2020年09月05日

劇中曲「リズと青い鳥」は小説でどのように描かれていたか。


【あきすい】吹奏楽で「リズと青い鳥(吹奏楽曲) 全曲版」演奏してみた!
"Liz and the Blue Bird (Wind music version) "【リズ鳥】
(秋葉原区立すいそうがく団!&かんげんがく団! / 2020.04.12)


「あきすい」さんが「リズと青い鳥」の全曲(全楽章)を演奏している。それを聴きながら小説のなかでこの楽曲がどんなふうに描かれていたのか? なんてのを原作から引用しつつ少し考えてみた。「リズと青い鳥」の全楽章がYoutubeで公式(?)に聴けるのは、おそらく、この「演奏してみた! ver. 」ともう一つ「【ふこうよ青い鳥】リズと青い鳥【ふこ吹3】」(ユーフォのコスプレを着て演奏している)の2つくらいしかないんでありがたい。

「リズと青い鳥」はユーフォの音楽全般を担当している松田彬人さん作曲による一大組曲。作曲クレジットは、物語の中で登場する架空の作曲家・卯田百合子になっていて、アニメの世界を現実でも再現している感じがあり、こういう細かなところにも出る遊び心けっこう好きだな。小説での「リズと青い鳥」は全12分【引用(3)参照】という設定になっているが、実際に制作された楽曲は約22分と倍くらいの長さになっている。昔の感覚でいうとLPレコードの片面分の演奏時間、なんかYESやELPのプログレバンドの組曲を思い出したり、懐かしい感覚がよみがえる。

映画「リズと青い鳥」では、「リズと青い鳥」が一曲通して演奏するシーンはなかったけれど、劇場版「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」では最後のコンクールのシーンで編曲版がノーカットで聴ける。演奏時間は約9分弱。一年生編(TVアニメ1期&2期)で披露されるコンクール曲「三日月の舞」は一曲丸々を演奏するシーンはなかった記憶なので、約9分弱もある「リズと青い鳥」の演奏場面が映画の後半、ハイライトシーンとしてぶっ続けでスクリーンに映し出されたのは、けっこうスゴイことだと思う。本当にコンサートを観ているような錯覚に陥ってしまうほどだ。また、この演奏シーンだけで上映時間の10%弱を占めていることになるのだが、これは、劇場版でしか再現できなかった流れなんだろうと思える。


◆ 映画「誓いのフィナーレ」のパンフレットのセンター見開きページには監督らの座談会ページがあり、石原立也監督、山田尚子さん(チーフ演出)、池田晶子さん(キャラデザ&総作画監督)、西屋太志さん(総作画監督)の4人が映画の製作エピソードなどを語っている。石原監督がコンクールシーンについてを少し語っていたので、その部分を書き出してみた。

――演奏シーンはいかがでしょうか。
石原:
演奏シーンは難しかったですね! 久美子が1年生のときの自由曲「三日月の舞」はTVシリーズ2本、劇場版2作で段階に分けて少しづつ曲の全体を見せていったのですが、今回の「リズと青い鳥」は、一曲をこの映画の中で一度に作らなければならなかったので大変でした。物語の最後、コンクールでの演奏シーンだけでも200カットもありますよ!




「リズと青い鳥」の各章は以下のとおり。

第一楽章「ありふれた日々」
第二楽章 「新しい家族」
第三楽章「愛ゆえの決断」
第四楽章 「遠き空へ」



僕が映画「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」にのめり込んだのは、劇中で演奏される「リズと青い鳥」という曲があったからこそで、9分弱に及ぶこの楽曲が、「誓いのフィナーレ」に果たした役割は本当に大きいのだと感じる。もし、この曲がもっと違ったものであったのなら、あるいは、演出や時間の都合で部分的にしか聴けてなかったとしたら、映画の印象はがらっと変わっていただろう。いったい、どんなひらめきでこんな素晴らしい音楽が生み出せたのか? どこかで誰かが魔法を振りまいたんじゃないかって思えるくらい奇跡的な名曲だなと。

以下、小説「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」(武田綾乃著)からの引用。「リズと青い鳥」という架空の楽曲が文章で表現されている箇所を選んでみた。誓いのフィナーレの「公式ファンブック」からは、松田彬人さんのコメントを引用。この方はインタビューや製作エピソードの記事などがほとんどなく、あったとしても囲みのコメントぐらいだったりで、作曲時にまつわる話を知るのが難しい。

では、これより小説のなかから「リズと青い鳥」について書いてある箇所を挙げていこう。今回は「どんな楽曲なのか?」といったような、直接「音」に関係のある描写を選んでいる。

「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」前編、より


◆ 引用(1)
 サンフェスが終わり、吹奏楽部は一気にコンクールモードへと突入した。京都大会は八月の初旬。いまが五月中旬であることを考えると、残された時間は多いとは言えない。
(中略)
 『リズと青い鳥』
 五線譜の上に印刷された文字には、なぜだか以前から見覚えがあった。ユーフォニアムにはファーストやセカンドという明確な区分けがあるわけではないが、譜面のところどころに上と下の音に分かれる箇所がある。四小節と短いながら、課題曲にソロもあった。隣に座っていた奏が値踏みするように目を細める。
「コンクールでは定番の曲ですね。三年前にも全国大会で演奏されていましたし」
「奏ちゃん、この曲知ってるの?」
「まあ、有名ですからね。聞いたことぐらいはありますよ」
 暗に知らないことを揶揄されたような気がして、久美子は曖昧な笑みを浮かべた。
奏は顎をさすると、楽譜の一箇所を人差し指で叩いた。
「ユーフォもソロ、あるんですね。オーボエなんてすごい長さですよ」
「そうだね。カットされなければ、だけど」
 吹奏楽コンクールのA部門には、課題曲と自由曲を合わせて十二分以内に演奏しなければならないという制限がある。これを超えた瞬間に失格扱いとなってしまうため、多くの学校は自由曲を時間内に収まるように編曲する。

(p224-225 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> 小説のなかで「リズと青い鳥」という楽曲が登場するのは、前編・第三章から。サンフェスが終わり、吹部がコンクールに向け集中しはじめたときだ。顧問の滝先生がコンクール演奏用の楽譜を配った場面で、まずこの曲のあらましが語られる。
 このシーンは、映画「誓いのフィナーレ」では描かれてない。新入生の奏が勉強熱心で、楽曲に対する知識が豊富なことや他校の吹部情報を良く知っていることなどが、小説では所々書かれている。もし、2年生編がテレビ・シリーズだったら、こうした奏の一面が描かれていたのだろうな。


◆ 引用(2)
「皆さん、楽譜はきちんと受け取りましたね」
 部員全員に楽譜が行き届いたのを確認し、滝が重々しく口を開く。
「今年の課題曲は『ラリマー』、自由曲は『リズと青い鳥』です。どちらも高難度の曲ではありますが、皆さんの実力に相応しいと私は考えています」
 吹奏楽コンクールでは、規定された五曲のなかから一曲を選んで演奏することになっている。滝が選んだ課題曲IVは五曲ののなかでもっとも演奏時間が短く、三分しかない。課題曲よりも自由曲に時間を多く割きたい。そう滝が考えているのは明白だった。

(p226 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> 課題曲「ラリマー」も架空の曲だ。映画ではこの曲は登場しない。「ラリマー」は鉱石の名前で、呼び名や分類上の名前が他いくつかある。誤解されたまま広まった通俗名称が分類をややこしくしているようで、正確に分けるのは難しいみたい。小説の中でも、ちょっとした解説が緑輝の口から語られる。(p229)
http://crystal-hauoli.com/differencebetweenlarimarandpectlight/


◆ 引用(3)
「自由曲『リズと青い鳥』は、吹奏楽部ではお馴染み、卯田百合子さんの作曲です。ほかにも有名な曲がいーっぱいありますが、それらに比べると今回の曲は知名度が低いです。童話『リズと青い鳥』をもとに作曲された、かなり物語性の強い曲になっています。第一楽章から第四章まで、合わせて十二分ほどあるので、滝先生は結構ばっさりカットしはると思います。この曲の目玉は、なんといっても第三楽章のオーボエのソロ! 後半のフルートとのかけ合い部分がめっちゃ素敵で、一時期はその部分だけCMに採用されてこともありました」
(p229-230 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> 低音パートのミーティングで、楽曲に詳しい緑輝がCDプレーヤーで「リズと青い鳥」をかけながら、この曲についてうんちくを披露する。


◆ 引用(4-a)
久美子は次に楽譜ファイルをベッドの上で広げた。なかに入っている曲はもちろん、自由曲である『リズと青い鳥』だ。
 この曲は昼間の輝緑の説明どおり、四つの章から構成されている。それぞれの章は物語の展開に対応しており、話の一連の流れをつかんでさえおけば、譜面がどのシーンを表現しているのか簡単に予測がついた。

