2018年06月09日

Paperback Cover Design Gallery (6) オリヴァー・サックスのヴィンテージ初版6冊

OliverSacks-Musicophilia-Ro.Consciousness.jpg
オリヴァー・サックス「音楽嗜好症(ミュージコフィリア)」と「The River of Consciousness」
"The River of Consciousness (意識の川)" はサックスの死後(2015年に亡くなっている)、2017年10月に出版された彼の最後の本。まだ邦訳が出てない。以前の著書に比べると、医学専門用語などが少ない感じで、一回原書でトライしてみようと思う。
デヴィッド・バーンは「無人島に持っていく本」のひとつにこの一冊を選んでいた。さすがバーン。

デヴィッド・バーンが選ぶ「無人島レコード」は?(2018/03/20)
http://amass.jp/102593/




オリヴァー・サックスの名前を知ったのは、ある洋書のペーパーバック・デザインがきっかけだった。それぞれ別に出されていた彼の著書、6つのタイトルが一つのシリーズとして括られ、全体を統一感あるデザインでパッケージングされたヴィンテージ版のペーパーバック(下に貼った画像)。モノトーンの人体解剖図を背景に、カラフルなアブストラクト・パターンが大胆にレイアウトされていて、強いインパクトがあった。一冊一冊が単独したデザインとしても通用するが、6冊同時に並べたとき、より大きなイメージが浮かび上がるようにディレクションされている。何気なくwebを見ていたときに、目にとまったブログの記事にあった画像で、たしか「すばらしいブック・デザイン」をテーマに集めたものだったような。そのブックカバー・デザインのかっこよさを目の当たりに、いったいどんな内容の本なんだろう? と、興味を持ち、薄ぼんやりと著者の名前を記憶していた。少し経ってから、日本版も出ていることを知り、それから彼の本何冊かを読むようになった。

先天的に何らかの障害を抱えてはいるが日常生活を送るのにさほど支障のない人、あるいはある日突然症状が現れ、視覚や聴覚などの感覚器官が正常に機能しなくなる、そういった異常な状態に陥った患者たちが脳神経科医である彼のものとを訪れ、治療を行いながらまた本来の生活に戻ったり、また違う道を歩むようになったり。彼の本は、そうした患者たちの観察記録的な医学エッセイになっている。世の中には、こんな変わった人(変わった症状をもつ)がいるんだなぁと驚く一方、それが非常に稀なケースである、というわけでもなさそうな程、誰にでも起こりうる可能性のある症状でもあったり、人間の脳ってほんと繊細にできているんだなとしみじみ感じもしたりする。ほんのわずかなきっかけで、脳や神経系統がバグってしまいまったく正常な動作を行えない恐怖。本に登場する人たちを見ているうちに、ある意味、自分がいま普通にモノを見れて、普通に音が聞こえ、普通に味を感じていることの方が奇跡に近いんじゃないかと思えるくらいで、人間、もっと大きく言えば生命というものの存在の不思議さも静かに浮かび上がってくる。今、自分が視覚・聴覚・味覚等々で感じているこの感覚は、どこまでが本当なんだろう? 目の前にはっきりと知覚できている世界が、錯覚ではないことを証明できる自信がけっこう揺らぐ。


「音楽嗜好症(ミュージコフィリア)」では、音や聴覚に関して何らかの異常が見られる患者たちのさまざまな症例がまとめられている。音とノイズ、そして音楽の響き、そういったものの違いを脳はどうやって判断し、心地よさや不快さという感情に結びついているんだろうか、読んでいるうちにまた違った疑問へと飛んでゆく感じだ。エピソードをいくつか挙げてみると、まず冒頭からインパクトの強い話で始まり一気に引きつけられる。第一章「青天の霹靂」に登場するのは、トニーという整形外科医。彼はある日雷に撃たれたあとピアノ音楽に目覚め、ピアノ曲を聴くだけでは物足りなくなり、自分で作曲まで手がけるようになる。そして半日以上ピアノを弾き続けなければ衝動が収まらなくなり、この日を境に音楽の創造力にとりつかれてしまった。「雷に撃たれたような衝撃」という比喩表現をまさに実体験していているようで、もしかすると人の創造力のスイッチって、外部からの電気的な刺激でON / OFF ができるんじゃないかと思ったりした。第6章「音楽幻聴」では、シェリルという70歳の女性が出てくる。彼女は神経系の難聴をわずらっていて、ホーム・ドクターの勧める新しい処方箋を服用したことで、聴覚に異常が発生する。そして薬を飲んだあと睡眠していたときに、突然爆音が鳴り響き目覚める。あわてて家の外へ飛び出し、あたりを見渡すが、周囲には誰一人としておらず、そのとき自分が幻聴に侵されていることに気づく。まもなく、その幻聴ノイズは音楽へと変わるのだが、一向に鳴り止まずこの幻聴とともに生活するはめになる。何かを考えていたり、頭を使っているときだけ、その幻聴がぱたりとおさまる傾向があるのに気づき、人工内耳の手術を試してみると問題の幻聴はぱたりと止まり、すっかりよくなる。第14章「鮮やかなグリーンの調−共感覚と音楽」では、「音」が「色」に見えるというユニークな症状(共感覚のひとつ)を持つ人がいたりするが、これはそう珍しい例ではないのだとか。これは、ちょっと一度体験してみたい気もする。他、サヴァン症候群やトゥレット症、失語症の人などの例が挙げられている。何か平常な要素を失う代わりに特殊な能力が身につき、当然みな、それに悩まされ、あるいはそれに感謝したり、でもサックスはそうした人たちの葛藤うんぬんに目を向け涙を誘うように書くのではなく、人間という生き物がどう機能しているのか? というような非常に医師らしい目で、目の前の患者たちを見つめている。そして、自然と出てくる彼の引き出しの多さは、一見難しい医学の世界を身近に感じさせてくれる。



Vintage ペーパーバックの初版6タイトル

OliverSacks-6-titles-vintage.jpg
*画像は右リンクより: http://tagong-boy.tumblr.com/post/174533155111/

"Migraine"(サックス博士の片頭痛大全)
"Awakenings"(レナードの朝)
ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズ、二人が主演し1990年に映画化されている。
"The Island of the Colorblind"(色のない島へ)

"Uncle Tungsten"(タングステンおじさん)
"An Anthropologist On Mars"(火星の人類学者)
"Seeing Voices"(手話の世界へ)


2018年06月06日

bunny girl and calvados

Bunnygirl-June-2018.png
bunny girl and calvados
(June. 2018 / 210 x 297mm) Ink and Digital Effects

画像大きめ版と色違い版:
(PNG - 1.5MB)http://tagong-boy.tumblr.com/post/174583411381/
(PNG - 1.5MB) http://tagong-boy.tumblr.com/post/174565827176/

posted by J at 09:00| Comment(0) | ■ Drawings | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月02日

もうすぐだな、6.16


Bloomsday in Dublin – a celebration of James Joyce's Ulysses
https://streamable.com/tum7i

ジョイスの「ユリシーズ」は、複数の人物を登場させながら、ダブリンのとある一日(1904年6月16日)を描いた物語。ペーパーバック700ページぐらいのボリュームがあるちょっと手ごわい小説。僕はたぶん十年かかっても読めないだろうとあきらめてはいるが、ときおりパラパラめくって楽しむ程度にしている。けっこうお酒の名前が出てきたり、Davy Byrneという、トーキング・ヘッズのヴォーカル、デヴィッド・バーンに近い名前の人がいたり、もしかしたら、見過ごしていただけで、ロックの歌詞にもいろいろ引用されているのかもと思ったり(例えばU2の「Breathe」は有名)。
6/16を舞台にした物語だけに、毎年この日には「Blooms Day」というユリシーズとジョイスを祝うお祭りが地元ダブリンの他、世界中で開催されている(アイルランドの人なら誰でも知っているくらいに)。当時の服装をして小説ゆかりの場所を練り歩いたり、朗読会やライブなんかが繰り広がられ、なんかこういうのは文化的でいいな。一度、このタイミングでダブリンに行ってみたい。今年のイベント予告動画があったのでちょっと貼っておこ。
posted by J at 11:00| Comment(0) | - Memo - | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする