2016年08月14日

Rough Sketch for "Civitas Solis" #05

TheBirobidzhanMoonExtra-5.jpg
The Birobidzhan Moon - Extra Edition ( Front Page )
*ダスティン・フーヴァー氏のコレクションより


新聞社「ビロビジャンの月」が発行する同名新聞の号外版。特に大きなニュースのない日でも発行されることのある「ビロビジャンの月」の号外は、その不定期さ加減と時折紙面裏に組まれる特集、絵画や芸術工芸作品の図版に妙味があって、心待ちにしている市民も多い。展覧会や映画公開に先立っての宣伝を兼ねている場合もあれば、何の拍子で取り上げたのかすらわからない場合もあり、そうした自由な編集方針が多くのファンを呼ぶ結果となっている。また毎回趣向を凝らした紙面のデザインも人気がある。不定期刊行のため、創刊以来のレイアウト・フォーマットを踏襲した本紙紙面とは違ったスタイルにし、変化を持たせよう、というのが現編集長の方針だ。そのため「ビロビジャンの月」号外版だけを熱心に集めているものも数多く、蚤の市などでは古い号と新しい号のトレードが行われていたりする。そういった収集家たちがいるのを街の人たちも皆よく知っているため、運よく号外を手にしたものはまずその場で捨ててしまうということはない。ほとんどの人が、シワのつかないよう丁寧に折って鞄の中へとしまい家へと持ち帰る。

「ビロビジャンの月」号外版のコレクターで最も知られているのがダスティン・フーヴァー氏(Mr. Dustyn Hoover)だ。彼の家には号外版専用の棚まである。フーヴァー氏は今までに発行されたほぼ全ての号外を所有していて(どうしても一枚だけ手に入らない号がある)、「ビロビジャンの月」の記者が資料のとして貸し出しをお願いに訪れるほど有名である。そのフーヴァー氏と彼のコレクションを特集した号外も過去に一度発行されたことがあり、彼にとってこの事実は大変な誇りになっている。もちろんフーヴァー氏の家に行くとこの号は一番目立つところに飾られ、まったく折り目すらなく綺麗な一枚ものとして額の中に収まっている。フーヴァー氏は紙片収集家として太陽の都では知られた存在で、彼は日々紙や布に書かれた文字や印刷をくまなく探している。ありとあらゆる紙切れを見つけ拾っては持ち帰り、また拾ってはということを繰り返してきたので家の中は紙切れだらけ、ほぼ毎日にようにその整理に追われている。あまりにもの紙の多さにフーヴァー氏の家の中は他の家よりも湿度が8%ほど低くなっている。部屋いっぱいに積み上げられた紙片が吸湿材の役割を果たしているのだ。また常に手が紙に触れているため、指先がかさかさでフーヴァー氏の各部屋には薬草入りのバームが欠かさず置かれている。三日で一缶を使いきってしまうほど、バームの消費量があまりにも多いため、彼は薬局の隣に引越しをしたほどだ。この小さなエピソードはフーヴァー氏を特集した「ビロビジャンの月」号外版で紹介され、太陽の都の住人たちの知るところとなった。


CivitasSolis-RoughSketch-05-Aug-2016.jpg
Rough Sketch for "Civitas Solis" #05 (Aug. 2016 / 210 x 297mm)
Ink on paper and Digital Effects

posted by J at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 太陽の都 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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