2017年05月04日

きっかけは社会の先生のひと言だった



『ストップ・メイキング・センス』ほど、不気味な始まりかたをする映画はない。


この作品に対する賞賛の多くは、もちろんトーキング・ヘッズに向けられたものである。彼らは当時、アルバム「スピーキング・イン・タンズ」と、ヒットシングルである「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」の成功が高く評価されていた。

しかし、その映像の素晴らしさの大部分はデミに由来するものだ。彼がバーンとつくりあげたライヴ映像は、それまでのものとはまったく違っていた。そして、それ以降のものとも。



追悼、ジョナサン・デミ──ライヴ映画『ストップ・メイキング・センス』の“魔術”が残したもの
http://wired.jp/2017/05/02/jonathan-demme-stop-making-sense/


先月末、映画監督のジョナサン・デミが亡くなった。僕は数日経ってこのニュースを知る。それも、ネットで調べものをしていたときにヒットした、全く知らない人のBLOG記事をいくつか見ていたときだった。ネット時代の偶然だなぁとか思いながら、デミが監督したライヴ・ドキュメンタリー映画「STOP MAKING SENCE」を初めて観たときのことを思い出した。
映画はリアルタイムで見たものではなかった。学校でたまたま社会の先生と音楽の話をしていたときに、話の流れで先生が「いい映画があるから今度ビデオを貸してあげるよ」といって渡されたのがこのトーキング・ヘッズの「STOP MAKING SENCE」だった。数日後だったか、一週間後だったかは忘れたけれど、先生は意外と早くにビデオを持ってきてくれた。そして、この映像作品の素晴らしさを熱っぽく語りながら、でも、このビデオは永久保存版やから大事に扱ってくれよと、いかに自分がこのマテリアルを大切にしているかということも最後に忘れなかった。このひと言は先生の思い入れの強さを表しているようで、何か僕の中でひっかかるものがあって、ああ相当ヘッズが好きなんだろうな、と思った。当時僕はトーキング・ヘッズにあまり興味がなく、せっかく貸してくれたのはいいんだけど、どうも積極的に観よう! なんて気にはならず、でも借りた以上は返すときに感想を言わなきゃいけないから、ちゃんと観ないといけないよなぁ、困った。なんて少し気の重さを感じつつ家に持ち帰る。
そんなわけで、夕食後、全く期待もせずにビデオを再生する。僕は、自分の聴きたいレコードがあったので、まぁさらっと観て終わらせよう、だいたいライブの映像なんて、ステージにミュージシャンが写って演奏している姿を撮っているだけだから、どれも同じだろうし。そういう先入観があった。半信半疑、気持ちの中では四信六疑ぐらいだった。だから、いざこの映画が静かに始まると、映像の持つ緊張感というか(それがデミ作品の特徴なのだと数年後に観た「羊たちの沈黙」で分かった)独特のライブ映像世界に、何か今までに無い異質なものを感じ、一気に引き込まれていった。先生が熱く語っていたとおり、いい意味で予想を覆された。
はじめはヴォーカルのデヴィッド・バーンだけがステージに登場し、ラジカセのリズムに合わせて初期の代表曲「サイコ・キラー」を歌う。それが終わると、ベースのティナ・ウェイマスが現れ、今度は二人でアコースティックなバラードをしっとりと歌う。僕はヘッズの曲をほとんど知らなかったので、このきれいなメロディにすっかり聴きいってしまった。そして、次はドラムスのクリス・フランツがやってきてハイテンポでパワフルなビートの「Thank You for Sending Me an Angel」の演奏。これが終わると、ギタリストのジェリー・ハリスンが入りクールなファンク曲「Found a Job」を演奏。ここでメンバーの4人が揃った。こうして次に、コーラス、パーカッション、キーボード等々、バンドの人数がどんどん膨れていき、それに従って演奏も熱く、曲が続く毎にステージが盛り上がってゆく。もちろん観ているほうも、それに合わせて高揚し、あっというまに時間が過ぎてしまう。ほんと一瞬も見逃せない。映像編集の上手さが際立っているのと、斬新な構成に見事にやられてしまい、全部を観終わったあと、もう僕はすっかりとヘッズ・ファンになっていた。



"Life During Wartime" Talking Heads LIVE
7曲目の「ライフ・デュアリング・ウォータイム」。この映画で最初に訪れる山場の曲。みんなが一斉にランニングする姿は、単独で見るとへんてこりんだけど、最初から通してみているとめちゃくちゃカッコイイ。
この曲の歌詞はすごくいいので、年内には訳もしてみたい。


posted by J at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | fav. - sound | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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