2017年06月20日

カヴァンの "Ice" とサージェント・ペパーズ

AnnaKavan-Ice-penguin.modern.png
Anna Kavan "Ice" (Penguin Modern Classics) / * 画像は出版社HPより
https://www.penguin.co.uk/books/305663/ice/

アンナ・カヴァンの「氷」が刊行50周年ということで、今年の11月14日、ペンギン・クラシックスから50th アニヴァーサリー版が出る、というのは先月に書いたんだけど、もうひとつ、表紙カバー違いでペンギン・モダン・クラシックスからも出るみたいだ。J. G. バラードのキャッチコピーが、どうにもカッコイイ! 今のところ、まだアマゾンでもこっち版は表示されてなく、出版社のHPのみでしか見れないので、ほんとつい最近出版が決まったばかりなのかも。HPにはペンギン・クラシックス版が208ページ、そしてモダン・クラシックス版は180ページとあり、30ページ弱少ない。文字組の大きな違いでなければ、ペンギン・クラシックス版に収録されている序文とかが割愛されているのかもしれない。それとも、それぞれに編集が違っていて、もし表紙の延長で、バラードの文章が載っているのならモダン・クラシックス版の方を読んでみたい気もするが、発売されるまでは分からないだろうな。ちなみに現在出ているピーター・オーウェン版は160ページだった。

そして、今年はザ・ビートルズ「サージェント・ペパーズ」のリリースからちょうど半世紀、まぁ、こちらも50周年ということで、その記念盤がけっこう話題になっているみたい(イギリスでは1967年の6/1に発売された)。この話、つい先日まで気づかなかった。さすがに1/2世紀という時間を経た、大きな括りの記念盤だけあって、アウト・テイクとか未発表ヴァージョンが沢山収録され、確かにこれはCDフォーマットでも欲しくなる。

ということは、もちろん、カヴァンの「氷」と「サージェント・ペパーズ」って同じ年に発表された作品となるわけだが、こうして違ったジャンルの二つを結びつけてみると(そしてどちらも英国生まれなのだ)、点と点が線になり、なるほど「氷」が出版された頃のイギリスの雰囲気や世界の状況が、もう少し良くわかる感じだ(といっても僕はまだ生まれてもないんで、追いかけ、そこから想像する世界になるんだけど)。単に年号の数字だけではその時代をイメージしにくいし、ただ漠然としか分からないようなものだったりするが、自分の知っているものと紐付けし辿っていくと、またちょっと違う側面が見える感じがする。しかし、「サージェント・ペパーズ」と同級生だったとは。



50年経っても溶けない氷 (23. May 2017)
http://tavola-world.seesaa.net/article/annakavan-ice-50th.html

2017年06月17日

歌詞和訳:"The Belldog" by Eno Moebius Roedelius


eno moebius roedelius - belldog - LP: after the heat (1978)
(* 歌詞和訳は最後に載せてます)


憧れのレコジャケ
暑くなってくると、野太いヴォーカルや歪んだギターをかき鳴らすような暑苦しい音よりも、透明感ある無機的な電子音の曲が聴きたくなってくる。そういうときに、ブライアン・イーノ周辺のアンビエント関連の音楽はとてもいい。どれもいい。イーノがクラスターの主要メンバー二人、メビウス(Moebius)とローデリウス(Roedelius)と組んで製作したアルバム「After the heat」は、レコジャケのイメージそのままの耳に涼なサウンドで、窓越しに見える、太陽が照りつけヒートアイランド化した都市の景観をまるで蜃気楼の幻影かのように変えてくれる。これは、ほんと夏になると良く聴いていた。だけども、僕の持っていたのはCDでレコードではなかった。そのおかげで、音により透明感があってその点では良かったんだけど、やっぱりジャケの大きなレコードで持っていたかったなぁ、というのがずっとあった。イーノとクラスター周辺のコラボレート作品を何枚かリリースしていたドイツ「SKYレーベル」のアナログ盤は人気が高かった為、なかなか中古市場に出回ってこず、店頭に並んだ瞬間にはもう誰かが買いさらっていくか、あるいはコンディションの良くないものがしばらく壁を飾っているかどちらかだった。値段はさほど高くもなく、それがすぐに店頭から消える原因の一つだったりした。コンディションの良いもので、4,800円前後が平均的な価格だった(ジャーマン・プログレものでは一桁ゼロの多い価格のものが珍しくないので、5,000円台付近のレコードは安い方だ、という錯覚に陥ってしまう)。僕がレコード・コレクションに夢中になっていた時期は、ほぼ日参といってもいいくらい、けっこうレコード屋に通ってはいたんだけれども、「After the heat」含むイーノ&クラスターものと巡りあうことは数回あった位で、どうしても手に入れることが出来ずにいた。なので、いつ聴けるかわからないでいるよりは、とりあえずはCDでもいいや、みたいになってSKYレーベルのものはCDで揃えることにした。そして、知らなかった音が聴けてしまうと、こだわりだったサイズの大きなレコジャケへの意気込みなんてものは次第に消えてゆく。それでも、心残りなレコードの一つとして、これらのジャケ画像をみる度に当時憧れた気持ちのようなものがわずかにだが、未だ残っているのは何でだろう。

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Eno Moebius Roedelius "After The Heat" と "Cluster & Eno" のジャケット。
フォーマット優先のいかにもドイツ的なデザイン。*画像はDiscog.comより


曲名「The Belldog」の由来
この曲の歌詞訳をしようと思って、まず真っ先にクエスチョンだったのが曲名の「ベルドッグ」だった。造語っぽい感じもしたし、単にそのまま鈴を付けた犬なのか? とかも考えるが、英語での意味を知ろうと調べてみると、やはり造語だった。そして、その由来についての引用がネットに出回っていたので訳してみた。ただ、ひとつ気になるのが、この引用箇所の出所がどこからなのかがさっぱりと分からない点(にも関わらず皆、この曲の歌詞と一緒に併記していたり。このテキストが広く出回っている割に、誰も「これは違うぞ」といった指摘や書き込みがないというのも、ある意味信憑性があるのかも)。一応引用先が「Brian Eno in More Dark than Shark, quoted by Craig Clark」からだとは記してあるが、「More Dark than Shark」には、イーノとラッセル・ミルズ共著による本と、イーノのインタビュー等のアーカイヴをアップしているサイトの二つがあって、おそらくこの内のどちらかだろうとは思う。本は手元にないし、サイトを見てもテキスト量が膨大すぎて確認できなかった。ついでをいうと引用者のCraig Clarkって誰? というのもあるが、ここは一応ネット上にある情報を信じて僕も引用してみた。以下どうぞ。


「More Dark than Sharkでのブライアン・イーノ」クレイグ・クラークによる引用:
「僕は凱旋門風の記念碑に向かって、ワシントン・スクエア公園を歩いていたんだ。門の下には少数のグループがいて、満月が水平線上の低い位置に浮かび、門のてっぺんから見えた。さらに寄って近づくと、彼らの注視していたものが分かった。年齢不詳で薄汚れた格好の男が車の上に乗って、音程のズレた縦型ピアノを弾いてた。彼の演奏は上品なナイト・クラブにいるピアニストのそれだった。だけど、彼の使っていたコードは全く奇妙だった。その低い不協和音の繰り返しに負けないよう、彼は震え声で、何度も何度も歌っていたんだ。「ベルドッグよ、お前はどこにいるんだい?」と。彼の歌うベルドッグというものが、何なのかはさっぱり分からなかった。僕にすりゃ未知の神話に登場する出所不明な空想上のキャラクターだった(し、今もそうだ)。だからベルドッグについて僕が抱いた漠然とした感覚は、彼が不明慮な使者だということ。それが何であれ、歌の中ではまだ(ベルドッグが)現れてないか、もういなくなってしまったか…」


'I was walking through Washington Square Park, towards the "Arc de Triomphe" style monument there. There was a little group of people under the arch, and the full moon stood low on the horizon, visible through the top of the arch. As I got closer I saw what it was that had attracted their attention. A very grubby man of indeterminate age was playing an out-of-tune upright piano on wheels: his touch was that of a plummy night club pianist, but the chords he used were completely strange. Over this sequence of soft discords he sang, again and again, in a trembling voice: "The belldog, where are you?" I have no idea what he meant by the belldog. For me it was (and is) an unidentified mythical character from some unfamiliar mythology... So the vague feeling I have about the belldog is that he is a herald; of what is not clear. Whatever it is, in the song he has either not yet appeared or has gone away...'

from Brian Eno in More Dark than Shark, quoted by Craig Clark


enoweb-lyrics "THE BELLDOG"(上の英文の引用先)
http://music.hyperreal.org/artists/brian_eno/ATHlyrics.html
予備:http://archive.is/bm80d


EnoMills-MoreDarkThanShark.jpg
Eno & Mills "More Dark than Shark"(画像はAmazon.jp より)

MORE DARK THAN SHARK http://www.moredarkthanshark.org/
ブライアン・イーノのファンサイト。アーカイヴがすごく充実していて、特に過去の(雑誌)インタビューが書き起こしされていたりと、後追いファンとしては嬉しい。サイト内:brian eno >> interviews 。



イーノ・メビウス・ローデリウス「ベルドッグ」歌詞和訳

Brian Eno "The Belldog" - Lyrics ( songmeanings.com )
http://songmeanings.com/songs/view/3530822107858973053/
メロディに合わせた詞の改行・分断はせず、なるべく意味の通る一つの文になるようにした。
またコーラス・パートやサビのリフレイン等で歌詞が重複する箇所は省いてます。



Most of the day, we were at the machinery in the dark sheds that the seasons ignored. I held the levers that guided the signals to the radio.
But the words I received, random code, broken fragments from before.

我々は一日の大半を、季節感のない暗い小屋に篭り、機器の操作をしていた。
私は無線器に信号を誘導するレバーをつかんだ。
しかし、受信した言葉はデタラメなコードで、使いものにならない断片的なものだった。




Out in the trees, my reason deserting me.
All the dark stars cluster over the bay, then in a certain moment,
I lose control and at last I am part of the machinery. Where are you?
And the light disappears as the world makes its circle through the sky.

森の中で、私は思考力を失った。暗黒の星団が山合いの上空で結集し、ある瞬間、私は制御不能となり、ついに機械の一部と化す。君はどこなんだい? 
世界が空いっぱいに円を描くと、その光は消滅する。



* dark star: wiki を見るとdark star or dark matterとあり、二つは「ダークマター星」の英語での同意語でいいようだ。これは、宇宙研究ではまだ解明されてない暗黒物質(ダークマター / dark matter)の呼び名違いなだけだと思うが、もしかすると細かな部分で違いがあるのかも。イーノはわりとテクノロジー、科学や哲学などの新しい話題に敏感なので、この曲を制作していた1970年代後半頃に話題になっていた最新宇宙のトピックスを歌詞の中に取り入れていた可能性が十分にある。訳では、宇宙用語から離れプログレっぽくしてみた。


* bay: 前行に "Out in the trees" があるので、湾や入江ではなく山側の近くだと思い、「山の懐」の意味で考えてみた。



これまでに歌詞を訳したミュージシャン一覧: だいぶタイトル、増えてきた。

The Cure(ザ・キュアー) / Jannine Weigel(ヤンニーン・ワイゲル) / SAHA(サハ)
Wire(ワイヤー) / New Order(ニュー・オーダー) / The Wake(ザ・ウェイク)
Porter Robinson & Madeon(ポーター・ロビンソン&マデオン)
Charity Children(チャリティ・チルドレン) / Angel Olsen(エンジェル・オルセン)
Robert Wyatt(ロバート・ワイアット) / Eno-Moebius-Roedelius(イーノ・メビウス・ローデリウス)





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2017年06月15日

Bad LiarのMV


Selena Gomez - Bad Liar

やっぱりMVキタ! 音だけしかない静止画音源が長く続いていたので、もしや映像は作らないのかと心配したけれども、ついに「Bad Liar」のオフィシャルMVが公開だ。曲のリリース直前にネットで一部出回ってたちょっとフェティッシュな映像とは違っているし、期待していたそういう方向のものとも全然違う、(一人何役もこなした)学園ものパロディなMV。最後にComing soon - Fetishって字幕が出るから、もう一つ別なバージョンのが近いうちに出るのかも。わりと新しいプロモーションの仕方だなと思って興味わく。

それにしてもこの曲「Bad Liar」は、僕の中では今年一番の曲になってしまった。最初聴いたときは、何というかスカスカした音にささやき声が絡んでるだけの、何か寂しい、未完成な音のように思え、ただふうんって感じだったけど、二度三度聴くうちにじわじわメロディが頭の中にこびりついて、しまいには中毒っぽく一日中これを聴いていたり、何か不思議な魅力があった。で、何でそんなにいいんだろう、と思って調べているうちに、Lordeの「Royals」とこの曲の共通点を指摘する記事があって、なるほどそうかと納得いった。そう、この曲はとにかく音数が少ないんだ。トーキング・ヘッズ「サイコキラー」のベースラインのサンプリング、そしてハンドクラップとベルの音、打ち込みのリズムが入ってくるものの、あとはセレーナ・ゴメスのヴォーカルコーラス。ほぼこれだけで作られていて、聴くほどに、すごく声の魅力にはまっていく感じ。そして、このヴォーカルとリズムトラックだけで出来た、やたらと記憶に残っている音があるなぁと、頭の中の引き出しを二つ三つ開けてみると、目当てのその音楽を思い出した。そう、まさにPILの「Flowers of romance」なんだよ。

posted by J at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | fav. - sound | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする