2016年09月21日

J.G.バラード "The Atrocity Exhibition" を英語で読む(2)

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英語初心者の僕が海外の小説にチャレンジするぞ、というもので、読んでいる本の冒頭部や、章のなかで気に入った箇所などを一部抜き出し少し紹介しよう、といった主旨。


前回、アップした「The Atrocity Exhibition」の冒頭タイトル「黙示録(Apocalypse)」和訳のつづき。「黙示録」は、この奇妙な短篇世界へと引きこむ印象深い掛け声みたいなもので、今回の「Notes Towards a Mental Breakdown」は、このあとに続くストーリーの目次のようなもの。ここで出てくるいくつかのキーワードがのちのち展開する文章の中に散らばって、全体をつなげている。ウェブのリンク網のように、要所要所に現れる言葉が断片的な小さな物語の前後で結びつき、そして小さな面となり、この短篇を立体的なものにしているようにも思える。まだバラードの小説をいくつかしか読んでないが、彼の嗜好性というか好みの世界観の輪郭はおおよそわかるようになってきた。
バラードは、人が大なり小なり必ずや持っている暴力性や狂気の部分(普段そういったものは心の奥底に深く仕舞いこまれていて表出することはない)、そこに焦点を当てすくい出す。そして、それらをより濃縮・誇張した上で彼のもつ美意識に重ねあわせ、過剰なまでの装飾をする。さらに論理性を加え、時代背景の中に流し込み物語の鋳型をつくる。硬質だけれどもどこか柔らかさのある、奇妙な質感をもった小説はこうしたところから来ているように感じる。
たどたどしくけっこう苦労しながら、自分で洋書を訳して少し感じるのは、普段何気なく読んでいる海外小説・翻訳本のありがたさ。ペーパーバックを開くと、スラングで意味不明の箇所(特にアメリカの小説)や古典のものなどは単語が古語的なのかで、よくわからなかったりする(ホーソーンはまだ僕が読むには辛く、J.コンラッドは一行もわからず即諦めた)。著者や物語の背景などもふまえながら、そういった本を自力で読もうとしたら多分五年十年かかるんじゃないかとすら思う。海外文学の邦訳本は日本の小説本よりも、大抵やや高めの値段になっている。以前は、もう少し安くなればいいのになと思っていたけれども、自分で訳す能力と労力、そしてそれにかかる時間を考えると、前ほどは気にならなくはなってきた。数千円で数百ページ丸まるを翻訳してくれているわけだから、とちょっと考え方を改めるようになった。


 海は週に四日くらいは荒れた。窓から見ると、大きな波が東映のタイトル・バックみたいに岬の突端の岩にぶつかり、十メートルくらい上にまでしぶきをあげていた。海は見渡す限り白波に覆われている。そしてJ・G・バラード的に暴力的な風が吹いている。

「遠い太鼓」村上春樹、より("港とヴァンゲリス" / 講談社文庫・p172)

村上春樹はバラードの退廃的、破滅志向あるパブリック・イメージをこういう風に言い、うまく形容し使う。



■ Chapter one : The Atrocity Exhibition( + 邦訳)
Japanese translated by Tagong-Boy / original text by J.G. Ballard


精神崩壊にいたるまでの覚書き:
Notes Towards a Mental Breakdown.


精神異常発症者を記録した映画フィルムのノイズ音が、トラヴィスのオフィス下にある階段教室から徐々に大きくなった。机の後ろにある窓に背をむけたまま、彼はここ数ヶ月の間、骨を折り集めた最終書類の整頓をした。
The noise from the cine-films of induced psychoses rose from the lecture theatre below Travis's office.
Keeping his back to the window behind his desk, he assembled the terminal documents he had collected with so much effort during the previous months:



(1)太陽の反射分光写真。
(2)ロンドン、ヒルトン・ホテルのバルコニー・ユニット正面図
(3)先カンブリア時代の三葉虫の断層面
* 三葉虫が現れたのは「カンブリア紀」から、となっているので、バラードは意図的に「先カンブリア」と書いたのかそれとも勘違いなのかは分からない。

(4)エティエンヌ=ジュール・マレーによる連続写真。
(5)1945年8月7日の正午に撮影されたエジプト、カッターラ低地の砂海の写真。
* 1945年8月7日正午でのカッターラ低地。ここで記される限定した日にちと場所にどうい意味合いがあるのかはわからないが、この日は8月6日広島に原子爆弾が投下された翌日にあたり、その報道が全世界で一斉になされ、世界中の人が核兵器の恐怖を知った日。バラードは "核" により地球(世界)が草すら生えない不毛の地になったことを示したかったのかもしれない。

(6)マックス・エルンスト作「Garden Airplane Traps」の複製画。
(7)広島と長崎に投下された原子爆弾「リトル・ボーイ」と「ファット・ボーイ」の信管配線図。
* 長崎に落された原子爆弾は「ファットマン」

(1) Spectro-heliogram of the sun;
(2) Front elevation of balcony units, Hilton Hotel, London;
(3) Transverse section through a pre-Cambrian trilobite;
(4) 'Chronograms,' by E.J. Marey;
(5) Photograph taken at noon, August 7th, 1945, of the sand-sea, Qattara Depression, Egypt;
(6) Reproduction of Max Ernst's 'Garden Airplane Traps';
(7) Fusing sequences for 'Little Boy' and 'Fat Boy', Hiroshima and Nagasaki A-Bombs.


書類の整頓を終え、トラヴィスは窓の方を振り向いた。いつものように、白のポンティアックが彼の真下に見える混み合った駐車場に停まってた。車中にいる二人の人物が、うっすらと色づいたフロントガラスごしに彼を監視していた。
When he had finished Travis turned to the window.
As usual, the white Pontiac had found a place in the crowded parking lot directly below him.
The two occupants watched him through the tinted windshield.





話中で、トラヴィスが集め整理していた「最終書類」のイメージ画像:(1)-(7)

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・太陽の反射分光写真
・ロンドン・ヒルトン・オン・パークレーン - wiki
・三葉虫の断面図

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・エティエンヌ=ジュール・マレー - wiki
・カッターラ低地 - wiki
・広島で原爆投下があったことを伝える1945年8月7日の新聞(The Daily Express)

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・Max Ernst「Garden Airplane Traps,1935」(シカゴ美術館HPより)
・長崎に投下された「ファットマン」の断面図 -wiki

上画像は下記リンク先より
http://tagong-boy.tumblr.com/post/150563383411/jg-ballard-notes-tawards-a-mental-breakdown


トラヴィスを見張る人物たちが乗っていたポンティアックのイメージ写真
wiki-Pontiac-Bonneville-1963-1967.jpg
Pontiac Bonneville - wiki
https://en.wikipedia.org/wiki/Pontiac_Bonneville

「ポンティアック」といってもものすごい数のモデルが出ているので、バラードが小説の中でイメージしていたものが、どの車種なのかは特定できないが、この短篇を執筆していた1960年代後半ごろに生産されていた「ボネヴィル」の第3、4世代(1961-1964 / 1965-1970)あたりが該当するんじゃないかと思う。ウィンドシールド(フロントガラス:和製英語)ごしに見ていた、と文中には書いてあり、コンバーティブル(オープンカー:和製英語)ではないだろうが、白い車体での写真が見つからなかったため、白車と別色車の二枚を合わせ想像してみる。




2016年09月13日

J.G.バラード "The Atrocity Exhibition" を英語で読む(1)

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4th Estate Books 版の"The Atrocity Exhibition". カバー・デザインはスタンリー・ドンウッド。
レントゲン写真とアメリカ大陸の地表図を使ったフォトコラージュは、この小説のもつ不穏なイメージを上手く表している。ウィリアム・バロウズが序文を書いていて、それもまた嬉しい。その序文冒頭で「The Atrocity Exhibition」のことを難解で不安にさせる本だと書いている。


The Atrocity Exhibition is a profound and disquieting book.

from 'PREFACE BY WILLIAM BURROUGHS'


9/30、ついに東京創元社から「 J・G・バラード短編全集(1)時の声」が出る。HPにはようやく表紙デザインの画像と収録タイトルが掲載されて、いよいよだなといった感じ。少し残念なのは、うーん、日本版の表紙デザインがこじんまりとしていていまひとつ良くないこと。悪くはないが、ハッとするような新鮮味がない、カバー・デザインとしてはやや中途半端なものだった。スタンリー・ドンウッドをデザイナーとして起用した「4th Estate Books」のペーパーバック・シリーズが、今の時代に合うとても洗練されたものだけに大きな差を感じてしまう。特殊な小説スタイルをもつバラードの本なのだから、ブックカバーも賛否両論が出るくらいの冒険はあってもよかったんじゃないだろうかと思ったり。まぁ、本の中身は文句なしだからそう気にするでもないけれど、やっぱり惜しいな。 日本版短編全集の刊行を記念して、というわけでもないが、別の短篇集「The Atrocity Exhibition」の訳を素人手で少しやってみようと思う。

http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488010584

「アトロシティー・エクシビション」について少し


バラードが1970年に出した短篇集「The Atrocity Exhibition」の冒頭を飾る作品は、タイトルと同じ「The Atrocity Exhibition」。全部で24の断片的な文章(小さな散文のようなもの)で構成されている。登場する人物を軸にそれぞれの話がつながっていて、小品による連作ものといった感じだ。短いものだとわずか4行、長くても1ページほどしかない。なので、話の区切りがよく、英語初心者の僕でもなんとか読み進むことができそう。というのがこのペーパーバックを最初に手にしたときの印象だった。
この本の文字組・レイアウトを見ると、1ページに収まる行数は最大で33行。和訳の後(このページの最後)に各タイトルのテキスト量をグラフ化してみた。またタイトル横に、それぞれの行数を記したのでおおよそのボリュームがわかると思う。-Chapter One-「The Atrocity Exhibition」は全部で13ページ半ある。

過去には工作舎から「残虐行為展覧会」という題名で、日本語訳も出ていたが現在は絶版で入手が難しい。当分復刊の予定もないだろうし、新訳で出る話もなさそうだ。ほんの少しだけなら、僕が個人的に訳したものをアップしても問題はないと思うので、テキストの1/4程度のボリュームで、6タイトルほどを数回に分けて書いてみたいと思う。今回は最初の項目「Apocalypse」。
目読しているときは、頭の中でなんとなく英文の意味がつながって、分かったような(読めたような)感触になるものだけど、いざ紙(やモニター上)に文字として書こうとすると、どうも言葉の置き換えや文章がつながらず難しい。なるべく自分の普段使う言葉・語彙で書いてはみたけれども、少しぎこちない日本語になるのは、やっぱり仕方ないのかな。訳するときのコツや決まった言い回しなどはもちろんあるだろうし、例えばマザーグースや古典文学、有名なフレーズからの引用やもじりが用いられていたりする箇所などは、やっぱり教養や知識を持っていなかればわからないところで、まだ僕にとっては及ばないところ。まぁ、そういうのはやりながら、勉強もしながら少しづつ身につけていこうと思う。そのうちに、少しはこなれた日本語訳になっているといいんだけれど。自分で訳したものを、一度母(20世紀初頭の英文学に関する本を出している)に見てもらってアドバイスをもらい最後修正した。
またバラードは医学用語や理系の専門用語をけっこう使うので(もう少し読み進んだところに登場してくる)、そのあたりはわからない部分もあり、わりと一般的に通じる単語に置き換えてみたりしている。


■ Chapter one : The Atrocity Exhibition( + 邦訳)
Japanese translated by Tagong-Boy / original text by J.G. Ballard


黙示録:
Apocalypse.

毎年開催されるこの展覧会で人々を不安に落しいれる呼び物といえば(患者たちはこの展覧会には招待されなかった)、世界の大動乱をテーマにした絵に大きな関心がゆく。
まるで長い監禁状態におかれた患者たちが、彼らを看る医師や看護師らの心のなかに、ある地殻大変動を感じているかのようだった。
A disquieting feature of this annual exhibition - to which the patients themselves were not invited - was the marked preoccupation of the paintings with the theme of world cataclysm, as if these long-incarcerated patients had sensed some seismic upheaval within the minds of their doctors and nurses.

キャサリン・オースティンは、改装された屋内競技場の中をぐるっと歩いて回り、これらの奇妙なイメージ群を目にしたのだった。エニウェトク環礁とルナ・パーク(*1)、フロイトとエリザベス・テイラーが混然となった絵は、トラヴィスのオフィスにある脊髄図解を写したスライド・フィルムを思い出させた。
As Catherine Austin walked around the converted gymnasium these bizarre images, with their fusion of Eniwetok and Luna Park, Freud and Elizabeth Taylor, reminded her of the slides of exposed spinal levels in Travis's office.

それらは解けない夢を表した記号のようにエナメルの壁に吊り下がっていた。
彼女が(自ら)進み、意図どおりの役割を演じはじめた悪夢を解くための鍵として。
They hung on the enamelled walls like the codes of insoluble dreams, the keys to a nightmare in which she had begun to play a more willing and calculated role.

ゴールドのキャップをつけたタバコを、片方の鼻孔に突っ込んだDrネイザンが近づいてくると、彼女はすまし顔で白いコートのボタンを留めた。「ああ、オースティン…、ここにある絵をどう思うかね? まるで地獄で繰り広げられる戦争じゃないか」
Primly she buttoned her white coat as Dr Nathan approached, holding his goldtipped cigarette to one nostril. "Ah, Dr Austin... What do you think of them? I see there's War in Hell."


*1 )
Eniwetok : 太平洋上、マーシャル諸島にある環礁。ハワイとフィリピンを結ぶ線上のちょうど中間位に位置する。ここは核実験場としてや、1952年に世界で最初の水爆実験が行われた場所で知られる。第一次世界大戦のはじまった1914年に日本が占領し、1920年に委任統治領となり太平洋戦争では激戦地となった。

Luna park : 南極大陸をのぞき世界各地で展開されている、月旅行をテーマにした遊園地チェーン。20世紀初頭にかけ人気を博したが、現在は閉園しているものも多い。アメリカはNY、コニーアイランドが発祥の地。日本では東京浅草と大阪にもあった。「浅草ルナパーク(1910-1911)」は日本最古の遊園地「花屋敷(浅草五区)」の隣、浅草六区に造られたが火災のため一年も経たずして閉鎖。大阪のルナパーク(1912-1923)は新世界に建設され、初代通天閣とロープウェイでつながっているという不思議な場所だった。今ある通天閣は二代目。たしかにあの一帯は奇妙な雰囲気が漂っている。

memo )
バラードは、エリザベス・テイラーやフロイト、J.F.ケネディなど、執筆していた頃に最も関心の高かっただろう、時代を象徴する人物を小説の中に登場させることが多い。それを踏まえると、この「Apocalypse」に登場する、'Catherine Austin' という名前は、女性作家のキャサリン・マンスフィールド(Katherine Mansfield)とジェーン・オースティン(Jane Austen)を連想させるし(キャサリンは、KとCを置き換えている)、 'Dr Nathan' は多分、ロスチャイルド家の名を世界中に知らしめたネイサン・メイアー・ロスチャイルド( Nathan Mayer Rothschild )からきているように思った。上にある訳ではネイザンと濁らせた表記にした。発音が近い「ネイサン」だとどうも「姉さん」と言葉が重なり悪そうなイメージがわかないので。


The Atrocity Exhibition - Text length (graph)

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Apocalypse (16行) / Notes Towards a Mental Breakdown (17行)
Internal Landscapes (26行) / The Weapons Range (13行)
Dissociation: Who Laughed at Nagasaki? (15行) / Serial Deaths (27行)
Casualties Union (23行) / Pirate Radio (14行) / Marey's Chronograms (19行)
'Was my husband a doctor, or a patient?' (19行) / Zoom Lens (9行)
The Skin Area (21行) / Neoplasm (19行)
The Lost Symmetry of the Blastosphere (34行)
Eurydice in a Used Car Lot (20行) / The Concentration City (17行)
How Garbo Died (17行) / War-Zone D (21行) / The Atrocity Exhibition (8行)
The Danger Area (14行) / The Enormous Face (26行)
The Exploding Madonna (8行)/ Departure (11行) / A Terminal Posture (4行)


Chapter 1: The Atrocity Exhibition Excerpt (RE/SEARCH Publications)
http://www.researchpubs.com/products-page-2/chapter-1-the-atrocity-exhibition-excerpt/
アメリカ、サンフランシスコを拠点にした出版社 'RE/Search Publications' のHPに、(多分)試し読み用として第一章「The Atrocity Exhibition」の冒頭 'Apocalypse' のテキストと、バラード自身による解説が載っている。RE/Searchからも「The Atrocity Exhibition」が出ていて現在も入手可能だ(表紙になっている女の子の絵がわりとグロい。25ドル)。バラードによる各タイトルの解説は 4th Estate Books 版ペーパーバックにも掲載されている。

2016年09月11日

ジュリアとバズーカ

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このところ英和訳づいていて、ただでさえ時間がないのによけいに時間がなくなってきている。

なんで急に(というわけでもないが)英語に関心がいくようになったのか、自分でも不思議なところがあって、少しそれについてを考えてみると、ヨーロッパかアメリカ、英語圏の国に行ってみたくなったというのが少しあるのかなと思いあたった。これまでのアジアの旅で僕にとってわりと重要だったのは、「言葉が通じないこと」だった。「通じない」方が良かったし、通じなくても特に大きな問題はなかった。日本(での旅)に全くといっていいほど興味がないのも、言葉が通じるからという理由が大きい。その安心感は何かスリルに欠けるというか、何ら不自由がなく、正直つまらない。日常の、あるいは普段の生活の延長上にあるものは、僕にとっては "旅" と呼べるものではなく、ただの "移動" になってしまう。日本でも方言やなまりは地域によっては多少あるだろうが、外国語のように全く意思疎通ができないわけでもなく、日本語の言語体系の中での会話だからあまり隔たりを感じはしないだろうとは思う。互いに話す言葉の異なる人同士が、ある瞬間にコミュニケートできたときって、けっこう喜びが大きく、やっぱりそこは僕が好む旅の醍醐味の一つだったりする。
だけども、もし、ヨーロッパへ行ったときに何がしたいんだろうと考えたとき、アジアでのエキサイティングなこととは違う何か、歴史だったり互いの意見をぶつけることだったり、非感覚的な面でのやりとりが出来ないときっとフラストレーションが溜まるだろうな、と思ったりする。これまでのように、その場のノリや感覚に頼り、偶然に身をまかせるのも悪くはないだろうし、それはそれでまた楽しめたりもするが、そうしたものは一度置き場所を別にし、ちょっと自分の中で変化をつけてみたい気分になっている。母語から一度トランスレートした言葉を使い自分の行動の行方をコントロールできたらきっと楽しいだろうと思う。自分の意見をほぼ満足に英語で言えるようになって、相手の言っていることも十分に理解できるようになるには、まだ相当かかるかもしれないけれど、目標はやっぱりそこになるのかな。

さて、アンナ・カヴァンの短篇集「ジュリアとバズーカ」。その最初の一篇「The Old Address」をやっと読み終えた。これは6ページほどの短い話だが、日本語の中篇小説一冊を読むのと同じくらい時間がかかった。でも、知らない単語をひとつひとつ調べ、一行一行何度も繰り返しながら訳し読んだので、けっこう充実度があって、これまでにない読後感が味わえたりと、いやなんか嬉しい。一日数行づつしか進まない非常にトロトロとした読み方だったが、アンナ・カヴァンの文章に十分すぎるほど浸れた。当然なんだけれども、英語にも文体っていうのがあるんだ、と身をもって知れたのは新鮮だった。先に読み始めたJ.G.バラードとは全然違うんで(バラードの文章はかっちりしている)、最初は、何だこの書き方は! なんて思ったりもしたが、進んでいくうちに慣れてきて、カヴァンの文章はバラードより好みかもしれない。平行してもう一冊読んでいるのはドン・デリーロの日本未発売・未邦訳の本、これはまた次回に。


Anna Kavan (Open Library)
https://openlibrary.org/authors/OL200810A/Anna_Kavan

2016年08月30日

爆発切符

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ウィリアム・バロウズ「The Ticket that Exploded」。カットアップ3部作のうちの一作。のこり2作が「Nova Express」と有名な「Soft Machine」。バロウズの小説は日本語訳でもほとんど意味不明なので、どうせなら原文で読んだほうがいいんじゃないかと思い、一冊を選んでみた。代表作の「裸のランチ」は邦訳があるので、違ったものを読みたいと思った。「The Ticket that Exploded」はサンリオSF文庫から「爆発した切符」というタイトルで出ているもののすでに絶版、人気のある作家だけにプレミアも強気でさすがに手が出ない。ペンギンのペーパーバックは表紙もかっこよく、いざ開いてみると注釈も充実していて良かった。スラングや言い回しなんかでわからない箇所もやっぱり多いが、カットアップといわれているだけに、短く印象的かつ刺激的なフレーズが次々とあって、読みやすいところから入っていくのもいいかなと。意外と英語の方がすんなりと入ってくるところはある。暑さも弱まったし読みどきの季節来てるかな。


―― Do you love me? ―― Vapor trails writing all the things you are ――


"The Ticket that Exploded" by William S. Burroughs (p52)



2016年07月26日

J.G.バラード短篇全集: Vol.1 と Vol.2

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"J. G. Ballard - The Complete Short Stories" Vol.1 & 2
二冊並ぶとカッコイイ!
Vol.1 は1956年から1964年までの作品、39篇を収録。
Vol.2 は1964年から1992年までの作品、57篇を収録。うち1980年以降のものが17篇。
1と2を合わせると全部で96編収録。まさにComplete、すごいボリュームだ。
バラードの短篇で最高傑作と名高い "The Terminal Beach(1964)" はVol.2に収録。

収録タイトルにさほど惹かれるものがなかったバラードの "The Complete Short Stories" Vol. 2 だったけれど、本が届きいざ広げてみると1970年前後のものがわりと多く、なかなか良さそうだった。ただ、文体が初めのころより難しくなっている感があったので、読めるかなぁ。バラードはスラングや特定の言い回しがあまりない(と思う)ので、僕でもわりと理解しやすい。
今回は注文から所要8日で到着。もちろんロイヤル・メール。ロイヤル・メールは1516年にはじまったそうで、今年でちょうど創業から500年目になる。相当な歴史事業だ。そして今年はシェイクスピア没後400年でもあったり、また BREXITがあったりと -ミレニアム・クラスで- 英国づくものが多いような。



創元社の邦訳短編全集と、英国 4th Estate の Complete Short Stories

今夏、東京創元社から刊行される「J・G・バラード短編全集」は全5巻、97タイトルを執筆順に収録していくとのアナウンスだった。この全集モノは、ハーパーコリンズのインプリント、4th Estate Books から出ている "J. G. Ballard - The Complete Short Stories" の Vo.1 と Vol.2 の2冊を、ほぼそのまま5巻に分けたものになると思うが、"The Complete Short Stories" の方は、Vo.1 に39タイトル、 Vo.2は57タイトルが収録されていて、合わせると96タイトルしかなく、日本版はなぜか1タイトル多い。これが何なのかは、今のところ不明だ(そして気になる)。

そうなると、「The Atrocity Exhibition」に収録の作品は大部分が収録されず、またも邦訳が未のままの状態になりそうだ。"The Complete Short Stories" Vol.2 の方に、「The Atrocity Exhibition」収録の2タイトルが入っているので、「The Atrocity Exhibition」の全15タイトルの内、13タイトルがもれることになる。もしかすると単独で出るのか?

タイトルだけではわからないのが一篇あったので、少しメモ。
Vol.2 に "Notes Towards a Mental Breakdown (1976)" というタイトルが収録されている。これは「The Atrocity Exhibition」の第五章と同じタイトルになるが、執筆の年代も後だし内容も(パラっとみたところ)異なっている。バラードはこのタイトル(テーマ?)が気に入っているようで、全部で3バージョンある。
一つは、短篇集「The Atrocity Exhibition」の第一章 "The Atrocity Exhibition" の小さなパートで書かれた極短いもの(わずか17行)。
二つ目は、同じく短篇集「The Atrocity Exhibition」の第五章。
三つ目は、「 The Complete Short Stories Vol.2」に収録のもの。こっちなはまだ読んでないので、違いはいずれ比較したい。
英文を読んで気付いたことが少しあった。バラードはわりと 'Toward' という単語を良く使う。他にも修飾・形容するときに使う言葉や、ちょっとした小道具の名前などに特徴があって、そのあたりの細かな部分が見えてくると、邦訳を読むときとはまた違う面白さが味わえ新鮮。

仕様の違い
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この画像ではわかりにくいと思うが、Vol.1とVol.2 では紙質が違っていた。Vol.1は、海外のペーパーバックによくあるごわごわとしたあの粗い紙、いわゆるパルプ紙(ねずみ色の)だったのに、Vol.2 ではずいぶんクオリティがよくなって滑らか、かつ厚みも薄くややクリーム色がかったものに変わっていた。フォントがシャープに見える。慣れた日本の文庫本に少し近い紙質。もしかすると、Vol.1も最新版のものは同じ仕様に切り替わっているかも。

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Vol.1は、780ページ、背の厚み約5cm。重さは約 550g。
Vol.2は、780ページ、背の厚み約3.5cm。重さは約 570gと、紙質がよくなった分、Vol.1と同じページ数なのにスリムになっている。並べて比較するとその差がよくわかる。





2016年07月12日

デリーロのバーダー・マインホフ


Baader Meinhof Komplex (2008) - trailer
ドイツ赤軍(バーダー・マインホフ・グルッペ)の成り立ちから終りまでを描いたドキュメンタリー映画。
日本でも公開してたので字幕付のもあるけれど、海外版のがシンプルでカッコイイ。ISILの残虐な映像を見てしまった今の時代からすると、衝撃、という言葉はあてはまらないかもしれないが、時代背景を含めると戦慄するものはある。体制側に向かうテロは英雄化され、長く記憶に留められる。邦題:「バーダー・マインホフ・理想の果てに」


きのうはバラードの「ハイ・ライズ」の文庫発売日で、どうもそわそわ落ち着かず。結局本屋さん行って買ってしまった。やっぱり日本語訳だと読みやすい。

このところ気になる、ドン・デリーロ。「ホワイト・ノイズ」ってのが代表作でいいらしいけれども、日本ではあまり人気ない作家みたいで、読んでる人もそう多くないために、情報少なくよけいに興味わく。海外の人気ある作家は、ピンチョンやミシェル・ウルベックなど、物語のなかに自分たちの生きている社会を上手に描く人が多く、話のスケール感もでかいんだけれど、なぜか、日本は私日記というか私小説というか、そういう延長上にある身の周りのこじんまりとした世界のものが多くて、いいのを探すのにけっこう苦労する。

で、デリーロの短篇集が一冊出ていてそのなかに「バーダー・マインホフ」というのがあり興味わく(「天使エスメラルダ: 9つの物語」に収録。新潮社)。邦訳のものを読むと、リヒターの描いた絵「October 18, 1977」の展覧会でのひとコマを描いた短い話。リヒターの絵画作品は、収監され謎の死を遂げたドイツ赤軍のメンバーを題材にし、疑問とメッセージを含めた連作もの。デリーロの書いた短篇「バーダー・マインホフ」には、画家リヒターの名前は出てこないが、絵画批評をストーリー(会話)のなかに埋め込んでいたりし面白い構成だった。ちなみにこの短篇、2002年4月に「ザ・ニュー・ヨーカー」で発表されたもので、バックナンバーがネットにあり、そこで原文が読める(下記リンク先)。911が起こった半年後に書かれたものだから、意味ありげだ。


"Baader–Meinhof" By Don DeLillo (The New Yorker)
http://www.newyorker.com/magazine/2002/04/01/baader-meinhof

2016年07月05日

J.G.バラード短篇全集 -Vol.1- が届いた!の巻

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バラードの "The Complete Short Stories Vol.1"。
とにかくぶ厚い! この短篇集、780ページあって、背の厚み約5cm。重さは約 550g。
これ、ロンプラのインド並みだ。あれは片手で掴めないぐらいだったけど。

「イギリスから本が届いた、の巻」パート2。

前から少し気になっていたJ.G.バラードの短編小説「The Sound-Sweep(音響清掃)」を、邦訳本で買うかそれとも「The Atrocity Exhibition」と同じく、英語の勉強のために英語版で買うかを悩んでいたけれど、バラードの英文は意外と分りやすく、「The Atrocity Exhibition」が少し読み進めれたのをいいことに、やっぱり英語版で買うことにした。まだ英語で長篇を読む力はないけれど、短篇ならなんとかなりそうだ(英語でも日本語と同じように作家ごとに文体がある感じで、イアン・マキューアンの「Atonement(贖罪)」もトライしたものの、クセが強くて最初の数ページで挫折した)。現在4th Estateから出ているStanley Donwood(スタンリー・ドンウッド)表紙デザインのシリーズもカッコいいので、ちょっと揃えたくなったという気持ちも多少ある。送料込みで2,000円弱。短篇39作品と巻末にバラードのインタビューを収録。

バラードの短篇は「The Complete Short Stories Vol.1」と 「Vol.2」、そして「The Atrocity Exhibition」の3冊でほぼ揃うはず。Vol.1は、創元SF文庫「時の声」の全7タイトルと、名作といわれつつも現在は絶版(&邦訳はプレミア本)になっている「ヴァーミリオン・ザンズ」収録のいくつかが入っていて、けっこう充実の一冊。というよりもけっこう初期のいい作品が収録されている。出版社も、Vol.1とVol.2があるんだから、まんべんなく作品を散らせばいいのに、Vol.1の方に偏りがある感じ。だから、Vol.2が出がらしみたいになっている(といってもバラード作品だから、多分、後期作品も内容はいいんだろうけど、やっぱり皆ピーク時のものを読みたいんだろうな)。

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届いたばかりの封筒から本を取り出すと、色鮮やかな表紙にまず感激する(今回もRoyal Mailだ)。マット・コーティングされているのもあって、特に外縁の白地に一切の艶がなく、インクジェット用紙に似た人工的な白色。もしかして本当にインクジェット出力の紙を表紙に? なんて最初は思ったくらい。また、写真画像を良く見るとマゼンタ版とイエロー版に蛍光色のインクを使っている様子で発色がいい。これだけ本に厚みがあれば重く感じるはずだが、このカラフルなデザインのお陰でさほど重量感を感じない。



J. G. バラード短篇集:
("The Complete Short Stories Vol.1" と重複するものを下線表記)

「時の声」収録作品(吉田誠一訳・創元SF文庫)

(1960)「時の声(The Voices of Time)
(1960)「音響清掃(The Sound-Sweep)
(1961)「重荷を負いすぎた男(The Overloaded Man)
(1960)「恐怖地帯(Zone of Torror)
(1957)「マンホール69(Manhole 69)
(1959)「待ち受ける場所(The Waiting Grounds)
(1961)「深淵(Deep End)


「時間都市」収録作品(宇野利泰訳・創元SF文庫)

(1961)「至福一兆(Billennium)
(1962)「狂気の人たち(The Insane Ones)
(1961)「アトリエ五号、星地区(Studio 5, The Stars)
(1961)「静かな暗殺者(The Gentle Assassin)
(1957)「大建設(Build-Up)」*SFマガジン"New Worlds"発表当時のタイトル。
のちに "The Concentration City" とタイトルを変更。

(1959)「最後の秒読み(Now: Zero)
(1957)「モビル(Mobile)」*のちに "Venus Smiles" と改題し「ヴァーミリオン・サンズ」に収録。
(1960)「時間都市(Chronopolis)
(1956)「プリマ・ベラドンナ(Prima Belladonna)
(1962)「時間の庭(The Garden of Time)

The Concentration City - wiki
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Concentration_City

Venus Smiles - wiki
https://en.wikipedia.org/wiki/Venus_Smiles


「ヴァーミリオン・ザンズ」収録作品

(1956) "Prima Belladonna"
(1962) "The Thousand Dreams of Stellavista"
(1966) "Cry Hope, Cry Fury!"
(1957) "Venus Smiles"
(1961) "Studio 5, The Stars"
(1967) "The Cloud-Sculptors of Coral D"
(1970) "Say Goodbye to the Wind"
(1962) "The Screen Game"
(1962) "The Singing Statues"

Vermilion Sands - wiki
https://en.wikipedia.org/wiki/Vermilion_Sands



2016年06月19日

イギリスから本が届いた、の巻(1)

Paperback-Ballard-Nabokov-2016.jpg
J. G. Ballard の "The Atrocity Exhibition" とナボコフの "The Luzhin Defense"。ナボコフの本はあとで気付いたんだけど英訳版だった(著者とのコラボレートだと記載。ナボコフがアメリカに亡命したのはこの小説を書いたあとだったから原文はロシア語か)。チェスが主題の物語。河出書房から邦訳も出ているので、合わせて読んでみよっと。バラードのこの短篇集は、SF小説にありがちな造語や科学用語がなかったし、注釈付だったのでうまく読みきれるかも。

The exhibition "Dream Cargo" by Stanley Donwood
(27 March - 25 April, 2015)
http://www.lawrencealkingallery.com/events/dream-cargo
表紙カバーのデザインがやけにカッコいいなと、クレジットを見るとスタンリー・ドンウッドの名。レディオヘッドのジャケット( "OK Computer" や "Hail to the Thief" など)でよく知られたアーティストだった。4th Estate(英国の出版社)からリイシュー版として出ているバラードの小説、全21タイトルのカバーを担当し、2015年に表紙アートワークの展覧会も開催していた。


下記文は、アマゾンのマーケット・プレイスに出店しているイギリスの書店からペーパーバック洋書を買った、そしてものすごく手軽に出来たという話。すでに利用している人には何の新鮮味もないけれど、英語でのやりとりも必要なく、日本のネットショップで購入するのとほとんど変わらずに品物が届き、ちょっとした驚きがあった。



J. G. バラードの小説「ハイライズ」が映画化になり、今夏に日本でも公開。その予告編を見ているうちに、急にバラードの短篇集「残虐行為展覧会 (The Atrocity Exhibition, 1970)」を読みたくなってしまった。この作品はJoy Divisionの「Atrocity Exhibition (2nd Album "Closer" 1曲目)」という曲のインスピレーションの源になっているだけに、気になっていた小説。ヴォーカリストで歌詞を書いているイアン・カーティスはカフカをはじめ空想的・不条理的な小説からいくつか曲の着想を得てたりして、ルーツをさかのぼると彼らの音楽への印象も変わってくる。

Controlled chaos (by Jon Savage, May 2008)
https://www.theguardian.com/books/2008/may/10/popandrock.joydivision

「残虐行為展覧会」の邦訳版はとっくの昔に絶版になっていて、今はわりと入手困難で中古市場ではややプレミア付きになっている(工作舎から1980年に出ていて、初版のもと改訂版の2種類がある)。仮に見つかったとしても、コンディションはあまり期待できないし、また当時の訳だから、いま読むにはやや時代を感じてしまうかもしれない。このタイトルに関しては、復刊の噂も、新訳の話もさっぱり聞かない。なら、いっそのこと洋書を買って自分で訳せばいいかと、頭のスイッチが切り替わるのは意外と早かった。


amazon / Abebooks / Book Depository / Kinokuniya Web
J. G. Ballard の "The Atrocity Exhibition"。こういうふうに、なにか目的の定まったもので探し物をする場合、ネットはとても便利だ。調べものであれ、ショッピングであれ。ネットがまだ普及してなかった頃やアマゾンがなかった時代の洋書は本当に高かった。おまけに専門の店じゃないと品揃えがなかったり、入荷数が極端に少なかったりで、見つけたら値段を飲み込んで買う、という選択しかなかった。買えなかったものは、年に幾度か開催される洋書フェアなんかを待って会場に詰めかけたものだ。集まった客は皆けっこう目を光らせ、目当ての本を手にしてゆくから、気の抜けない緊張した雰囲気が独特だった。洋書は仕入れや在庫リスクが価格に上乗せされるため、たしかに高くなるのは当然だったが、今はほんと現地ローカルの値段に送料相当分(+為替や決済手数料等)を上乗せするだけで買えるようになっている。洋書を取り扱う店もそれにつられてか価格を抑え気味になっていて、以前のようなビックリする値段でもなくなってきている感はある(流通量の少ない専門書などは別だけど)。個人輸入をしてる人も沢山いるし、海外だ、国内だと言って買い物するような意識は少なくなってきているんだろうな。かつてバイヤーの特権だった垣根は、どんどん低くなってきている。

まず最初は一番身近な amazon.jp で検索する。(日本の倉庫では)在庫切れ。まぁ、特に話題になっている本でもないので、これは仕方がない。流れで amazon.com と amazon.co.uk を見ると在庫、他タイトルともに数はあるが、海外向けの送料はやや高めになる。現在手に入る出版社のものだったりの表紙画像をいくつか覚えておく。
次に数多くの海外中古書店を仲介しサイト上で束ねている Abebooks.com で探してみる。さすが、ここには中古本から新品までけっこう沢山ある。別に初版本やヴィンテージのものを欲しいわけじゃないから、最新刊、あるいは中古のぺーパーバック本でいい。すると、6ドルから12ドルくらいの価格帯でだいたい横並び。安いところは送料が高かったり、あるいは海外発送してなかったりと店によりさまざま。書籍代とアジア圏への送料を合わせると、だいたい18ドル前後というのが分かってきた。
さてもう一つ、最近知ったサイトで「Book Depository(ブック・デポジトリー)」というのがあり、そこでも調べてみる。この Book Depository は、世界中どこでも送料が同じ、というか送料が含まれた値段が(各国のローカル価格通貨で)表示され出てくるので、いちいち細かな計算をしなくてもいい。いつのまにこんな便利なサイトが出来ていたんだ、と関心する。で、ここでの値段は一冊、1,500円ほどだった。
海外からは発送にかかる日数がどうしても長くなってしまうことや、カード決済にまだ不安なものがあるため、日本でどこかが在庫を持っていて、そこから買うのがベターなんだけど、なんて風に最初の勢いはやや失せ、冷静さの波がひたひたと打ちよせ、二の足を踏みはじめる。日本の大手書店の Web Store なんかで買えるのが一番いい、と気持ちはややディフェンシヴに。一端、海外書店で探すのを止め、ものは試し「紀伊國屋書店」のオンラインショップで検索してみると、おっとびっくり! 一件ヒットした。値段も1,500円弱と悪くない。ただ、1,500円未満の場合は送料が300円かかるので、実質1,800円弱。まぁ、海外オンライン・ショップで買うのも日本のオンライン・ショップで買うのも、そう相場は変わらないということか。なら日本の書店が安心かな。と、ほぼここで決まりかけた。そこでふと、 amazon.jp で見たときに、画面下の方に表示されていたマーケット・プレイスでの価格がけっこう安かったのを思い出す。改め、また「The Atrocity Exhibition」のページに戻ってみる。すると、あれれ? 海外の書店らしき名前が数店舗、ほぼ同じような価格で出していた。そして送料がどの店も一律257円の表示。詳しくみると、本は海外からの発送で、配送に10日〜15日かかるとの記載がある。つまり、日本国内から届くわけじゃない、なのに送料が、257円? ってどういうことだろう。なんて疑問はありつつも、このアマゾンにある店が一番安く、試しに買ってみようとようやく決めた。もし、現地にいたらペーパーバックの古本は2、3ドルで買えるのだから、と思うとやっぱり価格は気になってしまう。

さて、アマゾンでの買い物はずいぶんと久しぶりだ。以前は洋書の写真集やロンリー・プラネットなどの旅行ガイドブックを買ったりはしていたけれども、国内在庫にあるものだったから、決済や配送、為替手数料などの心配は一切気にしなくても良かった。しばらくの間、特に利用することもなかったせいで、以前のアカウントは何だったかすっかりと忘れていて、あわてて登録し直す。海外の店で何かを買うというのも、いつぶりになるだろうか。たしか、まだCDが全盛だった頃に、日本未発売のCDなどを慣れない英文メールでやりとりしながら買ったりしていたくらいだったし、今では標準的になっているカート・システムもよっぽど大きな店でしかなかった。当時、何をどうして注文をしていたのかなんていうのは、もうすっかりさっぱりと忘れている。カード決済や、購入確認のファックスなんかを送ったり送られたり、わりと手間がかかっていたような記憶だけはある。音楽に関しては、もうデータのダウンロードが主流なので、送料だとかの流通のコストを考えなくてもいいが、本の場合はまだ電子書籍には興味が持てないし、端末やフォーマットの選び方がよくわからない。もしアマゾン経由で、海外の書店から本が届くのなら、これ以上手軽なものはないんだよな。と、Kindle でのタイトルが結構増えてきているのも目の当たりにする。今回はペーパーバック。コンビニ決済の選べる UK Books and Music で注文することにした。J. G. バラードとナボコフを一冊づつ。


注文から本が届くまで(UK Books and Music)

注文当日&支払い
購入ボタンを押したあと、おおよそ30分後に注文確定のメールが届く。
そのメールに支払い方法などの詳細が書かれている。
今回は「コンビニ決済」を選択したので、各コンビニごとの支払い手順・支払い番号が合わせて表記されていた。それをメモして、近くのコンビニへ行き支払いを済ませる。1時間ほど経って、「支払い確認のメール」が届いていた。

発送まで
購入から二日後の午前。(アマゾン.jpから)注文を承ったとの連絡がきて、発送の手続きに入るとのこと。二日空いたのは、週末を挟んでいたせいで営業日だと翌日くらいには確認できていたと思う。この日の夜、発送したとのメールが届いてた。あとは到着を待つばかり。アマゾンのアカウントで配送状況を見る。表示が「輸送中」に変わっている。まだかな、まだかな。

本の到着
発送の連絡があった一週間後、何気なくポストをのぞくと普段とは違う種の郵便物が入っている。もしや! と取り出してみるとやっぱり! 本が届いていた! wow ロイヤル・メールのスタンプが何か嬉しい。エアパッキンの防水加工封筒はとても軽量。イギリスのにおいがした(ウソ)。でもペーパーバック本は外国のニオイだ。
表示される配達日数は発送から3週間強とずいぶん幅がある。国際普通郵便なので追跡番号などはなく、いまどのあたりなのかは分からない。送料が安い分保険などもない。おそらく船便で来るんだろうなと思っていたら、航空便を使っていた為、到着が予想していたよりも早かった。正味、注文してから10日弱でイギリスから本が届く。日本円から英ポンドへの為替手数料や他決済システムの諸経費がどれくらいなのかは、購入者にはまったく分からないので、実際のところ本の価格はいくらなんだろう? と少し気になるところもあるが、ここはインターネットの恩恵に甘んじていいか。

*)注文確定後に案内がひとつあった。もし届いた本に何か不備があった場合、キャンセル・返品できるとの事。東京都港区に日本事務所があり、そこに送れば(送料を除いた)購入代金の返金をしてくれる。こういったサポートを事前に分かっていれば、けっこう安心感が違うんで注文もしやすくなるんじゃないかな。

DeliveryStatus-June-2016.jpg
発送状況画面

Book-FromUkBooksMsc-June-2016.jpg
Uk Books and Music から届いた本。アマゾンのアカウントに入力した宛先が日本語だけだったので、どうなるんだろう? と思っていたら、ちゃんと日本語表記で印刷されていた。



JG.Ballard-Atrocity Exhibition-1stEdition-1970.jpg
Abe Booksのサイトで、初版本・ハードカバーがどれくらいなのかをサーチする。すると、英国版ものには430ドルから730ドルほどの値段が付いていた。アメリカでも出版されていて、ダブルデイ出版社(Doubleday Publisher)の初版本には14,900ドル(160万円弱)という、まったく現実的でないような値が付けられている。売る気なしか、意外とレアなのか。
http://tagong-boy.tumblr.com/post/145861813716/the-atrocity-exhibition-j-g-ballard-the




"The Atrocity Exhibition" (Ballardian, Oct. 2006)
http://www.ballardian.com/biblio-the-atrocity-exhibition