2010年08月02日

太陽光・ヤカン湯沸かし器

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チベット周辺で見かける太陽光を利用したヤカン湯沸かし器。
手に届きそうな程に近い太陽からの光を銀色に輝く大きな羽根で受け取り、ヤカンの下部一点に集めて湯を沸かす。

チベットは標高が高いため酸素濃度が低いからだろうか、あるいは燃料が貴重だったからだろうか?こんな先駆的なソーラー式の発熱装置が珍しくない。

目のつけどころが、"モア"シャープですね。


Miles Davis Quintet "Solar"
from the album "Walkin", released in 1954
http://www.youtube.com/watch?v=dx83bH9z2tA


道孚 | Daofu
東チベット、カム地方 (Kham, Eastern Tibet)
西康(中国四川省甘孜藏族自治州)
Ganzi Tibetan Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China

2007年11月17日

カムの旅・塔公〜八美〜道孚〜炉霍、そして甘孜へ -2007-

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■ 八美から道孚へ
「塔公寺」前の広場から「丹巴」行きの乗合いバンに乗り、「八美」で一旦降りて「道孚」行きの車を探す。八美は丹巴と道孚方面の分岐点になっている町だ。僕の乗ったバンは丹巴行きなので、道孚へ行くのならばここで乗り換えなければならない。

道孚行きの車はすぐに見つかった。が、乗り込んだものの同乗者が集まらないためにここを発つことが出来ない。街を何往復もするが、ひとりの僧侶が乗り込んで来ただけでいっこうに人数が集まらず、そうしてるうちにも雪の降る量が増してくる。長丁場を覚悟した僧侶は昼食をとりにどこかへ消えていった。僕も荷物だけを置いて外の空気を吸いに車から降りる。

しばらくすると一台のバスがやってきた。黄色の屋根に煙突が象の鼻を伸ばしたようにくっついている。石炭で走っているのかもしれない。バスに駆け寄って行き先をたずねる。「道孚」へ行くのか?車掌はそうだとうなずく。満席だったけれど、後ろの座席に一人分の余裕があるようだ。荷物を取りに行くので待っててもらい、急いで乗り込んだ。道が悪いのか、バスのサスペンションが効いてないのか、トランポリンで跳ねてるかのように揺れるバスで、後部席はテコの原理でその振動をまともに食らってしまう。何度も天井に頭をぶつけるほど激しく揺れるので、前の背もたれに両手両足を踏ん張って抑えていなければいけない。この状態をこれから到着までの何時間かを続けなければいけないのかと思うと憂鬱になってくる。となりに座っていた女の子はバスがジャンプする度に、驚いた表情のあと、舌をペロっと出す仕草で和ませてくれた。


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■ 道孚から炉霍、そして甘孜へ
道孚(ダオフー)の汽車站前から乗合いのバンに乗り炉霍(ルーフォー)へと向かう。車は「鮮水河」沿いに走る。道はこの川に沿っている為に起伏がないので車の中では安心して座ってられる。ヒョウから雨、そして雪へと変わる。平坦な道とは正反対に空模様は起伏に富んで目まぐるしい。

上空には鉛色の雲が待ちかまえ、ひんやりとした霧のカーテンの中を走る。道孚から約2時間程で炉霍へ辿り着いた。空は一転し、澄んだ青空と太陽の陽射しが見え、思わず目を細める。アスファルトに落ちた影が真っ黒だ。「炉霍」は甘孜(カンゼ)と色達(セルタ)方面への分岐点となる街。標識には甘孜まで95km、色達まで135kmと書かれている。ここで別のドライバーのミニバンへと乗り換える。まだ他に客がいないので、同乗者を探す為、荷物を車に積み直し待つ事となる。40分ほど経って、チベット人の一行と少年僧が乗り込んで来たので、たちまち満席となり、甘孜へ向け発車した。

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車の速度は時速30kmを越えることがない。はじめは、くねる山道とでこぼこの悪路のせいだと思っていたけれど、標高が高いせいでエンジンが不完全燃焼で力がなく、これ以上のスピードが出ないようだ。標高約4,000m弱、ここが最後の峠越えになりそうだ。陥没だらけの道の舗装さえなければ、絵葉書で見るスイスのような風景が続く。遠景に雪山が連なり、手前にはなだらかな斜面にそって芽吹いたばかりの草原が広がりヤクの群れが緑の丘に影を落とす黒い雲のようになってゆっくりと移動している。

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炉霍を発って約3時間程を走り、最後の峠を越え下っていくと塀のように連なる雪山の中に開けた平地が見えてくる。山と並走しながら、まっすぐな道を走る。少しづつ、人の住む気配と街外れらしい雰囲気が感じられる。街が近づいてきた証拠だ。そして、この先に構える反り返った瓦屋根のゲートをくぐると甘孜の街へ到着となる。


八美 - 道孚 - 炉霍 - 甘孜
Bamei - Daofu - Luhuo- Ganzi
カム地方 (Kham Area)
中国四川省甘孜藏族自治州
Ganzi Tibetan Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China

2007年11月13日

理塘 -2007-

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街の東。坂道を、一台のバイクが勢いよく駆け降りる。

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カムパたちの乗るバイクを見ていると、彼らのたくましい風貌とは似つかない乙女チックで少女趣味的な装飾が見られる。例えばこの一台、フロントにはバラの造花が飾られ、バックミラーのまわりにはフリルのレースが付いて、ひらひらと小さく揺れている。


理塘 | Litang
中国四川省甘孜藏族自治州
Ganzi Tibetan Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China
カム地方 (Kham Area)

2007年09月09日

ROUTE MAP of Kham & Amdo

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今回まわった街の一覧と地図:

中華人民共和国四川省(Sichuan Province, China)
成都(Chengdu)海抜=500m

甘孜藏族自治州(Ganzi Tibetan Autonomous Prefecture)
康定(Kangding)海抜=2,500m
理塘(Litang)海抜=3,960m
新都橋(Xinduqiao)海抜=3,500m
雅江(Yajiang)海抜=2,690m
塔公(Tagong)海抜=3,700m
八美(Bamei)海抜=3,420m
道孚(Daofu)海抜=3,040m
炉霍(Luhuo)海抜=3,230m
甘孜(Ganzi)海抜=3,310m
丹巴(Danba)

アバ藏族羌族自治州(Aba Tibetan & Qiang Autonomous Prefecture)
馬爾康(Maerkang)海抜=2,670m
紅原(Hongyuan)海抜=3,410m
若爾蓋(Zoige)海抜=3,471m
阿バ(aba)海抜=3,260m

2007年08月26日

Sketches of "Litang" 理塘素描 -Kham, Eastern Tibet, 2007-

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理塘(リタン)ゴンパの建つなだらかな丘の上からひと息、街を望む。

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街で最もにぎわう幸福路(川蔵公路)から北へ。長青路に沿って立ち並ぶチベット人民家を眺めながらゆっくりと歩き、リタン・ゴンパへ辿り着く。深海の御殿に入ったかのように中はうっそうとしていて、油分で質量の増した柱、床は静かに呼吸している。漂う空気は濃密で、ここに風が吹く事はないのだろう。全身に気配を感じる。信者たちの参拝が絶えず、熱心に祈りを捧げている。刷られたての1元紙幣の束を手に寄進して廻るもの。ヤクのバターの塊の入った袋を提げ、ロウソクの灯る杯にくべてゆくもの、さまざま。炎は揺れることも、消える事もない。
Xing Fu Lu, Chang Qing Lu

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僧侶たちの集い。理塘寺。

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空には雲があって、大地には冬の寒さに耐え抜いた緑が太陽を待ち望んでいる。目の前には家があり、そこには石組みの暖炉に薪をくべ、暖をとるあたたかな生活がある。

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理塘の街の南。山に囲まれた平原にチベット人の民家が集まっている。緑のコケの絨毯の中、黒い点がぽつりぽつりと動いている。はるか彼方、ヤクたちがのんびりと草を食べている姿がそう。

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新しく造成中の区画。

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街の西側の通りはがらんとしている。雪山を越えて吹く風が、街をさらに冷やす。

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街はずれの静かな通りにひっそりと店をかまえる雑貨屋を前に。

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毛皮の自転車。

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カチカチに乾燥した皮を次々に放り投げ、荷車に積み上げる度に、ひからびた皮と毛から、獣臭のついたほこりが舞い散る。

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ヤクの皮を運ぶ男たち。

*本来、チベットでは「ヤク」とはオスのみを指し、その数は非常に少ないそうです。チベットで良く見かけるのはメスで「ディ」と呼ぶのが正しく、「ディ」と「雄牛」を交配させたものは「ゾ」と呼ばれ、オスの「ゾ」を「ゾポ」、メスの「ゾ」を「ゾモ」と言うそうです。ややこしいので下図にしました。つまり「ヤクだ!」といって見てたのは、そのほとんどが「ディ」か「ゾ」だったという事で。
「日本人が知らなかったチベットの真実 / ペマ・ギャルポ」より
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もしや銀行強盗の一団?いえいえ、不穏な雰囲気の一角ですがあまりにも寒いのでこうやって顔を覆っているのです。

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夕食どき、集落の煙突からいっせいに湯気が立ちはじめる。

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少し早めの夕食をとった。街に食堂はそう多くはない。隣テーブルの一同はすっかり腹を満たして店先でデザート代わりの談笑を続ける。少女だけはその輪には入らずに、じっと店奥のテレビに見入っている。見つめる先は、映画「KING KONG」のリメイク版。ヒロインとキング・コングが引き裂かれる場面。

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■ 百元札

雪域旅館の宿直部屋にて。
部屋の真ん中に置かれた電熱コイルの上には大きなやかんが乗っていて、その口からはかすかに湯気が吹き出ていた。宿の人たちが常駐する部屋だったため、しょっちゅうここに人が訪ねてきては、談笑ばかりしているので、宿の仕事はいつも後回しになっていた。たとえ、何かを頼んだとしても一向にそれが行われないので、ここへ来て、文句を言いにくる。しかし、その都度お茶を差し出されて一服してしまう。

この時も、乗合いミニバンのドライバーが休憩していた。二人いる女性のうちの片方の旦那さんだ。ポケットから出した百元札にブラックライトを当て、ニセモノかどうか調べていた。新紙幣はブラックライトの光で、隠れた文字が浮かび上がるようになっているので一目瞭然だ。今日の売上げに、ニセ札はまぎれてなかった様子でホッとしていた。


理塘 | Litang
中国四川省甘孜藏族自治州
Ganzi Tibetan Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China
カム地方 (Kham Area)

2007年07月25日

甘孜へ(3)

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道孚(ダオフー)から甘孜(カンゼ)へ。
途中、炉霍(ルーフォー)で車を乗り換える。
乗客が揃うまでしばらく待機する。

その間、川をはさんだ街の反対にある「ダンゴ・ゴンパ(寿霊寺)」から
風のようにバイクが疾走してきた。
乗り回しているのはゴンパの僧だ。

ここに来るまでも街の携帯屋ショップでは、
僧たちがたむろしている姿を良く見かけた。
あまりの俗っぽさに驚いた。

寺にこもって厳しい修行を…というのは、
勝手に作り上げた幻想に過ぎなかった。

2007年07月14日

甘孜から丹巴へ -2007-

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早朝、甘孜汽車站(バスターミナル)で「丹巴(ダンパ)」行きのバスに乗る。チケットを買わずにバスに乗り込んだので、席に座るとすぐに、検札に来た運転手に100元札を手渡す。すると運転手はそのお金を持ってチケット(票)売り場へと走って行った。どうやら、きちんと発券管理しているようだ。数分後、チケット(票)とお釣を持って戻ってきた。お釣の8元とハサミで切れ込みの入ったチケットを渡される。この時、チケットにはバス保険の票は付いてなかった。通常、バス保険はバスのチケットを購入する際に、一緒にホチキスで止められて付いてくる。保険料は1、2元ほどの金額で、補償額は1〜2万元と書かれてある。こんなものがわざわざ付いてくるなんて、それほど事故が多いのかと勘ぐってしまう。

6時30分、バスは発車。バスの窓から朝の光を浴びるのは気持ちいい。起きるのが辛い早朝の移動にとって、これは唯一の楽しみ。そして、朝日に照らされて描き出された山の陰影はとてもドラマチックだ。どこで聞きつけたのか、ヤクたちもわざわざ見送りに来てくれた。

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■ 子犬のワルツ
早朝6時30分に「甘孜」を出た「丹巴(ダンパ)」行きのバスは、9時過ぎに「炉霍(ルーフォー)」へと到着した。「炉霍汽車站(バスターミナル)」で15分程の小休憩。朝日がアスファルトに反射し下からの照り返しが眩しい。一面真っ白で、ライトに照らし出された舞台のよう。その中を子犬が軽やかなステップで踊っていた。

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■ 道孚汽車站
丹巴行きのバスは、「炉霍汽車站(バスターミナル)」で小休憩後、9時20分に発車、次の街「道孚」へと走る。道は舗装され、なだらかになり川沿いを快適に走る。11時15分、道孚(ダオフー)汽車站へ到着。ここで昼食休憩となり、乗客は皆それぞれ食事へと向かった。ここ道孚は5日前には訪れた街だ、勝手は知っている。汽車站を出たすぐの角を曲がり、店の並ぶ通りの中から、せいろからの湯気立ちの良さそうな食堂に入り、包子(パオズー)と水飯(スィファン/*おかゆ)を、ささっと食べて汽車站へと戻ると、ここの所長がすっとぼけた顔して待っていた。仕事らしい仕事をしているようには見えないけれど、立派に制服を着こなして、誇らしげに微笑む。

2007年06月14日

Sketches of Ganzi・甘孜素描 -Eastern Tibet Kham, 2007-

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鴻福旅館での宿泊。ベッドの中、カーテン越しの柔らかな光をぼんやり眺めていると、爆竹のけたたましい音が、機関銃のように鳴り響く。空気が乾燥しているのでキレがいい。窓を開け外を見ると、道の脇には爆竹の破片が赤紫色の山となって残煙を漂わせている。街一番の目抜き通りには人だかりが出来ている。すでに街は始まっていた。

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人工の着色料で塗りつぶされたかのような真っ青な空から、肌が痛くなるほどの強い日射しが降りそそぐ。雲は見当たらない。街一番のにぎわう場所、汽車站前の十字路には、朝っぱらから人だかりが出来ていて、影は大きな黒い塊となって地面に焼き付けられる。隙間から中の様子をうかがうと男二人が大道芸をやっていた。間もなく、公安が「集会」を止めるようにと、クラクションを鳴らしながら乗り込んで、あっけなく解散となる。

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ふにぃーーーッ!

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今日は朝から最高だナ。コバルトブルーの空に、真っ白になった僕。いつもより街がまぶしいよ。

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街は夏の日射しに、真冬の冷気。皮膚では暑さを感じるが、体の芯は冷えきっている。もう暑いんだか寒いんだか分からない。Tシャツの上にフリースを2枚重ね着、さらにダウンのジャケットを羽織っていても、気を抜いた途端に、ブルっと寒気が背筋を走り抜ける。良く晴れた日の夜は一段と冷える。

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街の市場にて、□と○のコンポジション。

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:
今日の仕事は終わり!さぁてと。

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川蔵公路を東へ。街の入り口にそびえるチョルテンを目指す。緩やかで長く伸びた坂道は歩いても歩いても
あまり進んだ感じがしない。

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太陽は沈むのをためらっていた。この日は一日が長かった。夕日が極限まで影を伸ばしている。ゆるやかな坂道で一台のバイクとすれ違う。瞬くほんのわずかな間に、少女と目があった。反射的に言葉が出そうになるが、その時はもう、走り去っていく後ろ姿を見つめるだけだった。

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川藏公路でゴム跳びをして遊ぶ女の子たち。

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答えはこのステンレスのコップの中に入っている。のぞかないでおこう。

■ 雅龍江
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街の西側。Lの字の坂道(川蔵路)を登りきると雅龍江(ニャクチュ)が見えてくる。

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使者は放たれた。山を越え、雲を潜り、川を渡ってゴンパからゴンパへと御言を伝える。

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甘孜から西へ約90kmの場所にある馬尼干戈(マニカンコ)へと続く道、川蔵公路(北路)。右手には崖が続き、左下には雅龍江(ナクチュ)がゆったりと流れている。バイク、車、耕耘機やトラックがひっきりなしに行き来している。

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空を支配する者。

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甘孜の街を流れる雅龍江(ナクチュ)に架かる吊り橋。川岸ではチベタンがにぎやかにピクニックをしていたり、女性らは長い髪をほどき洗っていたりする。対岸に渡ると街の喧噪は消え、木々の枝に囁きかける風の音だけが響いている。

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風の走る道を歩く。

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雅龍江(ニャクチュ)にかかる吊り橋を渡り街の対岸へと降り立つ。川岸には気性の荒い風が吹いている。そのせいで街のざわめきは、ここまでは届かない。さらに山のある方角へと足を向け、ポプラ林が染める緑の世界の中をくぐり抜ける。枝葉の間から漏れる太陽の光がキラキラと眩しい。目にやさしい光が舞う。
やがて一本の道が見えてきた。ここは風の走る道。

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街の東側に建つ大きなチョルテンから眺める雅龍江(ニャクチュ)。

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チョルテン(仏塔)の裏手に回れば、崖下には川が見え、畑が広がるのどかな景色が広がる。チベタン女性たちが川面に映る空を眺めながら、静かに語り合っていた。

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街の入り口に建つチョルテン(仏塔)を見上げる。

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夕方になると果物屋台が現れる。

街の東西をつなぐ一本の道に夕日は長い影を落とす。夕刻の西日はこの川蔵公路をなぞるように、街のあらゆるものを真っ白に輝かせ無口なまま沈んでゆく。街の背骨にあたるこの大きな道路には、日没を待っていたかのように屋台が集まり始める。日が落ちた後の色彩が失せた街には、荷台に盛られた果実の彩りが目を楽しませてくれる。

日が暮れ甘孜での一日が終わる。この時刻になると、汽車站横に並ぶ食堂「高家荘飯店」での晩ごはんが、楽しみになってくる。店の入り口まで来ると僕に気付いた亭主が「ヨッ」と右手を上げる仕草が愛嬌があって、それが見たいが為に通っている。面倒そうに調理するおかみさんの料理、店の中でいたずらする息子をあやしながら、店を切り盛りするふっくらとした娘さん。ここではお腹いっぱいになるまで食べられる。

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深夜、バラバラバラッと雷の落ちるような大きな音が響きわたった。翌朝外へ出てみると、透きとおるような深青の小さな破片がいくつも散乱していた。見た人が言うには、大きなカラスが居眠りをしていたら夜空の端っこにぶつかってしまった、その衝撃で空が砕け、そのカケラが散り落ちて来たのだと。くちばしの痕がくっきりと残ったこの日の夜空には、大きな三日月と小さな三日月が並んでいたそうだ。朝には、この欠けた空もすっかり元通りになっていた。再生した新しい空は、昨日よりもさらに青く青く、真っ青に。さてと、くちばしを傷めたカラスの見舞いにでも行ってやろうか。

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階段を上った右の部屋にネットカフェがある。

■ 甘孜のネットカフェ
インターネット・カフェを探すが、なかなか見つけられず。あちこちで尋ね歩いてようやく見つける事が出来た。何の看板も出ていない雑居ビルの扉を開け、階段を昇ってゆく。うすぐらい部屋の中には20台ほどのパソコンが並んでいて、子供たちがパソコンのモニタに向かい、もくもくとネット・ゲームにいそしんでいる。顔に映る青白く反射した光と、生気のない目、そして静かな人の気配の中で響く、キーボードのカチカチという音。外の青い空とは正反対の空間で、より一層気味悪く思えた。ネットに繋ぐにはまずIDチェックが必要で、そこは店の人が使えるようにしてくれたけれど、日本のサイトはつながったかと思うと途中で回線が遮断されてしまい、ほとんど見る事が出来なかった。