(p242-243 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> 自宅に戻った久美子は夜、ベッドの上で(緑輝から借りた文庫本)童話「リズと青い鳥」を読み始める。読み終えるとPCに入っているこの曲を再生し、童話と楽曲のつながりを探ってゆく。


◆ 引用(4-b)
第一楽章の『ありふれた日々』はリズが少女に出会うまでの日常を、そして第二楽章の『新しい家族』はリズと青い鳥が扮する少女との生活を表現している。第二楽章の冒頭部分にあるダイナミックな旋律は、嵐の様子を模したものだ。金管楽器の奏でる不穏なメロディーには、びゅうびゅうと風の音色が混じっていた。楽譜に指定されている楽器の名前は、ウィンドマシン。その名のとおり、風の音を再現することができる。
 第三楽章の『愛ゆえの決断』は、その大半をオーボエのソロが占める。スローテンポなためにこの章だけで四分ほどあるが、おそらくそのほとんどはカット対象となるだろう。第三楽章の後半はオーボエとフルートのソロのかけ合いがメインだ。オーボエの力強いソロの後ろに流れる、木管楽器の柔らかなささやき。オーボエの旋律は静寂を引き連れ、やがては第四楽章へと移る。『遠き空へ』。その章題どおり、青い鳥はリズのもとから飛び立っていく。華やかで壮大なメロディが、二人の別れを盛り上げる。後半に向かうにつれて音楽が熱を帯び、やがては終局を迎える。夜空に残る打ち上げ花火の余韻のように、音のない空間にハーモニーの残滓が漂う。

(中略)
 第四楽章の曲調は、優雅だが力強い。
(p243-244 / 三 嘘つきアッチェレランド)



◆ 劇場版「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」公式ファンブックに作曲家・松田彬人さんのインタビューが少しだけ掲載されている。「リズと青い鳥」作曲のエピソードが少し語られていた。第ニ楽章『新しい家族』の冒頭で登場する紙を巻いたでっかい回転ドラムのような機材がウィンドマシンと呼ばれるものらしく、映画の中でも登場する。

――「リズと青い鳥」作曲時の印象的なエピソードをお聞かせください。
 特殊な楽器(コントラファゴットや特殊パーカッション)を使いたいというオーダーが一番記憶に残っています。そういった楽器は存在自体を知っていても詳しくは知らなかったので、勉強するところから取り組みました。
(ファンブック・p70より)

* * * * * * * * * * * * 

◆ また、同じくファンブックの巻末ページに原作者・武田綾乃さんのインタビューが4ページあり、そのなかでウィンドマシーンを小説で登場させた経緯が語られている。最近の吹奏楽部のトレンド傾向を取り入れながら、視覚的に面白く見えるように、この見慣れない大きな楽器を物語に取り入れたということだ。以前のインタビューで、武田綾乃さんは次のようなことを語っていた。…最初の「響け!ユーフォニアム」を書いたあとアニメ化されたのを見て、それが次回作の執筆に大きな影響があったのだと。(アニメ映像のように)物語にメリハリをつけ、キャラクターの個性をより強調することで、読者をひきつけるのに参考になったそうだ。以下のインタビューを読むと、久美子2年生編「波乱の第二楽章」でも、映像・アニメ化されることがすでに念頭にあるのだな、と思わせる。

――演奏シーンは小説を書く時には、どれくらいイメージして書かれているのでしょうか?
 演奏シーンは抽象的なイメージしかなくて、作曲家ではないので具体的なメロディまでイメージできているわけではないんです。(中略)絶対に使いたい楽器は小説の段階で決めていて、「リズと青い鳥」であればウィンドマシーンを入れたかったんです。絵的にも面白いし、演奏している人も楽しそうだなと思って。ウィンドマシーンを使いたくて「リズと青い鳥」の「第二楽章 新しい家族」の冒頭が生まれたようなものです(笑)。最近、吹奏楽部の演奏では珍しい楽器を持ち込んで演奏するのが流行っているので、そのトレンドを取り入れたいなと思っていました。
(ファンブック・p100より)



◆ 引用(5)
 自由曲の第三楽章の譜面は、休みだらけだった。小節という名の檻に押し込まれた、数少ないオタマジャクシ。その上にちょこんとのったフェルマータが、感情のない瞳でこちらをじっと見つめていた。
(p263 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> 練習の合間、低音部員たちが談笑しているなか、そのときの久美子の心情や状況を例えるような感じで、このような描写がある。


◆ 引用(6)
安堵したのも束の間、次に滝が指定した箇所は自由曲の裏メロだった。音と音の高低差が激しい箇所だ。キリキリと痛む頭に、久美子は我に返る。どうやら無意識のうちに息を止めていたらしい。
(p354 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> コンクールでのユーフォ奏者を選ぶオーディションの場面。3年生の夏紀先輩が最初にオーディションを受ける。夏紀が演奏している間、久美子は後輩の奏と共に外で待つ。上文は、夏紀がユーフォを吹いているときの久美子の意識と緊張の度合いを描写している。



「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」後編、より

◆ 引用(7)
自由曲、『リズと青い鳥』。四楽章から構成されたこの曲は、『リズと青い鳥』という童話をもとに卯田百合子によって作曲された。そのメインは、なんといっても第三楽章にあるオーボエソロだ。後半ではフルートも交じり、ソロのかけ合いとなる。第二楽章冒頭には短いトランペットソロもあった。
(p16 / 一 憧憬(しょうけい)にアウフタクト)


>> この箇所では、特に目新しい描写はなく要点をまとめた感じの数行。今作では一年生編(TVシリーズ1期・2期)に比べ麗奈の登場シーンは多くないが、こんなふうに「トランペットソロ」という言葉を入れることで、少し麗奈の存在をちらつかせる形になる。


◆ 引用(8)
「今年の自由曲は、オーボエのための曲やと思わへん?」
 こちらを見やる麗奈の瞳は、驚くほどに冷静だった。ぱちりと瞬きをひとつ落とし、久美子は静かに首をすくめる。
「まあ、オーボエがメインなのは間違いないと思う。第三楽章なんて、終盤でフルートが入ってくるとはいえ、丸々オーボエソロだしね」
「去年もオーボエのソロで、今年はさらに目立つようになって……。それってさ、滝先生はみぞれ先輩がいまの北宇治のいちばんの戦力やって思ってはるってことやんな」
「いちばんとは思わないけど、戦力なのは間違いないと思う。オーボエのみぞれ先輩も、希美先輩も」

(p23-24 / 一 憧憬(しょうけい)にアウフタクト)


>> 一年生編(TVシリーズ1期・2期)での、コンクール曲(三日月の舞)のハイライトはトランペット・ソロだった。麗奈は今年の自由曲「リズと青い鳥」における主役がオーボエとフルートのかけ合いであることが、少し気に入らない。滝先生がみぞれの吹くオーボエをとても重視し、彼女の才能を期待ていることがまず大きくある。だか、肝心のみぞれがまだ本来の能力を発揮できずにいることで、麗奈はより一層不満を募らせている。これはハイレベルな演奏者同士でしかわからない、才能への共鳴を垣間見せる場面。みぞれとフルート奏者・希美の2人の関係をじっくり描いているのが、劇場版「リズと青い鳥」で、このシーンも映画「リズと青い鳥」のほうに組み込まれている。


◆ 引用(9)
みぞれがソロを担当する第三楽章『愛ゆえの決断』は、リズの少女に対する葛藤の日々を描いている。後半に登場するオーボエとフルートのかけ合いは、リズと青い鳥の対話を表現しているらしい。
(中略)
 クラリネット、サックス、ファゴット、コントラバス。背後に流れる伴奏は、草原をなでる穏やかな夜風を思わせる。演奏に合わせ、みぞれの身体が微かに揺れる。
『リズと青い鳥』のメイン中のメイン、高校生には難度の高すぎる超絶技巧のオーボエソロ。複雑なメロディーはやがて落ち着きを見せ、そこに希美のフルートが流入する。交互に現れるふたつのソロ。

(p82-83 / 二 独白とタチェット)


>> 小説での描写では、第三楽章についてが最も多く書かれている。この場面も劇場版「リズと青い鳥」にあたる。


◆ 引用(10)
『リズと青い鳥』の第三楽章は、オーボエの独壇場だ。控えめに奏でられた木管を伴奏に、オーボエが堂々と主役に躍り出る。後半には希美のフルートが交じり、かけ合いのようにメロディを作り上げる。
(中略)
人気作曲家である卯田百合子の楽曲のなかでも、このソロ部分は圧倒的な難度の高さを誇る。
(中略)
鎧塚みぞれという優秀なオーボエ奏者がいなければ、滝がこの『リズと青い鳥』を自由曲に選ぶことはなかっただろう。
(p189-190 / 三 彼女のソノリテ)


>> 上に同じく、第三楽章についての描写。


◆ 引用(11)
 フルートの奏でる、蝶の羽ばたきのような音のさざ波。静謐さをたたえた木管の旋律から、第一楽章『ありふれた日々』は始まる。
(中略)
 積み重なるクラリネットのハーモニー。二本のマレットが音板を叩くたびに、グロッケンからきらめく音の粒がこぼれる(中略)加速する演奏。急激にかかるクレッシェンド。チューバが咆哮を上げ、地鳴りを思わせる低音が空間を支配する。ビリビリと空気を揺らす振動は、音の塊そのものだ。
(p235 / 三 彼女のソノリテ)


>> 関西大会へ向けての合宿練習。最後の日が近づいた頃、ようやくみぞれが吹っ切れた演奏を見せる。彼女の本気の演奏を目の当たりにした部員はおろか、指導する先生たちをも唖然とさせる。楽曲「リズと青い鳥」の音楽的な描写は、とても詩的になり、読者にはより音のイメージが付きやすくなる。


◆ 引用(12)
 滝がみぞれを見る。視線を受け、みぞれはリードを口に含む。第三楽章、オーボエソロ。合宿時から変わらない、彼女の演奏の圧倒的な完成度。美しさ以外のすべてを削ぎ落とした音色は、聴者の脳内にえも言われぬ快感を引き起こす。そこに、希美のフルートソロが加わる。二人のかけ合いは複雑さを増し、徐々に緊迫感を生む。滝の手が宙を引くような仕草を見せる。極限まで引き延ばされたフェルマータに、みぞれが苦しげに眉をひそめた。麗奈がすぐさま楽器を上げる。
 第四楽章、『遠き空へ』。トランペットのファンファーレが、暗雲が立ち込めた空気にひと筋の光を見いだす。青い鳥はその翼を広げ、空の果てへと飛び立っていく。その壮大さ、その優雅さ。すべての楽器が一丸となり、たったひとつのテーマをつくり上げる。息苦しさに顔をしかめながら、久美子は正確にピストンを押していく。何度も練習した箇所だ。そう思い、練習していない箇所などないことにすぐさま気づく。左側から聞こえる夏紀と奏の音が、寸分の狂いもなくアタックを決める。滝の腕が激しく上下し、音楽は最大の盛り上がりを見せる。思考する余裕も消え失せ、久美子は必死に滝の指揮に食らいつく。
 楽譜なんぞ見る暇はなかった。走り抜けるフォルテシモが、緊迫した空気に風穴を開ける。吹き抜ける一陣の風は、走りゆく青い鳥の羽ばたきだ。爽快さのなかにどこか寂寥(せきりょう)を感じさせるメロディが、やがて物語の終わりを告げた。
(p324-325 / 三 彼女のソノリテ)


>>吹奏楽コンクール、関西大会での演奏シーン描写。北宇治は全国大会への切符を手にすることが出来なかったため、演奏曲を描く文章もここで終わる。が、とても想像力をふくらませるような筆で、音の像が描かれる。

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(left) 劇場版「響け!ユーフォニアム 〜誓いのフィナーレ〜」公式ファンブック
(right) 「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」前・後編



響け!ユーフォニアムの楽曲一覧(pixiv百科事典)
https://dic.pixiv.net/a/%E9%9F%BF%E3%81%91%21%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%81%AE%E6%A5%BD%E6%9B%B2%E4%B8%80%E8%A6%A7

リズと青い鳥(吹奏楽曲)
https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%81%A8%E9%9D%92%E3%81%84%E9%B3%A5%28%E5%90%B9%E5%A5%8F%E6%A5%BD%E6%9B%B2%29

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2020年07月18日

響け!ユーフォニアム:TV版アニメと原作小説を比較する(1)


TVアニメ『響け!ユーフォニアム』 PV第2弾( KyoaniChannel / 2015.03.22 )


昨年、劇場版「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」を観たあとに、映画と原作小説を比較する記事を書いたのはいいが、なかなか続きが進められなかった。理由はひとつ、映画の様々な場面でTVシリーズに絡んだシーンが出てくるので、やはり先にTVシリーズのほうをやっておかなければいけないな、と思った次第。そうなるとアニメは1期、2期合わせると全26話があり、原作小説も数えると3冊分になる。そんなわけで、その数にちょっと気後れしてしまったのだ。今年は、「響け! ユーフォニアム」のアニメ化から5周年。これをいいきっかけに、(声は弱いが、今度こそ)TVシリーズ版のアニメと原作小説を順に追っていこうと思う。一年って長いようでほんと短い。

「アニメと原作小説を比較する」とは言っているものの、単に二つを比較し違いを見出すことが目的ではなく、石原監督が小説からどのようにしてアニメ作品に仕上げたのか? また文章からどんなふうにしてアニメのイメージをつくり上げたのか? といったことに興味が向いたり、自分の違ったイメージや解釈が沸くようになるといいな。


響け!ユーフォニアム「誓いのフィナーレ」:映画と原作小説を比較する(1) (2019年08月14日)
響け!ユーフォニアム「誓いのフィナーレ」:映画と原作小説を比較する(2) (2019年10月13日)
http://tavola-world.seesaa.net/article/sound-euphonium-comparing-novel-and-movie-1.html
http://tavola-world.seesaa.net/article/sound-euphonium-comparing-novel-and-movie-2.html


* 以下に記している()内のページ数は、宝島社文庫「響け! ユーフォニアム 〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜」より、また秒分数は「dアニメストア」配信版のものになる。


アニメ版「響け!ユーフォニアム」について少し

「響け! ユーフォニアム」(1期)は、小説「響け! ユーフォニアム 〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜」(武田綾乃著)を元に、京都アニメーション制作によってアニメ化された作品。全13話で、2015年の4月から7月にかけて深夜枠で放映された。原作となる小説の刊行は2013年12月だから、小説が出版されてからアニメ化されるまでの期間は約1年半、制作の工程を逆算してみるとけっこう短いように思える。原作者・武田綾乃さんのインタビューを読むと、小説出版の翌春にアニメ化のオファーがあったそうなので、京アニさんは小説が出て1、2ヶ月の間に制作の意向を決めていたということになる。おそらくまだ、本のセールスや評判がどれほどあるのか、はっきりしてない段階だろうから、この早さは何か導かれてそうなったような感じがしないでもない。振り返ると、「涼宮ハルヒ」は小説刊行からアニメ化まで約3年弱の間があるし、「氷菓」は小説が出てから約11年目にアニメ化となった(共に京アニさんで)。

──「ユーフォニアム」のTVアニメ化が決定した時の心境はいかがでしたか?
武田: 大学2年生の冬に本を出した後、3年生の春頃だったんですが、大学の帰りに電車に乗ってた時に、突然担当の方からアニメ化の連絡をいただいたんです。
最初は本当に「何言ってるんだろう」という感じで(笑)、すごく戸惑ったというか驚きが強かったですね。

『響け!ユーフォニアム』原作 武田綾乃インタビュー 今しか綴れない物語、より
( kai-you.net / かまたあつし / 2016.03.29) https://kai-you.net/article/26894



第一回「 ようこそハイスクール」について少し

第一話「 ようこそハイスクール」は、原作小説の【プロローグ】(p6-9)と【一 よろしくユーフォニアム】(p10-31)の途中まで、計26ページ分がベースになっている。前半パートは、中学3年の吹奏楽コンクールを回想するシーンからはじまり、主人公・黄前久美子の高校入学、仲良くなったクラスメートと吹奏楽部を見学し、誘われるのだが、入部するかどうかを保留にする。「響け! ユーフォニアム」シリーズの主要メンバー、黄前久美子、高坂麗奈、川島緑輝、加藤葉月、4人のキャラ描写が中心。後半パートは、幼馴染の塚本秀一が登場し、久美子は吹奏楽部への誘いを受ける。そして、顧問となる滝昇の登場。神社でのお参りシーン。この時点では音楽に詳しいキャラだということしかわからないが、次回への伏線となっている(原作にはない場面)。そして、久美子が吹奏楽部に入部することを決めた場面でこの回は終わる。前半は女性キャラを中心に、後半は(数少ない)男性キャラの描写をすることで対比的な構成になっている。

では、小説をもとに以下書いてみる。


【プロローグ】 中学最後の吹奏楽コンクールのシーン (文庫:P6 - 9)

 何百という顔が、一様に同じ方向を見つめていた。広場に渦巻く熱を帯びた空気が、少女たちの頬を赤く染め上げる。はやる気持ちを抑えようと、久美子はゆっくりと息を吐き出した。どくどくと、心臓の鼓動が鼓膜を打つ。握り締めたてのひらは汗で張りつき、食い込んだ爪先が皮膚の上に三日月形の痕を作った。
「緊張で死ぬかもしれへん」
 隣にいた梓が、こらえきれないといった様子でポツリとつぶやいた。
(p6より)



 原作・TVアニメ版の相違点 ◆
小説の冒頭は、主人公・黄前久美子が中学三年生のとき、京都府吹奏楽コンクールの結果発表のシーンを描いたもの。久美子の隣には、後に吹奏楽の名門「立華高校」に進学する同級生佐々木梓がいて(アニメでは右隣側で描写)、二人で結果の発表を聞いている。アニメ版でも冒頭シーンは、小説とほぼ同じ内容で描かれている。(00:00〜01:38)
アニメ版での最初のセリフ(名前のあるキャラで)は久美子の右隣にいた梓の「ヤバイ、緊張する」という言葉だった。アニメでは、小説より口語的になっていたり、絵の動きで(文章による)人物描写が置き換えられていたりする。久美子の左隣には高坂麗奈がいて、彼女は組んだ腕に顔を埋め身体を震わせている。そして「ダメ金」で終わったことを悔しがり大粒の涙をこぼす。



【一 よろしくユーフォニアム】(1) 入学式の紹介シーン・久美子と麗奈の遭遇 (文庫:P10 - 13)

麗奈ほどの頭脳があればもっと上の高校でも入れただろうに、どうしてこの学校を選んだのだろう。まさか自分と同じように制服で進路を選んだわけでもあるまい。久美子が首をひねっていると、不意に麗奈がこちらを向いた。黒曜石のような瞳が、じっとこちらを見つめる。もしかして、見られている? 二人の視線がはっきりと交わる。それは一瞬で、しかし久美子にはとても長い時間に思われた。(p12 - 13より)


 原作・TVアニメ版の相違点 ◆
小説では体育館のなかで行われている入学式のシーンから始まり、教頭の挨拶が終わると校歌斉唱があって、そこで吹奏楽部が伴奏をする。演奏は不ぞろいなリズムと不協和音でバラバラ。久美子はこの演奏を聴いて、吹奏楽部に入部する選択肢を外した。校歌斉唱のあとは、新入生の挨拶へと続く。立ち上がった新入生代表は、同じ中学で、吹奏楽部でも一緒だった高坂麗奈。成績優秀な彼女が、なぜ自分と同じ高校に来たのかを疑問に思う。
一方、アニメ版では主人公・黄前久美子が桜が舞い散る学校正門の前に立ち、上級生吹奏楽部員による新入生歓迎の演奏を聴く場面から始まる。階段に並ぶ吹奏楽部員たちを前に、3年生・田中あすかの振る指揮棒は軽快な動きをみせるのだが、演奏はお世辞にも上手いとはいえず久美子は唖然とする。

・アニメでの桜から始まる展開はとてもキャッチーだ。青い空とピンクの桜、華やかで目をひく。導入の絵作りとしてまさにこれしかないという感じがある。「響け!ユーフォニアム」は吹奏楽部の物語。運動部のように、大きく身体を動かしたり何かのアクションがあるような絵にはなりづらい。楽器を演奏する姿も、ロック・ミュージシャンのように派手にするわけにもいかない。どこかでメリハリを出すのなら、例え小さなイベントであっても、そこで日常シーンとの差をつけたい。小説は人物の内面描写で読者の関心を集めることはできるが、アニメの場合は視聴者の注目を絵で魅せていかなければならない。
・黄前久美子が、高坂麗奈と同じ高校だったと知るのは小説の方が早く、アニメ版では吹奏楽部の見学に行ったときと、少し後になっている。
・北宇治吹奏楽部の演奏力の描写は、(体育館と校門前という)場所の違いこそあれど小説、アニメ版ともに最初のほうで読者・視聴者には示されている。


【一 よろしくユーフォニアム】(2) 一年三組:久美子・葉月・緑の出会い (P13 - 20)

「っていうかさ、さっきから気になっててんけど、アンタなんで標準語なん?」
「うーん、東京に昔住んでたから。それでかな?」
「へえー、関西弁とかうつらんの?」
「家族もみんな標準語だから、あんまりうつらないかな。あ、でも一緒にいた友達は、逆に標準語がうつるーって言ってたよ」
「ふうん。じゃあうつらんように気をつけとこ」
(p14 - 15より)



 原作・TVアニメ版の相違点 ◆
クラスメートとの初顔合わせ。小説では、久美子が席につくと、隣にいた加藤葉月に声をかけられしばし雑談するも、間もなく担任が入ってきてざわついている生徒らを叱咤。生徒たちはあわてて名簿順に割り振られたおのおのの席へ座り直す。その後先生が点呼をとる。アニメ版では、久美子の席は窓際列・前から5番目、葉月はその後ろの席になっている(*「涼宮ハルヒ」でのキョンとハルヒの座席位置と同じ:細かく言えば入学当日ではなく席替え後の席順。また「けいおん!!」〜3年2組〜での、のどかとゆいの座席位置と同じでもある)。アニメでの座席は教室の窓側最前列席を始点にアイウエオ順となっていて、川島緑輝は窓際のひとつ隣列、一番前の席に座っている。小説では窓際からはじまるのか、廊下側から始まるのかの記述はない。また小説では、アニメ版の点呼シーンで呼ばれた二人の生徒「ウチヤマダヒロコ」「エグチヨウコ」の名前はない。(*下座席表参照)
小説では、葉月が久美子の標準語イントネーションを指摘する会話があり、この部分はアニメではカットされている。小説での会話は関西弁になっているのだが、アニメ版のセリフは標準語に変更されている。その点について、石原監督がインタビューのなかで以下のように答えている。

──原作とアニメでいろいろな違いがあります。個人的に一番印象が変わったのは多くのキャラクターが関西弁でなくなったことでした。
石原 僕も最初はアニメも関西弁でやるかなと思って、関西に縁のありそうな声優さんのリストアップもしたんですよ。ただ難しいのが、関西弁を話すキャラクターが1人2人ではなく大多数という点。役柄に合っている声と演技で、さらに関西弁がしゃべれるという人はなかなか見つからないだろうということで、アニメ版では標準語になりました。

「響け!ユーフォニアム2」監督・石原立也 X 原作者・武田綾乃(natalie.mu)、より
https://natalie.mu/comic/pp/hibike_eupho/page/2

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ホームルームが終わり下校の時間。久美子、葉月、緑の三人は一緒に帰ることになる。アニメでは、吹奏楽部の見学へ行くシーンとなる。

Sound-euphonium-seating-chart-1st-grade-class-3.png
* 参考図: 「響け!ユーフォニアム」1年3組座席表



【一 よろしくユーフォニアム】(3) 
久美子・葉月・緑の三人は一緒に吹奏楽部に入ることを約束する。
 (P20 - 26)

「久美子も吹部に入るんやんな?」
 葉月が無邪気に尋ねてくる。そんな顔をして問われては、誰が否定できるだろうか。久美子はぎこちない笑みを浮かべると、諦めたようにうなずいた。
「う、うん……入るつもりだよ」
 その回答に満足したのか、緑輝は口元を綻ばせた。
「よかったー。部活に友達できるかなーって、緑、心配やってん」
「三人で仲良くやってこな!」
(p26より)



 原作・TVアニメ版の相違点 ◆
帰り道の会話。葉月、緑の中学時代の話からパーソナリティの掘り下げとキャラクターの描写が続く。小説では下校途中の道というシチュエーションで、アニメ版では学校の廊下という違いがあるが話している内容はほぼ同じ。



【一 よろしくユーフォニアム】(4) 幼馴染、塚本秀一の登場。 (P26 - 31)

「まあでも、お前が入るなら俺も吹部入るし。楽器何しよっかな!」
 秀一はあっさりそう言って、ぐっと伸びをした。白い手首が袖口からわずかにのぞく。猫みたいだ、となんとなく思った。
「そんなんで決めちゃっていいの? 部活」
「ええって。俺運動できひんし、選択肢ほとんどないからなあ」
「………あっそ」
 できるだけの素っ気なさを装って、久美子はつぶやいた。買ったばかりの焦げ茶のローファーが夕陽を浴びて鈍く光る。
(p31より)



 原作・TVアニメ版の相違点 ◆
アニメ版の後半パートは、久美子の住むマンションの近く、宇治川に沿って続く遊歩道(あじろぎの道)の一角に設置されたベンチに座り、久美子がひとりため息をつくところから始まる。久美子は、高坂麗奈が自分と同じ北宇治高校に通っていること、さらに吹奏楽部に入部したことに驚きを隠せなかった。放課後にあったその出来事にふけっていると、同じ高校へ通う幼馴染の塚本秀一が現われ、久美子に声をかける。高坂麗奈のことで頭がいっぱいな久美子は秀一を軽く、冷たくあしらうも、秀一は一方的に話しかけてくる(14:39-16:24)。小説では、久美子の方が先に吹奏楽部に入ることを決めていて、(久美子に淡い気持ちを寄せる)秀一がそれを聞いて一緒に入ることを決めるが、アニメでは秀一のほうが先に吹奏楽部へ入部することを決めていた。以下、アニメ版セリフの書起こし。


秀一 :「お、お前さ、部活どうすんの?」
久美子:「…まだ決めてないよ」
秀一 :「吹部じゃねーの?」
久美子:「あんたは?」
秀一 :「俺? 俺はまあ、他にやりたいこともないし。吹部、かな?」
久美子:「そっか」
(中学時代、高坂麗奈の涙を流すシーンがフラッシュバック)
久美子:「あたしはー、入らない」
秀一 :「へ?」
久美子:「入ろうと思ってたけど、やめることにした」
秀一 :「なんで?」
久美子:「なんでもっ。じゃあねっ」
 


・後半パートの多くは、原作小説にはないアニメ・オリジナルのエピソードで構成されている。
(1)自宅に戻った久美子が、母親と会話する場面。自分の部屋でくつろぎ、今日一日の出来事をサボテンに話しかけていると、いきなり姉が入ってきて、独り言を行っている久美子を茶化す。そのあと軽い喧嘩となる。(16:25-17:55)
(2)夕方、神社にお参りする滝昇(この時点では誰だかは不明であるが、2話で北宇治吹奏楽部顧問として登場する。次回への前フリになってる)の姿があった。彼は、おみくじの結果が分からずにいたカップルに声をかけ、おみくじの順列を教える。そのときポケットに忍ばせていたスマートフォンが足元に落ちて、聴いていた音楽があたりに響く。突然の大きな音に戸惑うカップル。滝は二人にその曲の解説をする。音楽が流れるなか、映像は別の場面へと切り替わる(滝の持っていたスマホの時刻は16時23分を表示している)。書き込みだらけの楽譜がクローズアップされ、久美子がページを繰る。それは彼女が中学時代に吹奏楽コンクールで演奏していた「地獄のオルフェ」という曲だった。滝がスマホで聴いていたのと同じ曲。滝は久美子・麗奈が在籍していた大吉山北中学校吹奏楽部がコンクール(府大会)で演奏していた音源を聴いていた。(17:56-19:52)
(3)翌朝、うかない顔の久美子。朝食を食べずに学校へ行く。教室でぼんやりしていると、緑輝が見守る中、後ろの席で葉月が大きなマウスピースを口にあて音を鳴らそうとしていた。楽器もまだ決まってないのに、いきなりマウスピースを買ってきたことに久美子は驚くのだが、子供の頃お姉ちゃんに教えてもらった吹き方を懐かしむように思い出し、葉月に教える。そして、葉月がかすかに音を鳴らしたのをきっかけに、緑輝が一緒に吹奏楽部へ入ろうと久美子を改めて誘う。とくに何か強い意志があったわけではないが、久美子はなんとなくその場の流れで吹奏楽部への入部を決めたのだった。(19:59-21:57)


第二回「よろしくユーフォニアム」へ続く。


「響け!ユーフォニアム」〜(6) 舞台探訪:宇治周辺【あじろぎの道】 (2015.05.30)
by いなずま 〜舞台巡礼の実録(その0)〜
http://cycle-junrei.hatenablog.jp/entry/2015/05/30/091532
・主に京アニ作品の聖地巡礼をされている「いなずま」さんのBlog。久美子と秀一がだべっていた「あじろぎの道」を訪れた記事。



Sound Euphonium: Season 1 - Official Trailer (subtitled)
(All the Anime / 2018.08.31)
海外版オフィシャル予告動画。「All the Anime (Anime Limited)」は、イギリス(スコットランド)を基点にし、ヨーロッパ全域で日本のアニメを配信している会社。英語字幕がけっこう勉強になる。



cap-twitter-anime-eupho-season1-episode-01.jpg
* 画像は公式ツイッター(下リンク)より
https://twitter.com/anime_eupho/status/1247435895143165953

響け!ユーフォニアム 第一回「ようこそハイスクール」(公式HP)
http://tv.anime-eupho.com/story/01/

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2020年07月14日

レビュー:「リズと青い鳥」


『リズと青い鳥』ミュージックPV(KyoaniChannel / 2018.04.27)


「dアニメストア」の新着一覧のなかに、『リズと青い鳥』が入っていたのを目にし一瞬自分の目を疑った。え、もう配信に? 近いうちにブルーレイを買うつもりでいただけに、嬉しいような悲しいような。でも、円盤買うのはついつい後回しになっていたので、お試しで観てみよう。ユーフォ・シリーズで唯一観てなかった最後のひと作品。これで、テレビ・シリーズの26話と劇場版「誓いのフィナーレ」のミッシング・リンクが埋まった。最後のPieceは穏やか(Peace)に。
観終えた第一印象は、なんてぜいたくな映画なんだろう、だった。緻密で繊細、そして余韻の長さ。予想していた以上のいい作品だった。心が洗われるような、浄化されるのが感じとれるような、そして自然と語りたくなってくる。これは、劇場の大きなスクリーンで観たい、劇場の大きな音で聴きたい、と強く思う。いろんなところで凝ったシーンがあったので深堀りできそうだから、何度か観返してまた詳しく書きたいが、今回は軽くメモ程度に残しておく。

「リズと青い鳥」(dアニメストア)
https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/ci_pc?workId=24018



映画「リズと青い鳥」と「誓いのフィナーレ」について少し
「リズと青い鳥」は、2018年4月に劇場公開。翌2019年4月に劇場公開された「誓いのフィナーレ」と対になる作品で、「響け!ユーフォニアム」シリーズの主人公・黄前久美子が二年生になったときの物語から派生したもの。原作小説では、「北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」〜前編〜のプロローグ&エピローグ部分と、〜後編〜のプロローグ部分と第二章〜第四章がベースになっている。
「誓いのフィナーレ」は、ひとつ上級生になった黄前久美子と新入生のぶつかり合いが大きな柱になっていて、「リズと青い鳥」では久美子の先輩にあたる三年生「傘木希美」と「鎧塚みぞれ」、二人にフォーカスを絞り彼女らの友情関係を描いたエピソードが中心になっている。

小説「北宇治高校吹奏楽部へようこそ」「北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏」「北宇治高校吹奏楽部、最大の危機」の3冊が、黄前久美子の一年生編として、TVシリーズ(1期・2期)全26話で描かれている。久美子2年生編にあたる「リズと青い鳥」と「誓いのフィナーレ」の2作品。「リズと青い鳥」の上映時間は90分。TVシリーズの一話分が約20分(OP・EDを除き)だから、4.5話分に相当する。一方「誓いのフィナーレ」の上映時間は100分なので約5話分にあたり、二つを合わせてもTVシリーズの約10話分弱にしかならない。そのため、久美子2年生編は、時間的な面でTVシリーズのように一人一人のキャラクター像が十分に描ききれてない部分はあるが、劇場版ならではの作画の細やかさで、足りない時間を少し補えているところはある。特に「リズと青い鳥」における、生徒たちの仕草や楽器のメンテナンス・シーンなどは、TVシリーズでも描いてないような非常にディティールにこだわった場面なので、それらから読み取れる情報量というものは相当なものだと思う。


「リズと青い鳥」の構成
映画のタイトルにもなっている「リズと青い鳥」というのは、吹奏楽コンクールで演奏する自由曲として選ばれた楽曲で、童話「リズと青い鳥」をもとに作曲されたもの。もちろん両方とも(小説内の)架空の物語で架空の楽曲だ。以下、小説より引用。

「自由曲『リズと青い鳥』は、吹奏楽部ではお馴染み、卯田百合子さんの作曲です。ほかにも有名な曲がいーっぱいありますが、それらに比べると今回の曲は知名度が低いです。童話『リズと青い鳥』をもとに作曲された、かなり物語性の強い曲になっています。第一楽章から第四章まで、合わせて十二分ほどあるので、滝先生は結構ばっさりカットしはると思います。この曲の目玉は、なんといっても第三楽章のオーボエのソロ! 後半のフルートとのかけ合い部分がめっちゃ素敵で、一時期はその部分だけCMに採用されてこともありました」

「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」前編
、より
(p229-230 / 三 嘘つきアッチェレランド)



演奏曲「リズと青い鳥」のハイライトは、第三楽章のオーボエとフルートのかけ合いで、物語はこの二つの楽器を受け持つ、みぞれ(オーボエ)と希美(フルート)の二人が、コンクールを目指す練習のなかで息が合わずにすれ違い、そして、最後にはひとつにまとまってゆく姿をみせる。さらに、童話『リズと青い鳥』のストーリーが、みぞれと希美に重なり交錯する。みぞれは内向的でコミュ障な性格、希美は明るく後輩からも慕われ社交的。みぞれは中学時代、希美に誘われ吹奏楽を始めたこともあって、みぞれにとって希美はあこがれる存在だ。だが、高校に入り楽器を続けていくうちに、みぞれの才能は自分でも気付かぬうちに開花していて、そのことが演奏(才能)の差として現われはじめ、みぞれと希美の関係を悪くする。童話『リズと青い鳥』の結末を知っているのぞみは、自分と希美の関係を物語に重ね、その中に見出そうとするがうまくいかず。互いの気持ちが少しづつずれていき、コンクールを控えた部の練習にも影響が出てくる。そんなときに、ひとつ下の二年生、黄前久美子と高坂麗奈が、オーボエとフルートのパートをトランペットとユーフォニアムに置き換え、校舎の裏側で演奏してみせる(下画像・このシーンは多分小説にはなかった)。意図的やったのか、それとも遊びでやったのかはわからないが、このシーンを期にみぞれと希美の気持ちに変化が訪れる。別々の方向にバラけかけていた二人の想いが、再び同じ方向へと戻ってゆく。そして物語は最終章へ。

cap-liz-and-bluebird-kumiko-reina.png
『リズと青い鳥』ShortPV4 北宇治カルテット編(KyoaniChannel / 2018.05.01)、より
https://www.youtube.com/watch?v=TH5IAkYE4KU


印象深かった点
・作画がほんと素晴らしい。安心して物語に入っていけるし没頭できる。

・ユーフォ・シリーズとは違うキャラデザと色調。ラムネ瓶を透かしてみたような色褪せたトーンと中性的なキャラクターの線はアート的な雰囲気があって、「響け!ユーフォニアム」特有の絵のタッチが苦手な人にも馴染みやすい感じはする。

・前半の音響感がゾクゾクする。靴の音、風に揺れるスカートの音、リュックの揺れる過剰なほどにリアルな音が、現代音楽風のスコアと重なって、ときにリズミカルに、ときにサウンドエフェクト的に脳の中で残響を残してゆく。これ、是非映画館で体験してみたいと思った。この前半部分のところは、目をつぶっていても絵が浮かんできそうなくらい強烈だった。
音録りについて、山田尚子監督のインタビューがあるので以下引用。

 繊細な心の動きを描くために、山田監督は音にもこだわった。(中略)
 山田監督は「この線引きを大事にしたかった。学校パートは、学校を容器に見立てて、壁や椅子、廊下がみぞれと希美の行方を固唾(かたず)をのんで見守っているような音楽世界」とイメージを語る。そうした音楽世界を表現するために、牛尾さんは実際に舞台となっている学校でビーカーをたたく音や廊下の反響、足音などを録音し、音楽の素材として使用したという。


リズと青い鳥:「少女たちのため息を描く」 山田尚子監督がこだわり抜いた表現、より
(MANTAN-WEB / 2018年04月21日)

https://mantan-web.jp/article/20180420dog00m200014000c.html

・映画のはじまり(厳密には童話パートの次だけど)は、朝練で朝早くにみぞれが登校するシーンからはじまる。そして映画の終わりは下校の場面。その間二、三ヶ月の間が過ぎてはいるのだが、まるで一日のなかで起きた出来事かのような錯覚が起こる。時間感覚のなさ、つまり現実感の排除。これはけっこう、「リズと青い鳥」にとって大事な要素なのではないだろうか、と感じた。映画の淡い色調とも相まって、まるで白昼夢のなかで起こっているドラマのような非現実さ。TVシリーズや「誓いのフィナーレ」で描かれるリアルさとは、正反対のあり方。それは教室の時計を見てみるとよくわかるかもしれない。「リズと青い鳥」では、時計は壁にかかっているのだけれど、光の反射やガラスが曇っていることで文字盤や針がまったく見えない。TVシリーズでは、何時何分ということまでがはっきりと分かるくらいに時計は描かれているのだ。そして、「ガラス」の描写についても面白い点がある。希望や望む世界を透き通してくれる教室の窓や、(ふぐを飼っている)水槽のガラスは透明で描かれているが、現実を映す、あるいは現実を突きつけるもの、時計のガラスや吹奏楽部顧問・滝先生の眼鏡のガラスは光に反射され、不透明に描かれている。

・映画「リズと青い鳥」は、最後にみぞれと希美が校門を出て下校するシーンで終わる。それが唯一、学校の外に出た場面で、それ以外のほぼ全編、学校の中だけで物語が展開する。下校のシーンは、劇中、みぞれが希美という籠から解き放たれて自分の才能を解放する場面の重ねでもあるし、希美の求めたハッピーエンドな世界でもある。みぞれと希美、二人を描いたこの映画、なぜ、学校という「籠」の中だけで物語を進めたのか? 主たる理由にはならないかもしれないが、みぞれの演奏する楽器「オーボエ」にも一つ要因があるのではと思える箇所が小説のなかにあった。以下引用。


「オーボエは外で吹けない。割れちゃうから」


「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」後編
、より
(p219 / 三 彼女のソノリテ)


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2020年06月11日

6/12より、dアニメストアで「劇場版・響け!ユーフォニアム」の2作が配信開始!


『劇場版 響け!ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜』WEB予告
(KyoaniChannel / 2017.09.08)
*受験のため母親の反対にあい、コンクールの出場をあきらめようとするあすか先輩を、なんとしてでも引き止める久美子の説得シーンが胸を打つ。ここ、何回観ても号泣する。黒沢ともよさん迫真の演技。すんごい心揺さぶられるし、ヒリヒリするから普段気軽には観れない回だけど、ユーフォ・シリーズのなかで一番くる場面(上予告・0:48〜で少し)。2期は本当に完成度高く、4話の作画の美しさ(みぞれと優子。ほんとスゴイよ)や最終話、雪のシーンのあの感激…とか、見所が多い。



わぉ! 6/12から、dアニメストアで『響け!ユーフォニアム』の劇場版「〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜」と「〜届けたいメロディ〜」が配信開始。この2タイトルはTVシリーズの1期、2期を劇場用に再編集したもの。観よう観ようとは思っていたけれども、TVシリーズのを観ているだけにBlue-rayを買うにしても、なかなか優先順位は下がりがちになってしまう。ただ、新規カットもあり、主人公・久美子とあすか先輩にフォーカスした編集は評価が高いみたいで、けっこう期待感がある。できるなら、家でみるんじゃなく劇場で観たい作品だったりもしする。とはいっても、映画館での鑑賞はタイミングがそうそうない。なんで、この配信決定のニュースはちょっとうれしい。


ユーフォ関連では、先週の6/6(土)21:00から、北宇治カルテットの4人の声優さんが「リモートだよ!お祭りフェスティバル!」のライブ配信をYoutubeでやっていた。本来開催されるはずだったイベントが延期になってしまったため、急遽、webで配信することになったとかで、久々のユーフォ話題に心はやった。どうやら、去年発表のあった「久美子3年生編」の制作はなくなってないようで、制作はされるみたいだ。それがわかっただけでもうれしかった。ライブ配信は始まって5分経たないうちに、7,500人が視聴。ちょうど一時間後の22:00あたりに11,000人強の人が視ていた。アーカイブになっているので下にリンク。
cap-sound-euphonium-remote-fes-06-june-2020.png
『響け!ユーフォニアム』リモートだよ!お祭りフェスティバル!
(ぽにきゃん-Anime PONY CANYON / 2020.06.06にライブ配信)
https://www.youtube.com/watch?v=ah4r7E-lnAQ



【6月配信予告】劇場版ユーフォニアム/CLANNAD番外編/…他
(dアニメストア)
https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/CQ/notice-5038
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2020年04月20日

1年前の今頃


『劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』本予告
(2019.03.23 / KyoaniChannel)


去年のちょうどいまぐらいの時期だったと思う、4月19日に「劇場版・響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」が封切りされて少し経ったころだったか。まだそのときは「響け!ユーフォニアム」のことを全く知らずにいた僕は、Youtubeではじめてこの映画の1分ばかしの予告編を観て、すごい衝撃を受けた。このアニメについて何の予備知識もなかったから、映像と音楽が次々と進んでゆくほどに新鮮なものがあって、同時に胸からこみ上げてくるものがあった。それはきっと、バックに流れていた音楽の影響も大きく作用していたように思う。予告がはじまるとともに、この映画で最も重要な曲になる「リズと青い鳥(第一楽章「ありふれた日々」の前半パート)」の華やかで希望に満ちた旋律が響くなか、僕が真っ先に目を奪われたキャラクター・久石奏が登場する。何? このリアルな髪の動き! &肌の質感! そして音楽は主題歌「Blast!」へと切り替わり、高坂麗奈のどことなく感情を抑えたクールな台詞が流れ、夏紀先輩の熱いメッセージが続いたあと、しっとりと雨に打たれたシーンへと変わる。そこで奏が伏せ目がちに、なにやら問題っぽいセリフを投げ捨てる。なんか面白そうだなぁと画面越しにひしひしと伝わって、これはちょっと観に行かなきゃいかんと思った。このあと5回観にいくことになるなんてこの時点では想像すらしてなかったし、夢中になれるものに久しく巡り合えた感もあった。あとになってみると、この作品の持っている、あるいは作品に封じ込められたパワーに導かれたんじゃないだろうかと思ったりする。「誓いのフィナーレ」をきっかけに、もっと他のアニメも観るようになったので何かほんと節目というか、まだ見ぬ新しい扉がほんのわずかなことで目の前に現れるもんだと改めて思ったりした。
思い出深いこの予告編をちょうど一年ぶりに見返して(実のとこ、ちょくちょく観てはいるんだけど)、なにか以前とは印象が変わったことがあるのかといえば、ちょっとあったりする。悲しいことに、奏の声が「このすば」の駄女神アクアにしか聞こえなくなってしまって、嗚呼、小悪魔っぽい奏のイメージがもう全くといっていいほど崩れさってしまった。Purification、purification。
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2020年03月19日

同人誌コミック「久石奏の暴走」

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「久石奏の暴走」by Hiyoccoさん + 「涼宮ハルヒの暴走&動揺」
*表紙絵下半分がけっこうキワどいので、ハルヒの文庫で隠してます。


「薄い本」。いわゆる成人向けの同人誌。一般的には、男性向けだと思われているふしがあるんだけれど、けっこう女の子も買っていたりして、レイヤーの子やV-tuberのトークにもちょくちょく登場して話題になっていたりする。たぶんBLものだろうけど。
この手の本って紹介しづらいんだよなぁ、と思いつつも、すごくいい作品を手にしたので紹介したい気持ちもあって、うーん、けっこう迷う。やっぱでも、この一冊はほんと感激したんで紹介しておきたい。この気持ちのほうが勝ってしまった。

Hiyoccoさん作「久石奏の暴走」
タイトルはもちろん「涼宮ハルヒの暴走」からのもじり。まずここで興味をぐっと引きつけられた。「久石奏」で検索をしていたときに偶然、表紙画像を目にしたんだったかな(もうひとつ「二次創作、Pixiv」のキーワードを付けていたかもしれない)。ネーミングセンスの良さもあって、ん、何だろう? という気持ちがむくっと沸きさらに辿っていくと、今年一月に発売されたばかりだと知る。なら、まだ買えるぞ! それで置いてある店を探し、あわてて買いに行った。新宿のメロンブックスさん。まだ風の冷たい2月の半ばくらいだった。初めて入ったお店のなかは、所狭しと同人誌が置かれていてけっこうカオスな空間。一体何がどういうカテゴライズで置いてあるのかも分からず、とりあえずはじからはじまで見てまわる。カワイイ系のイラスト集から過激な漫画まで幅広くあったけれど、どれもクオリティ高く、見てるうちにけっこう欲しくなってしまい、最初の目的を忘れそうになった。いやぁ、こんな世界があったんだ、っていう軽い衝撃と、どこかデジャヴュな感覚が交錯する。ああ、そうだ。この感覚、学生時代に輸入盤のレコード屋を巡っていたときのとよく似ている。雑居ビルの小さな一室を開くと、まだ聞いたこともない海外のバンドやインディ・レーベルのレコードがずらっと並んでいて、ジャケやタイトルだけで自分の勘を働かせる感じ。懐かしい。長く眠っていたものが、身体の奥、いや脳の奥底か、そう、内側から雫の波紋のように広がってくる。買ったものを手に家に戻り、はじめて自分の直感が当たっていたのか、それとも外れだったのかがわかる、このちょっとしたスリルを伴う楽しさ。色々吟味しつつ、思ったより店に長居してしまったし、また来てみたくもなる。そんなこんなで、無事「久石奏の暴走」を買うことができ、封を開けるまでの電車移動もわくわくものだった。
*現在、メロンブックスHPの通販では在庫切れになっていて、店舗在庫も残部少となっている。

さて、「久石奏の暴走」について少し。本の仕様はB5サイズで、表紙をのぞいた漫画ページはモノクロで28P。奏と仲のいい剣崎梨々花、二人の百合ストーリー。劇場版「誓いのフィナーレ」でみせる「一生懸命がんばっても結果につながらなかった、認められなかった」奏の気持ちが軸になって展開し、百合満開の吹奏楽部、そして部員との関係を描いている。まず、絵がすごく上手く、登場するキャラクターもかわいく描かれている。そしてコマ割もテンポもよく、内面の描写やセリフが特にいい。なもんで、最初この作者は女性なんだと思っていた(名前もそんなふうだし)が、違っていたっぽい。僕がこの作品で一番、感激したのは作者のユーフォ愛と、もう一つ、どうしてもこの漫画を描かなきゃ気がすまないっていう気持ちが絵に表れているところで、読みながら思わずうるっときてしまった。なもんで、(僕にとっては)エロ要素がそれらにかき消されてしまって、すごいピュアな作品に見えてしまう。ただ、ユーフォに興味ない人が見るとそんなことはなく、(客観的にみると)相当エロい漫画だとは思う。だけどね、ほんといい作品だなと。増刷かかってほしいよ。キャラの内面がしっかり描けているから、エロなしの普通の物語編を見てみたい気もするし。にしても、ベレー帽被った奏がかわいかった。


原作小説から奏と剣崎梨々花、二人の関係を推察してみる
久石奏と剣崎梨々花は、武田綾乃著「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章(前・後編)」で、北宇治高校吹奏楽部の新入部員として初めて登場するキャラクター。久石奏は劇場版「誓いのフィナーレ」では準主役級の扱いで描かれているが、剣崎梨々花は単独で登場するシーンはなかったように思う(「リズと青い鳥」はまだ観てないのでそっちでは少し登場するのかも)。ただ、原作小説では奏と仲のよい吹奏楽部員としてちょくちょく出てくるし、二人はクラスメイトだ(「波乱の第二楽章・前編」p147)。剣崎梨々花の担当する楽器は木管楽器のオーボエ。少し話がそれるが「響け!ユーフォニアム」を観ているうちに、僕自身オーボエをやりたくなってちょっと調べたりしたんだけど、けっこう高価だったこととメンテナンスが本当に大変そうなのでやっぱりあきらめた。そのとき知った即席の予備知識みたいなものから考えるに、高一でこの楽器をある程度吹けるってことは、おそらく自分専用のを持っているのだろうと思われ、剣崎梨々花はけっこういいとこのお嬢さんなんじゃないかと察する。

小説のなかで、久石奏が登場するシーンをみてみると大きく二つの傾向に分かれる。ひとつは低音パートの一員として、先輩部員たちのなかに入ってゆくシチュエーションのとき。そしてもう一つは、同学年である剣崎梨々花と一緒にいるときで、そのときはたいてい(部活でみせる顔とは正反対の)プライベートな一面をみせ、奏のキャラクターを深堀りすることとして描かれている。奏と梨々花の親密なやりとりは、百合要素たっぷりで、たしかにその場面を絵や漫画にしたとしたらそういうふうになるのかな? なんて想像は働く。以下小説から一部引用。


 奏の忠告など一切気に留めた様子もなく、梨々花はなんの脈略もなく奏の腕に抱きついた。あからさまに胸を押し当て、梨々花は「えー」と鼻にかかった声を発する。(中略)
 
 なぜか決め顔を作る梨々花を、奏は鼻であしらう。
「ぶりっこ」
「またまたー。そんな私が好きなくせに」
「まあ、好きなのは認めるけど」
「わあ、大胆。私も奏のこと好きー。チューしてあげよっか?」
「それは結構」
(中略)
 
「奏が特別ってのはほんまやで? 私ら親友やん」
「そうやったん? いま初めて知ったわ」
「ひどーい」
 両目に手を当て、梨々花がわざとらしく泣き真似をする。この二人の会話に中身があることなどほとんどなく、たいていは先ほどのように冗談か本音か判別のつかない台詞を交互に投げかけ合っている。


●「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章(前編)」p297-299、より



「響け!ユーフォニアム」はアニメ版でも、けっこう百合世界を匂わせる描き方がされていた(久美子と麗奈、中世古香織と吉川優子、鎧塚みぞれと傘木希美等々)。原作小説を読むまでは、アニメ独自でそのあたりを強調してるのかな? なんて思っていたが、けっこう小説でも「ザ・宝塚」的な表現や言及があったりし、わりと原作に準じていたんだとわかる。吹奏楽部は女子部員が多いので、必然的にそういう関係(擬似的なもの)が生まれやすいとのことらしい。

「久石奏の暴走」でメインの題材になっている奏と梨々花の関係も、しっかり小説から派生したもので、単にキャラ主導で描かれたものじゃないってところが、作者Hiyoccoさんのユーフォに対する深い愛情が感じられ、なんかいいなと思う。(多分休日デートのあと?)梨々花の家にお呼ばれした奏と梨々花。二人とも高一とは思えないほどのお洒落な服をまとっている。このシーンも原作にある少ない描写の中から、想像を広げた絵なんじゃないかと思え興味深い。


「先輩もチューナーをお使いになりますか?」
 ぬっと横から突き出された手には、ピンク色のチューナーが握られていた。久美子たちとはモデルが違う、最新型だ。
「あぁ、ありがとう奏ちゃん」


●「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章(前編)」p214、より



サンフェス当日、出番前のチューニングの場面。奏は自分のチューナーを久美子に差し出す。奏は自分好みのカラーリングの最新機種を携帯していて、音合わせに余念のないことや、楽器以外のマテリアルにもちゃんと気を遣っている様子、またそれがちゃんとファッション的にも彼女の満足のいくものでなければいけない、そういったことから奏の性格がどういったものなのかみてとれる。そして、レギュラーカラーではない色づかいをした機器を手にしているということは、探すのにひと手間かかっただろうし、また値が張るものだろうから彼女の家庭の裕福さを想像することができる。つまり、奏と梨々花の家庭環境はわりと上流で、よく似ているのではないかとも思える。


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『リズと青い鳥』ミュージックPV、より(Kyoani Channel / 2018.04.27)0:14-
https://www.youtube.com/watch?v=OGWO3u8zgTU


「可愛い表紙ですね」
 そう言って奏がこちらの手元をのぞき込んでくる。
「私のあと、奏ちゃんも読む?」
「いえ、私は読んだことがあるので大丈夫です。久美子先輩が読み終わったら、美玲かさつきにでも貸してあげてください。二人とも読んでいないはずなので」


●「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章(前編)」p234、より



上テキストは、コンクール用の自由曲が「リズと青い鳥」に決まり、練習前に低音パート内で、その楽曲について話し合っている場面。ヴェロスラフ・ヒチル著による「リズと青い鳥」という童話があり、これをもとに作曲家・卯田百合子が作曲したのが「リズと青い鳥」という曲になっている。そして、緑輝が家から持ってきた3冊の文庫本を部員に配るとき、上のような会話が交された(映画では、童話「リズと青い鳥」は絵本版と文庫版があって、文庫版は岩波文庫を模した表紙になっている。一方、小説では"文庫"となっており、表紙には題名の下に女の子二人が描かれていると記されているので、アニメ版とはイメージが異なる)。
奏は、コンクール用の自由曲として「リズと青い鳥」が決まる以前に、童話の方をすでに読んでいた様子で、教養ある一面をみせる。奏の育ちのよさが表れている。緑輝がなぜ「リズと青い鳥」の文庫を3冊も持っていたかというと、最近彼女の妹が小学校の演劇発表会でこの劇をしたから、という理由だ。

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『リズと青い鳥』ロングPV、より(Kyoani Channel / 2018.04.21)1:25-
https://www.youtube.com/watch?v=lQxwNaoFdQQ




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2020年03月03日

2019年のベスト・ソング:TRUE「Blast!」


Blast! / TRUE 5th Anniversary Live Sound! vol.2 〜FAN SELECTION〜
(2020.03.01)


劇場版「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」のエンディング曲、TRUEさんの「Blast!」。迫力のライブ・アンコールに、うるっときた。僕の去年のベスト・ソングはこれやったんでうれしいな。
映画が終わって、この曲とともにエンドロールが流れるんだけど、すごいさわやかな気分でこの作品を締めくくることができて、外に出るとなんか晴れやかな気分と高揚感でいっぱいになるんだ。劇場を背にしながら、いい映画(&音楽)だったな、って。TVシリーズで次回へとバトンタッチするお馴染みのフレーズ「そして、次の曲がはじまるのです」は、「誓いのフィナーレ」の最後で登場することがなかったんだけど、「Blast!」の歌詞の中には「次の曲が待ってるよ!」のフレーズがあって、3期(3年生編)へのたすきがけは、やっぱりされてるんだろうなと感じたり。
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2020年02月26日

届いたよ!ユーフォニアム。劇場版「誓いのフィナーレ」ブルーレイ・予約特典

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劇場版「響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」ブルーレイ【コンテ集付限定版】
京アニ・ショップ予約特典「 描き下ろしフォトカード」(2Lサイズ+台紙)

いやー! めっちゃ、うれしい!! 発売日当日に届いた。
アニメショップや他DVD店なんかでは、お店ごとにそれぞれ趣向の違った予約特典を付けていてどれも魅力的だったんだけど、ブルーレイってけっこう高額なんで二つ、三つと買えるわけがなく、どれか一点に絞らなくちゃいけなかった。僕は京アニ・ショップの予約特典にした。奏が真ん中に描かれたイラスト・フォトカードが欲しかった。

午前、配達の人がきて受けとる。さっそく開けるとミントグリーンのカードが目にはいる。ああ、これが特典のやつだ! と封を切る。
北宇治高校吹奏楽部、合奏コンクール用の譜面隠しに合わせたデザイン。まるで演奏会の招待状みたいなたたずまい。カードは二つ折りになっていて開いてみると、ユーフォ組三人のイラストが入っていた。思わず「か、かっカワイイ!」って口に出てしまうほど奏がかわいい。差し込まれたカードを取り出すと、劇中の演奏シーンのカットが印刷されている。

もうひとつの目玉は、「石原監督厳選の名場面コンテ集(208P)」。これはじっくり見ていこう。

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ディスク・ケースのパッケージ。寝そべってうたた寝する奏。
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2020年01月20日

ご予約はうさぎですか?

Sound-euphonium-our-promise-blueray-cover-0226-2020.jpg
https://tagong-boy.tumblr.com/post/190326681731/


2/26、劇場版「響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」のブルーレイ&DVDが発売。
パッケージのカバー画像が届いて、以前のと差し変わっていた。
限定盤のボックスは水彩のイラスト。通常盤はユーフォ・チームの三人が駆け出しているシーン。久美子の顔をうかがおうとして、ちょっと前のめりになった奏がかわいすぎる。


【限定】劇場版「響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」
[コンテ集付数量限定版 Blu-ray](描き下ろし絵柄使用三方背ケース付き)
https://www.amazon.co.jp/%E3%80%90Amazon-co-jp/dp/B0816J9TFM/
posted by J at 18:00| Comment(0) | 響け!ユーフォニアム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月06日

リアル奏が奏以上にかわいい、の


雨宮天 『PARADOX』Music Video(short ver.) 2019.12.13


「ユーフォ・誓いのフィナーレ」で久石奏のCVをやっている雨宮天さん。1/10スタートのTVアニメ「理系が恋に落ちたので証明してみた。」ではヒロイン氷室菖蒲のCVと、オープニング曲も歌っている(エンディングは、なんとナナヲアカリさん)。で、このMVのお団子ヘアーがめっちゃかわいい。(僕の場合)たいてい、声優さんを見ると登場キャラのイメージが崩れるんで、動いているところはあんまり見たくないんだけど、天さんはキャラ以上のかわゆさでとろけそう。映像に影響受けないように、静かに目をとじて曲に耳をすますと、あー確かに、奏が歌ってる、奏でが歌ってる、って涙ぐむ。なんか設定では、明日1/7が奏の誕生日らしい。奏に贈るショートストーリー(二次創作)があったんで、貼っておこ。


「早朝の窓辺に」by ろっく L.W.K(わんこ)2019年1月7日
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10590172


久石奏【ピクシブ百科事典】
https://dic.pixiv.net/a/%E4%B9%85%E7%9F%B3%E5%A5%8F
posted by J at 15:00| Comment(0) | 響け!ユーフォニアム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする