2017年05月21日

さよならワルツ


Прощальный вальс выпускников

たぶん、この時期恒例、ロシアの卒業生お別れダンスの映像だと思うんだけど、よく見るメイド風衣装じゃなく真っ赤なドレスで踊っているのがすごく優雅でいいなと思って、ちょっとリンクしてみた。撮影と編集も凝っていてクオリティ高いな。
ロシア名物ラストベル(Последний звонокで検索するとローカルな映像たくさん出てくる)。もうはじまってるのかな?
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2017年05月19日

世界の鉄道:岩の間を通過する蒸気機関車(ブルガリア)

BulgarianSteamLocomo-StudenKladenetsReservoir-1.jpg
* 下動画からのキャプチャー


今回は、ブルガリア南東部、ギリシャとトルコ寄りにあるストゥデン・クラデネツ貯水湖(The Studen Kladenets Reservoir / Студен кладенец)のそばを走る鉄道風景。ここは、ブルガリアでは3番目に大きな貯水池なんだそう。ブルガリアの名前はよく耳にするだろうけど、地形をすぐに頭に思い浮かぶ人はそう多くはないと思う。ルーマニアとハンガリーとどっちがどうだっけ? みたいに。このストゥデン・クラデネツ貯水湖場所は、首都ソフィアとトルコ・イスタンブールのちょうど中間地点、よりやや南にある場所といえば、だいたいの位置がわかるんじゃないかと。
貯水湖の水際にはごつい岩があって、それを真っ二つに切り崩し一本の線路が走っている。そのすぐ先にはカルジャリ橋(Кърджали)という橋が架かっている。ここを蒸気機関車が走りぬける光景が、なかなかいい。岩山と静かな湖、そして橋。さらには掘っ建て小屋なんかもあったりして、こうしたものがほぼ一点に揃ったロケーションというのは、鉄道風景としてはよくできた場所だなと思う。この撮影スポット、ブルガリアの鉄道ファンの間ではわりと有名らしく、ユーチューブにはこの近くから撮影した動画がいくつかあった。にしても、あまりにも絵になる要素が揃いすぎていて、鉄道模型のジオラマを見ているような錯覚になる。



Steam locomotive train 03.12 BDZ...


BulgarianSteamLocomo-StudenKladenetsReservoir-2.jpg
БДЖ 46.03 пристига в Кърджали с атракционен влак
*キャプチャーの元動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=VgKBI-u6GF4
季節は初夏? 緑が散らばる景色もまたいい。


List of dams and reservoirs in Bulgaria - wiki
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_dams_and_reservoirs_in_Bulgaria
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2017年05月15日

一本の電話(太陽の都シリーズ)


去年は夏以降、英語訳に気がいってしまったので、けっこう間が開いてしまった「太陽の都」。
#05のつづきです。


Rough Sketch for "Civitas Solis" #05
http://tavola-world.seesaa.net/article/441014049.html




その日、「ビロビジャンの月」編集部は静かな熱気に包まれていた。記者たちが放つ集中力が部屋の中で充満し、室内は焼石を置き並べた木小屋のように蒸し暑かった。十五時をまわって間もなく、部屋の奥に架かる時計の針三本全てが重なったまさにその瞬間だった、編集部に一本の電話が入った。クロームイエローの受話器は耳当て側がやや下に傾きながらも台座から数センチ浮き上がり、ベルの音がフロア全体に鳴り響く。しかし、誰もその音には反応しなかった。いつもなら、呼び出しベルが二回と鳴らないうちに、必ず誰かが我先にと競いあうようにその受話器をとっているはずなのだが、この日、この時間に限っては、まるで部内の全員が一斉に聴覚不全にでも陥った風の態度をみせていた。机の前にいた記者たちは皆、記事の締め切りに追われ、原稿の最終仕上げに取りかかっていたことを誰もが自覚していた。そしてそれを暗黙の言い訳として用意し、まるで、先に受話器に手を伸ばした者が最初の脱落者になるのだといわんばかりの空気を漂わせていた。そんなことはつゆしらず電話はただひたすらに鳴り続ける。

