2010年07月16日

煉瓦工場「Huynh Phat 4」(17 photos)

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かっさーら、かっさーら。運河から引き込まれた水路を囲む土手には大きな木々が生い茂る。枝についた葉は固く、肌にいたずらをするように踊っている。それらをかき分けながら、踏み込まれ固くなった泥灰質の道を歩く。やがて、大きな窯がいくつも連なる煉瓦工場「Huynh Phat 4」へとたどり着く。ややタテ長気味の釣り鐘状をしたレンガ窯の並ぶ姿は見ごたえがある。コレといった玄関口はないので、適当な戸口から中へと入る。

外観の立派さと相応するかのように窯の内側も立派で、すり鉢状をした窯の内側は波ひとつない水面にポンと小石を投げ込んだ時に出来る美しい波紋のような模様をしている。すでに焼き上げる為のレンガがベツトコンベアで運び込まれ整然と積み上げられている。窯をくぐり天井の空気孔から射し込む光を見上げる。と、窯の主が現れその巨大な目で脳天からつま先までじっと観察されているようだった。まばたきひとつしない大きな目。

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窯の中で燃え盛る炎は、耳をそばだてないと聞こえない程の小さなチリチリとした音で燃え続けている。幾段にも重ねられた棚はパンを焼くオーブンを思い出させる。中にはこんがりと焼き上がった香ばしいコッペパンが!と思わず手が伸びそうになったけれども、窯から発せられる熱気で伸ばした手はヘニャリとあっけなくしおれてしまった。

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窯を囲う壁もレンガ。

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窯焼きの燃料の稲のモミ殻。

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窯入れ前、天日干し真っ最中のレンガと焼き窯。レンガ工場の裏手にて。

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レンガ工場の裏手にある一番奥の窯の横には黄緑色のタイルが貼られた墓が置かれていた。ファンシーな犬のタイル絵で囲まれた墓碑には「Nguyen kim Sa」の名が記されている。ここでの作業中に亡くなられた方だろうか。
と、空の上から声が聞こえてきた。
「おまえ、人の墓を撮るだなんて随分といい趣味をしているな。」
間をおいて返す。
「あんたの墓だったのかい。すまない、趣味の悪いベッドかと思ったよ。」
空からの声は面喰らった様子で
「おいおい、ひどいじゃないか。これがベッドに見えるか?んん、見えなくもな…。まぁ、寝心地はなかなかのもんだけどな、ちょっとここはホコリっぽい位で。」
「起こして悪かった。静かに眠れるよう手を合わさせてもらうよ。」目を閉じ、合掌。
目を開けると、寝息が聞こえそうな程しんと静まり返っていた。

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焼き上がったレンガの積み出し場のある運河側とは反対に位置する工場の裏手。窯の燃料である稲のもみ殻を燃やした灰がここにどっさりと捨てられていて、一面重い灰色が広がっている。強いアルカリ性の土壌の中からひょっこりと緑が顔を出していた。ここで育っていたのはこの一本の芽だけ。恐ろしい程の生命力に感激。

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運河側から見た工場景は、几帳面な地層のようだ。ブルーグレーの空の下、幾基にも並ぶお椀型の窯が奇妙に映る。雲の合間から射す西日が、レンガの血色を良くしている。

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運河側にあるレンガ工場の船着場。
ここから燃料の稲のモミ殻が運び込まれ、焼き上がったレンガを出荷する。

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休憩時間になると、おばちゃんたちがこの船着場へやって来て談笑していた。日差しが強いので「ノンラー (Non La)」と呼ばれる日よけの笠*は欠かせない。女衆3人集まると、ほんまにぎやかで。

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タイルの形に成形後、じっくりと乾燥させた土を焼き上げる為にベルトコンベアで窯の中へと運ぶ。窯の中では運ばれてくる乾燥土を積み上げていく人が待っている。窯の中では、効率良く熱がまわるよう空気の通りを考えて乾燥土が積まれていく。

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レンガの乾燥庫兼従業員のチャリ置き。

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レンガ工場「Huynh Phat 4」の看板。今回、近隣のレンガ工場を5軒程まわったが、ここ「Huynh Phat 4」と「Van Thuan」の2軒の工場が他の工場よりも規模が大きかった。