甘孜 | Ganzi
中国 四川省 甘孜藏族自治州
Ganzi Tibetan Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China
カム地方 (Kham Area)

2007年06月09日

理塘・徳格洞村

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エメラルドのピアスをした少女。

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この地域の子供たち、特に女の子は、カメラを向けると気持ちがいっぱいになるのか、身体をぐぐーっとひっくり返るくらいにまで反らして、胸をつきあげる仕草をする。僕は密かにそれを「ハト化現象」と呼んでいた。

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煙突のある風景。

理塘の街の東側、康定方面から来るとちょうど街の入り口の右手に集落がある。その小さな一画は徳格洞村と呼ばれている。薄く切り取った石を、すきま風が入ってこないよう隙間なく丹念に積み上げ建てられた家が緩やかな丘の傾斜にそって並ぶ。ここから街を見下ろす。風がぼうぼうと吹き上げ坂道を通って街の匂いを運んでくる。


理塘・徳格洞村 | Degedongcun, Litang
中国四川省甘孜藏族自治州
Ganzi Tibetan Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China
カム地方 (Kham Area)

2007年05月31日

塔公 -2007-

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新都橋から乗合いタクシーを借りきり、塔公(ターゴン)へと辿り着く。車を降り100mも歩かないうちに、ヒョウがバラバラと降りはじめたかと思うとぱたりと止み、ぼた雪が静かに舞いはじめる。街はみるみる白くなってゆく。そして、吹雪きはじめた。今日の空はいつになくきまぐれ。

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静寂が降りつづく。何もかもを消してゆく。山を、橋を、足あとまでも。

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雪が行き交う人々を消し去ってしまった。足音もしない、無音の世界。犬の遠ぼえも行きどころをなくしているようだ。塔公寺(ラガン・ゴンパ)前の広場にて。

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塔公(Tagong)の街は陰鬱だ。やまぬ雪とそれを降らせる鉛のような重い雲がのしかかるせいで、街は押し入れの中のように薄暗く、歩くにつれ気が滅入ってくる。それでも、すぐには去りがたい魅力を持っている。ここでは、何もかもが絵になってしまうせいで。

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忘れ去られた記憶たちは、擦れ切った黒い毛皮をまとい引きずりながら、見知らぬ街をのそりのそりと押し黙ったまま、静かにさまよい続ける。

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吹雪く前に、家路へと急ぐ。

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「塔公(ターゴン)」は川蔵公路に沿って店が数軒連なる程度の小さな街。大通りから一本脇道へと入ると、日の当たらない建物は薄暗くひっそりと静まり返っている。この薄暗いぬかるんだ道を、人やヤクや馬たちがどこからともなく現れては消えて行く。皆一様にこの通りを歩いている時はまるで「影」を背負っているかのように足どりが重い。雪はやむ気配がない。みるみるうちに白んでくる。そして誰もいなくなってしまった。

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塔公大橋にて。
4本足の毛むくじゃらとすれ違う。「お前は犬なのか?モップなのか?」
毛むくじゃらは答える。「あんたはつまらん事を尋ねるな。どっちでもたいした違いはないさ。あんた達にとっては、そうはいかないだろうけれど。」
毛むくじゃらは去っていった。見渡せば、大きな亀の甲羅に灰が降り積もっている。

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塔公大橋にて。

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成れの果て。美しいという才能。醜悪という非凡。

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店の軒先で編まれる、世界で一番あったかいセーター。

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塔公(ターゴン)の苺姫。

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朝がくれば、家前の通りで顔を洗い、髪を洗い、歯を磨いて、洗濯もする。毎日のこと。
この日、この街を去る事にした。

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惑星「塔公(ターゴン)」。


塔公 | Tagong
中国四川省甘孜藏族自治州
Ganzi Tibetan Autonomous Prefecture, Sichuan Province, China
カム地方 (Kham Area)


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