そして、この音に最も早く、敏感に反応したものが唯一いた。天井からするりと糸を垂らした一匹の蜘蛛。埃のかぶった書類の隣に置かれた電話機を最初の着地目標に定め、それをめがけて尻から牽引糸を静かに吐き出したところだった。そして、あと寸前のところで当初の目的を無事果たすところだった。彼の座標計算に全くの不備はなかった。ただ、運悪くその着地点になるはずの電話が突然激しく鳴っただけ。けたたましいベル音は近くの机上にあった全ての書類を震わせた。蜘蛛はこの音にあわてふためき、尻から糸を吐くのを止めた。これがもう少し遅れていたのなら、真下から勢い良く飛び跳ねた受話器にあやうく身体がぶつかるところだった。蜘蛛は身体をねじり反転させ、自分の吐いた糸をつかみとるや、全ての手足を使ってよじ登ろうと懸命に動かす。しかし、あまりにも勢いを付けすぎたせいで、足の鋭い爪でその糸のねじれ構造を裂いてしまった。最高級のヴァイオリンの弦として重宝される蜘蛛の糸だから、簡単にちぎれてしまうことはなかった。しかし、美しい倍音を奏でるはずの細い螺旋状のねじれ糸は無惨にもバラバラになり、おぞましい低音を放つただの寄り合わせになってしまった。必死で天井へとかけ登る蜘蛛。足の爪が糸をはじき、鈍い音を鳴らし続ける。響き渡るこの不安を誘う音に驚いたのが、書類の間で羽を休めていた羽虫たちだった。彼らは聞きなれない音に恐怖を抱き、窓の方角めがけ一斉に逃げ始めた。夕方のやわらかな光の入る窓枠は、羽虫たちの逃避行による右往左往で、なにやらきらきらと光輝くのだった。


ベル音は、はじめのうちにあった甲高さがいくぶん和らぎ、ややトーンの失せたものに変わっていった。それが、熟練交換手による気配りだったということには、もちろん誰も気付いてはいない。誰もが耳慣れて聞こえなくなったのだろうという程度でしか意識してなかった。部屋には、ただタイプライターを打つ音だけが響いていた。不規則性から生まれる規則的なタイピング和音は、まるでどこかで誰かが誘導しているかのようなうねりをつくり、軍隊の行進が外で行われているのだと錯覚しそうなほどだった。部屋では、激しさと静寂のコントラストがまんべんなく響いていた。

鳴りやまないベルにしびれをきらし、ようやく受話器を取ったのはヴィニ・オライリーの同僚記者フーダレイ・ハウワットだった。サム・スペードばりの尖った顎に重そうなまぶた、ダークブラウンの短い髪は毎日のようにはねる角度が変わり、街角に立てばなぜか鳥たちが寄ってくる。なもんで愛用している千鳥格子柄のスーツは半月も経たないうちに、鳥の足跡模様に変わってしまう。そして岩石が乗ったかのようないかつい肩をしているわりに、女性的なか細い文字を書くことで編集部内では通っている。

「はい、ビロビジャン編集部、どちらさん?」
「…」
数秒間、相手からの返事はなく沈黙だった。
「もしもし? つながってんの? こちら、ビロビ、」と言いかけたところで、はじめて電話先からの反応があった。

「あ、もしもし。ビロビジャン編集部なんだね」
「ええ」
「ふう、やっと通じたさ。いやまいった、呼び出し音をずっと聞いているうちに、ついうとうとしてしまって」
相手の声には、編集部の喧噪とは正反対の穏やかさがあった。

「なるほど。それじゃ不眠症は治ったのかい? まぁもし、いつかまた眠れなくなったときは、どこかにかけるといいよ。今度はうちの編集部を外してもらいたいけど。それでどちらさん?」
「ああ、私はダスティン・フーヴァー、わかりますかな?」
「何? 掃除機のゴミ(Dust in hoover)? 清掃業者のセールスならお断りだよ。こっちは、いくらきれいに片付けをしたって、次の日にはもう書類の山で埋もれてしまうようなところなんだから」
「いや、私はその、清掃業者でもセールスマンでもないんですが」
フーヴァー氏はひと呼吸おき続けた。「ダス・ティン・フゥー・ヴァー」今度はゆっくりと、そして最初の母音にアクセントを置き、Hをはっきりと発音した。
「私は以前に、そちら『ビロビジャンの月』でも紹介されたことがあるんです。紙片収集家のフーヴァーといえば、きっと思い出してもらえるのかもしれません」
フーダレイはかすかにその名前と、この男に関した記事を読んだ記憶があるように感じた。しかしはっきりとした内容までは思い出せなかった。
「取材の担当者と変わった方がよいですか? フーヴァーさん」
「いえ、その必要はないです。電話したのは、それとは別で調べてほしいことがあるからなんです」
「調べてほしいこと?」フーダレイは聞き返した。そして反射的に腕を伸ばしペンを手に取った。
「ええ、実は最近、市場で奇妙なものを手に入れまして。それが、、と。今までに見たことも、聞いたこともないようなものなんです」
「というと、どんなものですか?」
「ええ…」フーヴァー氏は、しゃべるのをためらうように言葉を濁した。
「何かとんでもないものなんですか? 紙片収集家が解読できないような、例えば暗号のようなものとか」
「いえ、そういうわけでは。ただ、何というか、何といっていいか、なんとも説明しにくいものでして。ただ私の収集対象からはかけ離れたものなんですが、触れた瞬間に、とてつもなく魅了されたことだけは確かなんです。」
「んー、それだけじゃ難しい。もう少し詳しく言っていただかないと、こちらも何といっていいのやら」
フーダレイはちらりと時計を見やった。書きかけの原稿を仕上げなければならないことを、心の中でつぶやいた。電話ごしの言葉尻が少し荒くなったことに自分自身、気付いたのだった。
「そうですよね」一間おいてフーヴァー氏は続けた。「ぱっと見は、アクセサリーのようなものなんです。ネックレスみたいなものだと思ってもらえれば。私もはじめは、珍しい形のアクセサリーだと思って手に取ったんですが。ただ、その素材がですね、何か見たこともないものなので、一体全体何なのか? 遺跡から出てきたもののようなんですが、古代の装飾品にしては新しすぎるといいますか…」
「高級なもの? 精密なプラチナ製のジュエリーみたいな?」
「いえ、金属ではないです。プラチナや金なら私にもわかります。それが、ガラスのような陶器のような不思議な質感をもっているんです」
「うーん、では、竜延香みたいなもんですか?」フーダレイは混乱しながらも聞き返した。
「いえ、その類でもないんです。でも確かに雰囲気としては似ている気がします。でもゼリーにも似た触感もあったりしてですね、本当に奇妙なものなんですよ」
「それなら骨董商に持ち込んだ方がいいんじゃないですかね。私たちは確かに毎日毎日多くのニュースを扱ってはいますがね、より専門的なことはやはりそれぞれの専門家に尋ねているんで、仔細なことを知りたいんでしたら、わが社ではわかりかねます」フーダレイは室内を見渡し、手助けを求める視線を誰かに送ろうとしたが、誰とも目が合わなかった。むしろ、自分ただ一人が手を休め電話で話しているという事実を確認しただけだった。
「ええ、私もはじめそうしようと思ったんですが、ひとつ引っかかるものがありまして。そちらにまずお尋ねしひとつ、私の仮定を検証してみたいという誘惑に駆られたわけなんです」
フーヴァー氏はフーダレイの返事がくる前にさらに続けた。
「えーと、そのですね。たしか『ビロビジャンの月』では古いタイプライターを使っていると、確か以前コラムで読んだことがあるんです」
「タイプライター?」フーダレイは、ふいを突かれたように聞き返す。まったく予想すらしなかったこの言葉に一瞬目を丸くし、今までの会話とタイプライターが一体どういう風に関係しているのかを考えてみた。がしかし何一つつながりになるものを思いつかなかった。
「タイプライターなら皆使っていますよ。それに保管庫にいけばホコリのかぶったものがいっぱいある」
フーダレイのこの一言は、電話先で耳を傾けているフーヴァー氏にがっしりと受け止められる確かな感覚があった。
「やっぱり。いや、よかった。そこでですね、ひとつお願いがあります。まず、この奇妙なものを一度見ていただきたい。記事になるかどうかはわかりませんが、私の直感から言うと何か話題になる要素を持っている気はします」
フーダレイはフーヴァー氏の話よりも、迫りつつある記事の締め切り時刻の方が気になっていた。そして、もうそれに取りかかるべきだと判断し、はやく切り上げようした。
「わかりました。では、近い内に取材しましょう。場所はどこが良いですか?」
「ありがとうございます。では、まずこれを手に入れた市場から案内して、そのあと私の家でお見せしたいと思います。どうも、外に持ち出すのにためらいがあるもので」
「ええ、もしかすると大変貴重なものかもしれませんしね」
フーダレイは会話がスムーズに流れ、早く終わってくれるように限りなく平坦な声で答えた。
「そのときにですね、タイプライターで打った文字をいくつか持ってきていただきたいんです。各タイプにある全ての文字・記号を打って」
「は?」またも不意をつかれたフーダレイ。フーヴァー氏はさらに続けた。
「できれば、タイピングは幾種ごとに分けてもらいたいんです。もし、探していただけるのなら限りなく古い機種なんかも。『L.C. SMITH社』の8番、『UNDERWOOD』社のロイヤル・スタンダード、あと『オリンピア』社のSM3。この三つがあると、おそらく解読がもっと早くなりそうな気がしています」
フーダレイは自分の目の前にあるタイプライターを見て、それが何社のどの機種なのかを確かめた。今までに、そんなことを気にしたことなんて一度もなかったのだ。
「では、そのお望みの機種を探してみましょう。ただ、それが何か役にたつんですかね?」フーダレイはまったく検討がつかず、いつものクセで自分の鋭い顎を親指の腹でこすり続けた。
「ええ、おそらくですが。それが鍵になると思います」フーヴァー氏の声には、確信めいた強さがあった。
「日程ですが…」
フーダレイは手短に取材の日にちの取り決めをし、電話を切った。少し話疲れた様子で、ぼんやりと書き記したメモを見つめながら、目の前にあるタイプライターをおもむろに二三度はじいた。

2BC.

(つづく)

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