしなかった。
君が行くまでは、一切喋らないよ。
君が進むべき道を決めるまで、私たちは行くつもりでいる場所に立っている。

* keep one's lips tight(口をつぐんで喋らない・沈黙を守る)、 keep one's mouth shut(秘密を守る): 単語ひとつ二つ違いで、同意語がいくつかある。


Come in misery where you can seem as old as your omens

**( or / I'm in misery where you can seem as old as your omens )
and the mother we share will never keep your proud head from falling.
The way is long but you can make it easy on me
and the mother we share will never keep our cold hearts from calling.

予兆と同じくらい君が老いぼれて見えるようで、私はみじめになる。
**(or / 予兆と同じくらい君が古びてみえる場所で、私は苦悩する。)
そして私たちが共有する核たる部分は、君の誇り高い能力が失せてゆくのを防げない
その道のりは長いけれど、大目に見てね。
私たちが共有する核たる部分は、冷え切った心が目を覚ますのを防げはしないだろう。

** What does the line "Come in misery,
where you can seem as old as your omens" mean?
(reddit.com >> Chvrches)
http://archive.is/looO4
このVerseの冒頭部分、「Come in misery」と「I'm in misery」の二種類があって、歌っているのを聴くかぎりでは「Come in misery」というふうに聞こえるのだが、どっちが正しいかはちょっとわからない。上リンクのコミュニティにそのへんのやり取りがある。

* never keep your proud head from falling: この箇所はもう一つ「君が誇る首位の座から転落するのを防げやしないだろう」という感じもいいかなと思った。



In the dead of night,
I'm the only one here and I will cover you until you go oh.
And if I told the truth,
I will always be free and keep a prize with me until you go oh.

真夜中に、私だけがここにいる。君が行くまで、私が君を守るよ。
君が行くまで、もし真実を語ったら、私はいつでも自由になって自分の大事なものを守るだろう。


Into the night for once, we're the only ones left
I bet you even know where we could go oh oh oh
And when it all fucks up, you put your head in my hands,
it's a souvenir for when you go-o-oh.

夜一度だけ、私たちだけ取り残された。
私たちがどこへ行けるのか、君は知っているんだろうね。
何もかもが台無しになるとき、私の思った通り君は頭を抱える。
それが、あなたが行くときの置き土産なの。




CHVRCHES - The Mother We Shareのライヴ・ヴァージョン。


CHVRCHES - The Mother We Share (Live on KEXP) Recorded September 5, 2013

シアトルにあるラジオ局KEXPが主催し、Doug Fir Loungeという小さなクラブで行ったチャーチズのミニ・ライヴ。ユーチューブでは、We Sink / Lies / Gun / Recover / Under The Tide / The Mother We Share と全6曲の演奏が見れる。合間のトークなども含めたフル・バージョンは28分弱あって、各曲ごとにカットされたエディット版動画がそれぞれある。上動画の冒頭はタイトル・ロゴの入った編集がされた上、いきなり「OK?」という声に続き、謎の言葉を放つ変なキャラ声ではじまるが、これは演奏合間のトーク部分の最後がカットされたもの。(SW大好きな)ローレンちゃんがジャワ族か何かの真似をしているところで、めっちゃかわいい(フル・バージョンでは、23'20" あたりから見れる)。下のGIFがそう。
Gif-Chvrches-MotherWeShare-TalkKexp.gif
*右リンクより:https://gifs.com/gif/chvrches-full-performance-live-on-kexp-DRKYwq

CHVRCHES - Full Performance (Live on KEXP)
https://www.youtube.com/watch?v=ipE-tnRh4fE
http://blog.kexp.org/2013/10/03/live-video-chvrches/




これまでに歌詞を訳したミュージシャン一覧: だいぶタイトルが充実してきた。

The Cure(ザ・キュアー) / Jannine Weigel(ヤンニーン・ワイゲル) / SAHA(サハ)
Wire(ワイヤー) / New Order(ニュー・オーダー) / The Wake(ザ・ウェイク)
Porter Robinson & Madeon(ポーター・ロビンソン&マデオン) / Felt(フェルト)
Charity Children(チャリティ・チルドレン) / Angel Olsen(エンジェル・オルセン)
Robert Wyatt(ロバート・ワイアット) / Eno-Moebius-Roedelius(イーノ・メビウス・ローデリウス)
Anekdoten(アネクドテン) / The Wedding Present(ザ・ウェディング・プレゼント)
Courtney Barnett & Kurt Vile(コートニー・バーネット&カート・ヴァイル)
Chvrches(チャーチズ)




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2018年04月26日

世界で最も寂しい図書館


Vector Architects completes a seaside library with board-marked concrete walls
中国の河北省、その最も東部の地区、秦皇島市の撫寧区(戴河大街)にある海沿いの図書館。