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2010年05月11日

煉瓦工場「Van Thuan」(25 photos)

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レンガ工場「Van Thuan」の釣り鐘の形をした大きな窯の連なりは、母豚の乳房のように見える。煙突からは空に向って灰色の乳を吐いている。窯に焼べられているのは、稲穂のモミ殻。

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かっさーら、かっさーら。頬をはじく厚ぼったい緑の葉には葉脈がくっきりと浮かび上がっている。葉裏の気孔からは青臭い屁が放たれ、緑のエグ味に鼻をしかめながら道を進む。木の枝をかき分けた手の甲には、しっかりと緑の香りが移っていた。煉瓦工場「Van Mai」裏にある細い道を通り抜け、隣に建つ煉瓦工場「Van Thuan」の敷地へと入っていった。トタンの屋根をくぐり抜けると目の前に広い空が広がっている。そして右手には大きな建造物、レンガを組み上げ建てられた釣り鐘状の大きな窯が数基並んでいた。これまでに見た事のない光景に驚き、思わず大きな声をあげた。

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窯のてっぺんへと昇る階段。レンガの角はとれているように見えるけれどもけっこう鋭利。

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煉瓦工場「Van Thuan」の空いていた窯の中に入る。先に訪れていた「Van Mai」にある窯と同じドーム型の形をしていて、内側の壁はすり鉢状の凹凸模様をしている。天井の空気孔からは太陽の光が射し込む。壁の凹凸模様は、まるでレコードに刻まれた溝。射し込む太陽の光は、静かにそしてゆっくりと移動する。「光の針」が凹凸模様に刻まれた信号を拾っているよう。土で出来たアナログ・レコードが大きなCDプレーヤーにかけられている奇妙な感覚。あるいは、太陽のプラネタリウムを鑑賞しているような気分にさせられた。

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窯の中の温度を均一にする為、棚に敷かれた燃料のモミ殻をまんべんなく散らしている所。

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モミ殻の保管庫。

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時間をかけタイルの形に成形した粘土を乾燥させているところ。

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乾燥中のレンガ。

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年期の入ったヤカン。煙と共に狸が飛び出てきそう。

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昼食の魚を焼いているところ。じゅうじゅうといい具合に焼けている。ここでも稲のモミ殻が燃料に使われている。

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「あーお腹すいた!」と魚の焼け具合を気にしに、やって来た兄ちゃん。
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あれぇ??あ、赤塚不二夫センセじゃあーりませんか!

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焼き上がったレンガは、工場のすぐ横を流れる川(運河?)そばの敷地に積み上げられ出荷を待っている。

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焼き上がったレンガの出荷場。各工場ごとに荷出しをする船着場が設けられている。河川から張り巡らされた無数の水路が流通の要。

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焼き上がったレンガを6枚1セットにして梱包しているところ。

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窯の燃料となる「稲のもみ殻」は農地から船で運ばれてきて、レンガ工場近くの川岸で袋詰めされトラックに詰め替えらた後、それぞれの工場へと運ばれる。写真は船の上で詰め替え作業をしている所。

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レンガ工場「Van Thuan」の看板。


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2010年03月23日

煉瓦工場「Van Mai」(21 photos)

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かっさーら、かっさーら。瑞々しい緑の厚い葉が、顔に、頬に、耳にといたずらをしようとタッチする。雑木林の中に住居が点在するひっそりとした場所。かくれんぼの鬼になったような気分で生い茂る木々をかき分けくぐり抜けると、大きなバラック造りの建物が現れた。

ここは、小さなレンガ工場が集まった区画。工場の建物は角材の柱に丸太のはりが組まれ大きなトタン屋根が乗っかっただけの簡素な作りで、雨露がしのげる程度の吹きさらしになっている。あたりを見渡しても人の気配はない。
「こんにちは」と挨拶し中を覗く。
「ぎぃ」という扉の音が欲しかったけれども、
そんなものは付いてないので頭の中の副音声で合成してみた。
「こんにちは、誰かいませんか?」
小さな足どりで進みながら、もう一度尋ねてみた。声はそのまま建物から外へと抜けて行き瞬時に消えて行く。
「休みなのかな?」
乾燥中のレンガが積まれた場所のあたりへとやって来たところで工場の人が現れた。
「なんだい?あんた?」恰幅のいいおばさんの太い声が建物に響くと、
瞬時にビリっとした空気が流れ、ここで働く人たちが仕事の手を止め四方から集まり出した。

今までこんなとこに隠れていたのか?という位すぐそばの仕切りから現れる。僕を見て、珍しいものを見る目つきはやがて小さな答えに行きつく。「害はなさそうだ。」そう分かると、皆、途端に散りはじめ、自分の持ち場へと戻っていった。再び静けさが戻る。その様子を見ていていた配電柱の蜘蛛は小さく笑った後、手を止めていた巣を再び張りはじめた。

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■ もみ殻の貯蔵庫
レンガ工場の中には稲の「もみ殻」を貯蔵庫する広い空間があり、うず高く積まれたもみ殻はアルプスの山々のような姿を成している。体積は大きいけれども非常に軽いので、頂に登ろうとすると身体がすっぽりと埋もれてしまい到達は出来ない。幻の山頂。大量に集められたこの「もみ殻」は、レンガを焼く燃料として使われている。

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素敵な二人。レンガを焼上げる大きな窯の前にて。

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■ 窯焼き
レンガを積み上げられて出来た大きな釣り鐘状の窯の中には、天日干しの乾燥を終えた粘土が並べられ、仕上げの焼き入れが行われる。窯の中に燃料の「もみ殻」がくべられる。窯の中ではちりちりと真っ赤に燃え、窯の周囲は空気が揺らいでいる。「もみ殻」を並べる棚がいく重にも重ねられ横からの空気が通りやすいようになっている。上流から運ばれ堆積した粘土質の土を原材料にし、三毛作も可能な豊かなこの地で育った稲のもみ殻を燃料にして作られるレンガ。古くからその土地に根ざし生まれたものを無駄なく利用した循環型のシステムが出来上がっていたのに感心する。全て土から生まれている。

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■ 光響曲
レンガを焼上げる大きなドーム状の窯の中へと踏み入れる。静寂。
窯の内側には、すり鉢を逆さにしたような縞紋様が刻まれていて、まるで古代文明の遺跡の中に迷い込んだかのようだ。窯のてっぺんには空気穴が空いており、外から一条の光が神々しく射し込んでくる。光は壁の紋様をなぞり、刻まれた凹凸の溝を読解しようと試みる。光の軌跡を静かに追った。わずかな間をおいて、天上からかすかな歌声が降りそそいできた。射し込む光を浴びるよう顔を上げ、静かに目を閉じた。その歌声を聴き入るために。

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味わい深い窯の壁

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窯の端には焼き上がったレンガが円形の壁に添うように整然と積み上げられている。

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天上から射し込む一条の光は無口で、がらんどうの窯の中を静かに照らす。ひんやりとした壁肌は、レンガを焼き煌々と燃えたぎっていた面影を感じさせない。はらりと何かが頭上にかかった。きらりと光る細い髪の毛?見上げると、蜘蛛が天上の穴から一本の糸を垂らしていた。上に昇れということか。わずかな光を頼りに、細い細い糸をたぐり寄せようと右手をつかみ空をかく。いくら目を凝らしても、もうさっきの糸は見つからなかった。もう一度、天上を見上げてみる。糸はキラキラと輝き、振り子のようにゆらりうらりと揺られていた。射し込む光が、時折、糸を虹色に変えている。

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成形後の粘土を乾燥させる為の保管庫。薄暗い。板チョコのようで、サーバールームのよう。

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倉庫の通路。

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切り端の捨て場。

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■ 天日乾燥
成形後の粘土は室内でゆっくりと水分を抜き乾燥させたあと、天日干しにして焼上げる最終段階の状態へ。あとは、強度をつける為窯で焼上げる。
「Van Mai」の粘土の乾燥場から、隣立する「Van Thuan」の窯が並ぶ風景。

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乾燥中のレンガと水筒。

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焼き上がったレンガは、一枚一枚丁寧に並べられ出荷を待つ。
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割れたり、ヒビの入った不良のものは荷受け場のある川岸に捨てられていた。オレンジ色の入り江。

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色褪せた「Van Mai」の看板が掲げられている倉庫。


越南 (ベトナム), Vietnam
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