2017年06月17日

歌詞和訳:"The Belldog" by Eno Moebius Roedelius


eno moebius roedelius - belldog - LP: after the heat (1978)
(* 歌詞和訳は最後に載せてます)


憧れのレコジャケ
暑くなってくると、野太いヴォーカルや歪んだギターをかき鳴らすような暑苦しい音よりも、透明感ある無機的な電子音の曲が聴きたくなってくる。そういうときに、ブライアン・イーノ周辺のアンビエント関連の音楽はとてもいい。どれもいい。イーノがクラスターの主要メンバー二人、メビウス(Moebius)とローデリウス(Roedelius)と組んで製作したアルバム「After the heat」は、レコジャケのイメージそのままの耳に涼なサウンドで、窓越しに見える、太陽が照りつけヒートアイランド化した都市の景観をまるで蜃気楼の幻影かのように変えてくれる。これは、ほんと夏になると良く聴いていた。だけども、僕の持っていたのはCDでレコードではなかった。そのおかげで、音により透明感があってその点では良かったんだけど、やっぱりジャケの大きなレコードで持っていたかったなぁ、というのがずっとあった。イーノとクラスター周辺のコラボレート作品を何枚かリリースしていたドイツ「SKYレーベル」のアナログ盤は人気が高かった為、なかなか中古市場に出回ってこず、店頭に並んだ瞬間にはもう誰かが買いさらっていくか、あるいはコンディションの良くないものがしばらく壁を飾っているかどちらかだった。値段はさほど高くもなく、それがすぐに店頭から消える原因の一つだったりした。コンディションの良いもので、4,800円前後が平均的な価格だった(ジャーマン・プログレものでは一桁ゼロの多い価格のものが珍しくないので、5,000円台付近のレコードは安い方だ、という錯覚に陥ってしまう)。僕がレコード・コレクションに夢中になっていた時期は、ほぼ日参といってもいいくらい、けっこうレコード屋に通ってはいたんだけれども、「After the heat」含むイーノ&クラスターものと巡りあうことは数回あった位で、どうしても手に入れることが出来ずにいた。なので、いつ聴けるかわからないでいるよりは、とりあえずはCDでもいいや、みたいになってSKYレーベルのものはCDで揃えることにした。そして、知らなかった音が聴けてしまうと、こだわりだったサイズの大きなレコジャケへの意気込みなんてものは次第に消えてゆく。それでも、心残りなレコードの一つとして、これらのジャケ画像をみる度に当時憧れた気持ちのようなものがわずかにだが、未だ残っているのは何でだろう。

EnoCluster-MoebiusRoedelius.jpg
Eno Moebius Roedelius "After The Heat" と "Cluster & Eno" のジャケット。
フォーマット優先のいかにもドイツ的なデザイン。*画像はDiscog.comより


曲名「The Belldog」の由来
この曲の歌詞訳をしようと思って、まず真っ先にクエスチョンだったのが曲名の「ベルドッグ」だった。造語っぽい感じもしたし、単にそのまま鈴を付けた犬なのか? とかも考えるが、英語での意味を知ろうと調べてみると、やはり造語だった。そして、その由来についての引用がネットに出回っていたので訳してみた。ただ、ひとつ気になるのが、この引用箇所の出所がどこからなのかがさっぱりと分からない点(にも関わらず皆、この曲の歌詞と一緒に併記していたり。このテキストが広く出回っている割に、誰も「これは違うぞ」といった指摘や書き込みがないというのも、ある意味信憑性があるのかも)。一応引用先が「Brian Eno in More Dark than Shark, quoted by Craig Clark」からだとは記してあるが、「More Dark than Shark」には、イーノとラッセル・ミルズ共著による本と、イーノのインタビュー等のアーカイヴをアップしているサイトの二つがあって、おそらくこの内のどちらかだろうとは思う。本は手元にないし、サイトを見てもテキスト量が膨大すぎて確認できなかった。ついでをいうと引用者のCraig Clarkって誰? というのもあるが、ここは一応ネット上にある情報を信じて僕も引用してみた。以下どうぞ。


「More Dark than Sharkでのブライアン・イーノ」クレイグ・クラークによる引用:
「僕は凱旋門風の記念碑に向かって、ワシントン・スクエア公園を歩いていたんだ。門の下には少数のグループがいて、満月が水平線上の低い位置に浮かび、門のてっぺんから見えた。さらに寄って近づくと、彼らの注視していたものが分かった。年齢不詳で薄汚れた格好の男が車の上に乗って、音程のズレた縦型ピアノを弾いてた。彼の演奏は上品なナイト・クラブにいるピアニストのそれだった。だけど、彼の使っていたコードは全く奇妙だった。その低い不協和音の繰り返しに負けないよう、彼は震え声で、何度も何度も歌っていたんだ。「ベルドッグよ、お前はどこにいるんだい?」と。彼の歌うベルドッグというものが、何なのかはさっぱり分からなかった。僕にすりゃ未知の神話に登場する出所不明な空想上のキャラクターだった(し、今もそうだ)。だからベルドッグについて僕が抱いた漠然とした感覚は、彼が不明慮な使者だということ。それが何であれ、歌の中ではまだ(ベルドッグが)現れてないか、もういなくなってしまったか…」


'I was walking through Washington Square Park, towards the "Arc de Triomphe" style monument there. There was a little group of people under the arch, and the full moon stood low on the horizon, visible through the top of the arch. As I got closer I saw what it was that had attracted their attention. A very grubby man of indeterminate age was playing an out-of-tune upright piano on wheels: his touch was that of a plummy night club pianist, but the chords he used were completely strange. Over this sequence of soft discords he sang, again and again, in a trembling voice: "The belldog, where are you?" I have no idea what he meant by the belldog. For me it was (and is) an unidentified mythical character from some unfamiliar mythology... So the vague feeling I have about the belldog is that he is a herald; of what is not clear. Whatever it is, in the song he has either not yet appeared or has gone away...'

from Brian Eno in More Dark than Shark, quoted by Craig Clark


enoweb-lyrics "THE BELLDOG"(上の英文の引用先)
http://music.hyperreal.org/artists/brian_eno/ATHlyrics.html
予備:http://archive.is/bm80d


EnoMills-MoreDarkThanShark.jpg
Eno & Mills "More Dark than Shark"(画像はAmazon.jp より)

MORE DARK THAN SHARK http://www.moredarkthanshark.org/
ブライアン・イーノのファンサイト。アーカイヴがすごく充実していて、特に過去の(雑誌)インタビューが書き起こしされていたりと、後追いファンとしては嬉しい。サイト内:brian eno >> interviews 。



イーノ・メビウス・ローデリウス「ベルドッグ」歌詞和訳

Brian Eno "The Belldog" - Lyrics ( songmeanings.com )
http://songmeanings.com/songs/view/3530822107858973053/
メロディに合わせた詞の改行・分断はせず、なるべく意味の通る一つの文になるようにした。
またコーラス・パートやサビのリフレイン等で歌詞が重複する箇所は省いてます。



Most of the day, we were at the machinery in the dark sheds that the seasons ignored. I held the levers that guided the signals to the radio.
But the words I received, random code, broken fragments from before.

我々は一日の大半を、季節感のない暗い小屋に篭り、機器の操作をしていた。
私は無線器に信号を誘導するレバーをつかんだ。
しかし、受信した言葉はデタラメなコードで、使いものにならない断片的なものだった。




Out in the trees, my reason deserting me.
All the dark stars cluster over the bay, then in a certain moment,
I lose control and at last I am part of the machinery. Where are you?
And the light disappears as the world makes its circle through the sky.

森の中で、私は思考力を失った。暗黒の星団が山合いの上空で結集し、ある瞬間、私は制御不能となり、ついに機械の一部と化す。君はどこなんだい? 
世界が空いっぱいに円を描くと、その光は消滅する。



* dark star: wiki を見るとdark star or dark matterとあり、二つは「ダークマター星」の英語での同意語でいいようだ。これは、宇宙研究ではまだ解明されてない暗黒物質(ダークマター / dark matter)の呼び名違いなだけだと思うが、もしかすると細かな部分で違いがあるのかも。イーノはわりとテクノロジー、科学や哲学などの新しい話題に敏感なので、この曲を制作していた1970年代後半頃に話題になっていた最新宇宙のトピックスを歌詞の中に取り入れていた可能性が十分にある。訳では、宇宙用語から離れプログレっぽくしてみた。


* bay: 前行に "Out in the trees" があるので、湾や入江ではなく山側の近くだと思い、「山の懐」の意味で考えてみた。



posted by J at 09:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 洋楽の歌詞和訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
1年以上前の記事に今更のコメント、大変恐縮いたします。
The Belldogについての長年の謎が晴れました。ありがとうございます。
歌詞中の”dark stars cluster”についてはClusterとの共作にも何かかけているのではないかと思いますがどうでしょうか。
このアルバムは非常に思い入れ深く、LPとCDで所有しており、死ぬときには棺に一緒に納めて欲しいとさえ思います。
Posted by カサイ at 2018年10月12日 19:00
カサイさん

いえ、前のものほどコメント頂けるのは嬉しいです。ありがとうございます。
歌詞などについて語っているイーノのインタビューは少ないので、曲の背景って分かりづらいですよね。それが想像力を広げるのかもしれませんが。
dark stars clusterの clusterはかけていると思います。
このアルバム、未だ聴いても古びないですし、ここにつまっている音の透明感は、ほんと心地よくて、僕にとってもずっと記憶に残る一枚です。
Posted by *J* at 2018年10月14日 13:55
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