2007年09月06日

アムドの旅・丹巴〜馬爾康〜紅原〜若爾蓋〜アバ -2007-

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■ 丹巴(ダンパ)から馬爾康へ
馬爾康行きのバスは午前7時半に、丹巴汽車站を発車した。
10時半、金川(ジンチュアン)に着き30分の休憩。
その間、少し街を見てまわるけれども、ひまをつぶせない位のありきたりな街並にすぐに引き返す。発車までまだ十分な時間があるので今度は反対側を見てまわる。

汽車站から坂を登ると、細い路地があり抜け道になっている。そこを小さな足どりで無心に歩いていたばっちゃんがいたので声をかけるとばっちゃんは振り返るなり、にまぁーとした笑顔で左手に持っていた薬草をぐいと差し出して「持ってけ、持ってけ」と言う。その仕草がかわいらしく、断るのを忘れてしまう。

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■ 紅原(ホンユアン)から若爾蓋(ゾルゲ)へ
7時45分、一応は身体を温めてくれた電気敷き毛布と布団から這い出し身仕度をする。宿にはエアコン等の設備はなく、暖をとるにはベッドに敷かれた今にもコードのもげそうな電気敷き毛布か魔法瓶に入ったお湯、もしくは布団に包まるしかない。海抜高度約3,400mの地の夜は心底冷える。プラスティックの洗面器に魔法瓶に入った熱湯を注ぎ入れ、蛇口の冷水でぬるま湯に調整し顔を洗う。チベット地域の安宿ではお湯の出る設備がほとんどないので、いつもこうやって洗顔したり手を洗ったりする。8時半、泊まっていた「安曲査寺招待所」を出て紅原の汽車站へ向かった。朝日がまぶしく降り注いでいるが、まだ底冷えの漂う道を歩く。若爾蓋行きのバスがやって来るまでを、日影を避けなるべく直射日光のあたる場所に立って静かに待つ。白い息を吐きながら冷えきった身体を解凍してゆく。冷たい闇夜は去った。

8時半過ぎ、紅原汽車站のチケット売り場へ着いた。窓口で「若爾蓋」行きのチケットを申込む。しかし、売り場のねえちゃんは首を横に振るだけだ。昨日と全く同じ展開で、何度言ってもチケットは出てこない。「明日また来い」と言ってどこかへ行ってしまった。

また今日もここで足止めになるのか、と考えるとどうしても今日のうちに若爾蓋へと行きたくなった。汽車站を出て乗合いを探すが、それらしき車はなく、ならばタクシーでと、交渉を始める。いくら紅原が幹線道路の途中にある小さな街だからと言って、バスが通らないはずはない。現にここまでバスで来た。もしかすると、この汽車站には寄らずに通過していっているんだろうか?そんな事を考えながらタクシーと交渉がまとまりかけ荷物を後部座席に詰め込んでいる矢先、紅原汽車站に「若爾蓋」行きのバスがのっそりと入ってくる。10時20分。
フロントガラスには「馬爾康-若爾蓋」という文字が張られてある。本当に「若爾蓋」行きなのか?半分疑いつつそれを確かめに車掌のもとへ走る。やはりあっていた。「馬爾康」行きではない。座席も空いていて乗れるとの事だ。急いでタクシーに載せていた荷物を取りに行く。

バスに乗り、ようやくチケットが出ない理由が分かった。立ち寄りの街なので、バスがやって来るまでは空席がどれだけあるか分からないという事なんだろう。でも、もうそんな事はどうでもよくて念願の「若爾蓋」へ行ける嬉しさでいっぱいだった。バスの窓から眺めるこの一帯は、なだらかな丘と草原が広がるのんびりとした風景がひたすらと続く。

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非遺伝子組替えの雲。空だけは人の手が及ばない、神の住む場所だから。
(若爾蓋からアバヘ向かう途中)


丹巴 - 馬爾康 - 紅原 - 若爾蓋
Danba - Maerkang - Hongyuan to Ruoergai (Zoige)
アムド地方 (Amdo Area)
中国四川省アバ藏族羌族自治州
Aba Tibetan & Qiang Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China