ちょっと前に、中国の天津にある、SF映画に出てきそうな図書館のことをUPしたとき、他にも何か変わったのがないかな、とネットを見ていたら、浜辺にぽつーんと建つわびしいコンクリート建築の写真が目にとまった。最初は北欧かフランス北西部あたりにある建物かなぁと思っていたんだけど、たどっていくと、それも中国にある図書館で、世界で一番さびしい図書館、だとかそんなキャッチフレーズが付いていた。潮風にあたるし、本にとっては良くない環境だろうけど、その発想と利便性を無視した立地に無理やり建ててしまうあたりに、中国の「今がよければいい」的な、いい意味での良さを感じた。何でも採算性や収益性を優先し、型にはまったものしか出来ない日本の資質みたいなものとは正反対で、確かに長い人生、安定して安泰な生活を送るにはこの日本的な収まり方はとても大事なものだと思うが、でもそうしたものにちょっと窮屈さを感じて反発した気持ちをもっている自分もいたり。日本にないものが中国にあって、中国にないものが日本にあって、というようなことを、ふとこの図書館を見ているうちに思った。
上の動画は竣工直後に撮ったものだろうから、まだ本が入ってないけれど、それがよけいに物悲しさを感じさせたり、でも動画の撮り方は短篇SF映画のようにストーリー性があってカッコイイ。


Seashore Library / Vector Architects

https://www.archdaily.com/638390/seashore-library-vector-architects
Nandaihe Pleasure City, Dai He Da Jie, Funing Xian, Qinhuangdao Shi, Hebei Sheng
SeashoreLibrary-China.jpg
*画像は上リンクより。


天津のあの図書館(2018年04月13日)
http://tavola-world.seesaa.net/article/458779005.html
posted by J at 12:00| Comment(0) | - Memo - | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月22日

最近読んだ本と読んでる本(2018年3-4月)

book-apr-2018.jpg

「The Finger」ウィリアム・バロウズ
1989年に出版された短篇集「Interzone」から6篇を抜粋し収録した" Penguin Modern "シリーズのミニ・ブック〜2018年版〜。表紙カバーは「ナイルの水」カラーとアヴァンギャルド・フォントを使ったものでかっこいい。今回のこのシリーズはラインナップがめちゃくちゃ良くて、G.オーウェルの「Notes on Nationalism」はじめケルアックや、スーザン・ソンタグなどが出ている。
寝る前に一ページづつ訳しながら地味に読み進めているところ。この頃のバロウズは、さほど難解な文章ではなく、けっこう読みやすい。「Interzone」って邦訳が多分出てないんだよな。


「まるで天使のような」マーガレット・ミラー
これは評判どおりのいいミステリーで、すごくよかった。いや、ものすごくいい。買ったはいいものの二年ほど本棚に入れたままだったけれど、ふと急に手にとって読み始めたら止まらず、一日で読み終えた。
カジノですっからかんになった主人公クインが友人の車に同乗し、途中、知らない場所に降ろされてしまう。近くにあったのは<塔(タワー)>と呼ばれる新興宗教の修道院、そこに寝床と食事を求め入ったところ、ある修道女から人探しの依頼を受け、その人物を見つけようとするが…というはじまりで、プロット、話の展開、セリフ、等々何をとっても読ませてしまう魅力に満ちた文章。ここまでクオリティの高い小説は、そうそう出会えないので嬉しい収穫だった。舞台は冒頭の森の中の修道院から、誰もが顔見知りの小さな町「チコーテ」へと移り、閉鎖的なこの町で起こった過去の事件を掘り返すことになる。アンナ・カヴァンの「氷」とピンチョンの「インヒアレント・ヴァイス」なんかも彷彿させるところがあって、現実的なスリリングさと寓話性の混じったトーンにすごく緊張感があり、読んでいる最中にだれる箇所が一切なかった。ミュージシャンズ・ミュージシャンという言葉があるように、小説家が読む小説、といった感じの完成度の高さ。いや、ほんとすごい。


「謎解きゴッホ」西岡文彦
ゴッホの半生と、絵に秘められた謎を分かりやすく書いた本だが、充実した内容。ゴッホは、激情の感情を持った絵描きだというイメージを持っていたけれども、確かに性格面ではそういった要素があり、それが生き様と奇行エピソードにも現われてはいるが、絵に関していえば、実は超理論派であの激しいタッチの筆使いも厳密な色彩理論を忠実に守ることで生まれていたんだ、というあたりは意外な事実だった(プロテスタント育ちの環境がある種、言動の根っこになってもいた)。そういや本当の天才って、みな理論派で論理的なんだよな。ピカソにダリ、岡本太郎も、マイルスも。


「おもいでエマノン」鶴田謙二・梶尾真治
鶴田さんの絵につられて読んだコミック。原作は梶尾真治さんの小説らしいが、未読。でも、このコミカライズはきっと成功しているだろうなと思えた。旅と時空ものSFファンタジーがうまく混ざっていて、郷愁感と人間の存在って何? っていう哲学的なテーマが読後にじんわり広がり、そうした余韻がたまらない作品。何度も読み返したくなる。


「サンデーとマガジン」大野 茂
サブカルものの軽い新書だと思って、さらっと読むつもりがけっこう密度の高い内容でびっくりした。当時の社会状況、そして今に至る日本の漫画文化の形勢のされ方が、漫画作品とその背景と共に書かれていて、俯瞰すると日本人の嗜好性のようなものも垣間見えて面白い。互いに部数を競い合ういいライバル関係であったからこそ、数々の名作が誕生したのだと。
ぼくは小学校の頃はジャンプ派だったので、サンデーとマガジンはちょっとお兄さん的な存在がして、あんまり読みたいのがなかった記憶がある。この二冊、ジャンプより古かったのかと、いまさら知る。少年ジャンプや他青年誌が誕生する流れに時代が傾いていくあたりまで。


posted by J at 09:00| Comment(0) | - 書籍 - | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする