2016年10月21日

J.G.バラード "The Atrocity Exhibition" を英語で読む(3)

JG.Ballard-InternalLandscapes-AtrocityExb.jpg
上画像は、下記リンク先のフリーフォント" Bourbon " を使った。
Bourbon Font by Bayley Design : http://fontpro.com/bourbon-font-1567


バラードの短篇小説「The Atrocity Exhibition」の和訳、第3弾。「黙示録」「 精神崩壊にいたるまでの覚書き」と続き、今回は「内的世界」というタイトル。トラヴィスの前に正体不明の男が現れる話。前二タイトルは、この短篇のイントロダクション・導入的な要素だったけれども、この「内的世界」から物語として広がってゆく感じだ。話中に出てくる言葉が、次のタイトルやその中の内容と重なっていたり、後半のストーリーに出てくるシーンが前のタイトルに絡んでいたりして、一見ばらばらに書いているように思えるエピソードが読み進むにつれ、つながっていくのがわかる。

前2回は僕の日本語訳と原文とを一緒にしたけれど、今回は特に書くこともなかった為、日本語訳だけにした。次回からは、訳を要約し解説的なものでいこうと思う(といっても元の英文が短く、要約的なものなので短くしようにないところはある)。バラードは修飾する言葉を幾重にもかけ、言葉のイメージを膨らませる書き方をするので、そのあたりで日本語にどう上手く置き換えたらいいのかが、僕にはまだ難しいところがある。

Apocalypse / Notes Towards a Mental Breakdown / Internal Landscapes


■ Chapter one : The Atrocity Exhibition(和訳したもの)
Japanese translated by Tagong-Boy / original text by J.G. Ballard

内的世界:
Internal Landscapes.

トラヴィスは、左手の震えを押さえながら、向かい側に座る肩のやせた男をじっと見た。誰もいないがらんとした廊下から、まぐさ(明かり取り窓)ごしに入る光は暗いオフィスの中を照らした。男の顔は飛行帽のひさしで部分的に隠れていたが、トラヴィスはアールズ・コートにあるみすぼらしいホテルの寝室にまき散らかっていたニューズウィークとパリマッチの破りとられたページに載っていた爆撃機のパイロットの顔を思い出した。トラヴィスをじっと見つめる男のまなざしは、絶え間ない努力だけで維持していた。

どういうわけか、男の顔の各面は交差しそこなっていた。それらの正しくあるべき分割が、まだ目には見えない特性として一部生じたかのようだった。つまり、男の性格や筋肉組織によって形成された必要要素以外の不可欠要素によって。

なぜこの男は病院へやってきたのか? 30人の内科医のなかに混じったトラヴィスを見つけだすために? トラヴィスは男に話しかけようとした。しかし、その背の高い男は、器具用キャビネットのそばでボロ服をまとったマネキンのように立ったまま何も応えなかった。男の未熟ではあるが同時に年を重ねた顔は、石膏マスクと同じようにこわばった風にも見えた。

数ヶ月が経ち、トラヴィスは数多くの短編ドキュメンタリー映像の中で、肩をフライング・ジャケットにねじこみ独り寂しくたたずむ男の姿を目にしていた。男の姿は、戦争映画のエキストラとして、あるいは眼震について見事に仕上げた眼科用フィルムに映る一人の患者としてだった。抽象的な風景の断片にも似た巨大な幾何学モデルの連なりは、彼らの先延ばしにしていた衝突が、まもなく起こるだろう事をトラヴィスに気づかせ不安にさせた。


「The Atrocity Exhibition」一部・日本語訳PDF

Blog 形式だと続けて読めないぞ、と思ったので、「黙示録」「 精神崩壊にいたるまでの覚書き」「内的世界」の三つを見やすように、A4サイズ内で構成しPDFにしてみた。

● PDF版(0.2MB):A4-TheAtrocityExhibition.1-3-JPN-Translate-2016.pdf


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