2007年07月09日

Sketches of "Aba"・阿坝の街素描 -Amdo, 2007-

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賽格寺(セー・ゴンパ)を東へ。ゆるやかな坂道の先は街の入口へと続く。道路脇からはふくよかな起伏の丘が広がり、この地域特有の台形状の土壁で出来た家が建っている。子供の頃に歩いた道は、草の匂い、花の匂い、そして土の匂いがした。この丘を歩いていると、その時の記憶が蘇る。芝に混じって咲いていた紫色の小さな花を採ってノートにはさんだ。ここの香りを閉じ込めたかった。

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セー・ゴンパ(賽格寺)前から、ナルシ・ゴンパ(朗依寺)へと向かう道。踏み慣れないでこぼこ道が、遥か先まで続いている。歩いても歩いても全く景色が変わらないので、空に靴を放り投げたくなった。

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何やら、いい草の生えているありかへ案内してくれるそうだ。道草案内人のあとをついて行くことにした。

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康定(カンディン)の雑貨屋で9元で買った緑色の透明プラスティックの水筒にお茶を入れ、ひと歩きするごとに、ちびりちびりとやっていたが、一日が終わる頃にはすっかり喉が乾いていた。この街は道の反射が強いので、走るリキシャー(力車)のシルエットが印象的だった。

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キルティ・ゴンパ前にて。
捨てられたのか、荷台からこぼれ落ちたのか。解体されたヤクの背骨がゴンパへ向かう道の脇に転がっている。
犬の兄弟の会話
「今日もうまい具合に飯にありつけたね。」
「ここなら毎日いけそうだ。さっさと食わないと他の連中がやってくるぞ。」
「大丈夫だよ、今のとこは僕たちだけだから。」
「そうか。でもこれゴムみたいに硬いな。」

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給水塔のある風景。


アバでは「医貿賓館」というホテルに泊まっていた。フロントでは皆がテーブルを囲んでトランプゲームにふけっていて誰も仕事をしようとはせず、部屋の鍵を受け取るにもひとゲームを待たなければいけない。催促してようやくオーナーが宿直を大声で呼びつけ事が運ぶ。こんな具合なので、外出がいちいち面倒になってくる。


アバ | Aba
中国四川省阿坝藏族羌族自治州
Aba Tibetan & Qiang Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China
アムド地方 (Amdo Area)

2007年07月05日

Sketches of Zoige・若爾蓋の街素描 -Amdo, 2007-

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達扎寺(タツァ・ゴンパ)を取り囲むマニ車の巡礼路に沿いながら裏手にある小高い丘を登りきると、若爾蓋の街が一望出来る。彼方に走る幹線道路沿いにはレンガ色の屋根をした工場がぽつんぽつんと建っている。この場所から眺めていると小さな模型のようだ。羊たちの群れが斜面に沿ってのんびりと移動している。緑の中の雲のようだ。腰を下ろして羊たちを数えてみたけれど、一向に眠くはならなかった。しだいに、空気がひんやりと湿り気を帯び、空が鈍い鉛色の雲に覆われ始める。

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街と反対側の方角には、だだっ広い草原地帯を美しい曲線を描きながら蛇行する川が流れている。空の青を写し取った水面がちらちらと輝いている。

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若爾蓋(ゾルゲ)の市場前。屋台と客待ちの力車でにぎわっている。

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今日はもう店じまいなのさ。すっかり売り切れてしまったからね、帰りの足どりも軽いや。僕は、ま見ての通り、な〜んにもしてないんだけど。

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小学校、正門前のモニュメント。


若爾蓋 | Ruoergai (Zoige)
中国四川省アバ藏族羌族自治州
Aba Tibetan & Qiang Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China
アムド地方 (Amdo Area)

2007年06月25日

Sketches of "Maerkang"・馬爾康の街素描 -Amdo, 2007-

■ 馬爾康
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馬爾康(マルカム)は、この一帯、アムドの他の街の平均的な標高、約3,500mと比べると1,000m程低い2,670mにあるため、空気に湿度があり、いくぶん日中の気温も暖かい。木々の緑も豊かだ。深い緑に溶け込んだタルチョには強い生命力が宿る。

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マルカム・ゴンパへと続く山道。5色のタルチョが風で舞い、青、白、赤、緑、黄色に染まった鮮やかな光が揺らぎ漂う。この音のないざわめきは、まるで、山の精霊たちに迎えられているよう。一歩、一歩と進むたびに、身体が分解され光に溶けていく。真っ白に、そして透明に。光の粒子になって、重力から解き放たれたような感覚でこの奥にある世界へと導かれていく。

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■ 馬爾康寺
木々の枝に結び付けられた5色のタルチョが舞い、万華鏡の中にいるかのような光りきらめく山道を登りつめると、マルカム・ゴンパへと辿り着く。入り口に構える大きな扉は色褪せ今にも朽ち果てそうで、片側の半開きの扉が支えている恰好になり、門が倒れるのを防いでいるようだった。中へと一歩、足を踏み入れるとぼぉぼぉと風に舞うタルチョの音が耳を震わせる。真っ青な空の中に深紅の炎が揺らいでるかのように見える。もっと光を浴びたいと思いゆっくりとまぶたを閉じてみた。

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馬爾康の街景。街一番の目抜き通り。

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馬爾康の街を東西に流れる「梭磨河」沿いの大通りと平行した一本奥の裏通りには露店が並び小さな市場になっている。公衆電話は「中国移動IP公用電活」の看板が、散髪屋?やタバコ屋などの店先に掲げられ、市内(市活)だと1分=0.2元、長距離(長活)だと1分=0.3元で通話出来る。(2007年4月時点情報)

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思い出す。父の手は大きくて、夕日のように温かかだった。

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■ 直波村 (Zhibocun)
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四川省アバ蔵族羌族自治州の州都、馬爾康(マルカム)からバスに乗り、梭磨河に沿って西へ30分ほど走ると小高い山に石造りの塔が突き出しているのが左手に見えてくる。バスはこれらの塔が建つ直波村が終点となり、再び馬爾康、卓克基(チェクツェ)へと折り返す。3元を払いバスを降りる。人の気配が全くない、まるで皆が昼寝をしているかのような静かな村だ。

村へと一歩足を踏み入れると、静けさがさらに増す。あたりの山は沈黙したまま。小川のせせらぐ音とハチの羽音だけが耳もとに響く。緩い傾斜の坂をSの字に登り、小道をくぐり抜けると時折吹く風にタルチョが鮮やかに舞い、木々が、からかうように枝を揺らし話し掛けてくる。そして坂が急になり、石っころの道へと変わりはじめると、空を突き刺すかのような「望楼」と呼ばれるこの見張り塔が次第に迫ってくる。

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直波(チュポ)村にそびえ立つ石造りの見張り塔。

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直波(チュポ)村の小さな広場、木漏れ日と戯れる少年。
「望楼」巡りにも後ろから付いてくる。村の小さな男の子2人が、僕の見張り塔巡りのあとにちょこまかとついてくる。お伴を従え、子供の頃の探検ごっこを思い出す。

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馬爾康 | Maerkang
中国四川省アバ藏族羌族自治州
Aba Tibetan & Qiang Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China
アムド地方 (Amdo Area)

2007年06月20日

Sketches of "Hongyuan"・紅原の街素描 -Amdo, 2007-

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雲と駆けっこをした道。

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突き刺すような太陽の光。真っ青な空の下をのんきに泳いでた雲たちは、この強い陽射しにチリチリと焼き溶かされてしまう。

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少女は廃屋の前まで来ると、急に何かを思い出したのか、くるりと向きを変え駆け出した。小さな手に風をぎゅっと握りしめて。

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夕暮れの淡い光が注ぐ紅原のメインストリート。全くやる気のない飲食店と日用品の店が色褪せた看板を掲げている。

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安曲査理寺招待所前の通り。空が藍色になると、オレンジ色の街灯が彼方まで灯りはじめる。無機的で直線的な街並が柔らかくなる。


紅原 | Hongyuan
中国四川省アバ藏族羌族自治州
Aba Tibetan & Qiang Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China
アムド地方 (Amdo Area)


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