2017年11月22日

1963年の11月22日という日

3books-Wells-Huxley-Orwell.jpg
"The Great Science Fiction" by H.G. Wells (Penguin Modern Classics)
"Brave New World" by Aldous Huxley (Vintage Future)
"1984" by George Orwell (Penguin Modern Classics)



先月ちょこっと触れた「1963年の11月22日の不思議」を改めて。


1963年の11月22日は、アメリカの大統領、J.F.ケネディが暗殺された日として有名なんだけど、実は他にも世界的に名の知れた著名な作家が二人同時になくなっている。「ナルニア国ものがたり」で知られるC.S.ルイス、そして「すばらしい新世界」を書いたオルダス・ハクスリー(*ロック・バンドのドアーズはハクスリーの「知覚の扉( The doors of perception)」という本から命名された)。もしケネディの暗殺という大事件がなかったら、きっとこの二人の悲報がトップ・ニュースとして報じられていたのだろう。現職の米大統領が、それも初めての衛星中継の映像の中で、その死の瞬間が映し出されたという衝撃は、未だに見てもショックを受けるし、半世紀以上経った現在でも真実がわからないまま、不穏な噂だけが一人歩きしてアメリカの闇を深く暗く落としているのは、本当に不気味だ。

さて、この奇妙な日に亡くなり奇妙な縁となった三人のうちの一人、オルダス・ハクスリーはまたさらに違った不思議なつながりを持っている。ハクスリーの祖父はトマス・ヘンリー・ハクスリーという有名な生物学者で、「ダーウィンの番犬」なる異名で呼ばれているらしいけれど、彼の教え子の一人に「サイエンス・フィクションの祖」として知られる小説家、H.G.ウェルズがいる。またオルダス・ハクスリーはオックスフォード大学を卒業した翌年(1917)母校のイートン・カレッジで一年間だけフランス語の教師として教壇に立つが、そのときの生徒にディストピア小説「1984」を書いたジョージ・オーウェル(当時は本名の Eric Blair )がいた。ハクスリー家を軸に、世界で最も読まれ続けているSF小説家が二人(ハクスリー自身を含めると三人になる)もいるのは世の中が(いやイギリスがか?)狭いのか、それとも才能の集まるところに才能が集まってくるという証拠なのかはわからないが、何か不思議な結びつきを感じてしまう。


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ジョージ・オーウェル「1984」。ペンギン・モダン・クラシックス、2003年版の青い表紙のものは、トマス・ピンチョンが序文を書いている。現在の新しいデザインのものは、たしか別の人に変わっていたので、このピンチョン序文を読むためにだけでも一冊買っていいくらい。ハヤカワepi文庫から出ている新訳版「一九八四年」はピンチョンの序文が解説として巻末に収録。

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H.G. ウェルズのSFに関連した小説を一冊にまとめた「ザ・グレート・サイエンス・フィクション」。
彼の代表作といっていい中篇4作品「タイム・マシン」「モロー博士の島」「透明人間」「宇宙戦争」に、短篇8篇を収録したお得な一冊。約680ページとボリュームがある。ブックカバーに大きな目のアイコンがデザインされているのは、ウェルズがフリーメーソンのメンバーだから? ウェルズの英語はわりとわかりやすい。

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ヴィンテージ・フューチャー版、オルダス・ハクスリーの「すばらしい新世界」。
今年、世界中で議論の的になったhulu制作によるネットドラマ「侍女の物語」の原作者、マーガレット・アトウッドが序文を寄せている(通常のVintage版も同じ)。この小説は科学用語や難しい用語・造語、他引用が多いため英文で読むのは難しい。

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2017年11月17日

海外記事訳:「ペンギン・モダン・クラシックスのデザイン史(2)」


「ペンギン・モダン・クラシックスのデザイン史(1)」
からの続き
http://tavola-world.seesaa.net/article/penguin-modern-classics-design-history.html


ペンギン社のHPで3回に分けてアップされていた、ペンギン・モダン・クラシックスのデザイン史についての連載記事。それを読みながら少しデザインについても触れてみよう、と思って訳し始めた今回は第二回目。1980年代から2000年にかけてのブックカバー・デザインについてのものになるが、ただ今回、本文中に登場するのは連なるグラフィック・デザイナーの名前と、フォントの短い説明がさらっと並んでいるだけだから、さほど書くことがなかったり。それに、ペンギン社の長い歴史から生まれた膨大なデザイン・フォーマットの全容は一冊の本が出来るくらいボリュームがあるため、ちゃんと把握してない僕が触れられるようなものでもなく、ただ静かにうなずいているだけになってしまった。
この記事の中でひとつ、興味をひいたのは「1980年代の低迷期」という部分。これがペンギン・ブックスの業績が低迷していたことなのか、それとも本国イギリスの社会全体が停滞していたことに関連しているのかは、ここに書かれている数行から読み取るのは難しい。おそらく、その二つが同時にあったのかもしれない。イギリスは1979年から1990年までがサッチャー政権の時代で、特に1980年代は高い失業率とIRAのテロに見舞われて暗い時代だったような記憶が、ぼんやりと残っている。こうして後から振り返ってみると、そうした背景が本の表紙デザインにも現われているんじゃないかと思えてきたりする。消費者・読者が求める傾向といったものは確かにあるだろうし、それがパッケージ・デザインや色使いから浮かび上がって、時代の風潮に敏感に現れている様が、移り変わりが目に見えるのは面白い。長く連綿と続いてきたシリーズだからこそ、そうした変化がわかるんだろうな。



■ 「ペンギン・モダン・クラシックスのデザイン史(2)」 ( 1981 - 2004 )
Designing Penguin Modern Classics (Part 2)

Japanese translated by Tagong-Boy ( Original text from Penguin HP )
(元記事はこちら) http://archive.is/bkys9
・直リンクでなく「archive.is」で保存したアドレス。元ページは上リンク先に表示されています。


PenguinModernClassics-cover-1981-1990.jpg
左)1981年以降のチェリウィン・マギルによる表紙デザイン。上品な印象を受けるがモダンな要素はさっぱりなく、あまり特徴があるように思えないデザイン。
中)1989年、「モダン・クラシックス」から「20世紀クラシックス」へとシリーズ名が変わり、モノクロ写真を全面に扱ったデザインへと一新。
右)1990年にカラー写真が使われるようになる。 (* 画像は下記ペンギンHPの記事より。)



1980年代の低迷期から世紀の節目にあたるシリーズ改変期まで。ペンギン・クラシックスのクリエイティヴ・エディターを務めるヘンリー・エリオットは、ペンギンモダン・クラシックスのデザイン史が迎える直近の時代を考察する。


1981年7月、ペンギン・モダン・クラシックスのシリーズは、新しいアート・ディレクター、チェリウィン・マギルによって全く違った装いとなった。 本はより大きくなった。オレンジと白の背表紙とアートワークをはめ込んだ白い表紙になり、タイトルは真ん中へ、ペンギン・ロゴはアーチ形になったシリーズ名の下にレイアウトされた。 著書「デザインによるペンギン」の中で、(著者である)評論家のフィル・ベインズはデザインの視点からこの時代を一番の低迷期だと語る。
In July 1981, the Penguin Modern Classics series was given a completely different look, by the new Art Director, Cherriwyn Magill. The books were larger: they had orange-and-white spines and white covers with an inset artwork, centred title and a Penguin logo perched below the overarching series name. In his book Penguin By Design, the critic Phil Baines describes this period, from a design point of view, as ‘the all-time low’.

* perch: 名詞では「止まり木」、動詞では「(鳥が)止まる、置く」という意味の単語。「置く・配置する」という意味なら他の単語でもいいと思うが、主語が「ペンギン社のロゴ」となっているので、鳥にひっかけてこの言葉を選び、ちょっと洒落た感じにしたのかなと思った。

* "Penguin by Design - A Cover Story 1935-2005" by Phil Baines
book-PenguinByDesign-PhilBaines.jpg
* 画像は Amazon より。



1989年5月、このシリーズは次なる模様替えをした。「20世紀クラシックス」と名前が変わり、バックカバーと背は明るい青緑色になった。目立つ白黒写真を表紙の全面に扱い、円形枠に収めたペンギンロゴを乗せて、サボンを使った白のタイトルボックスは動かせるようになった。「サボン」は、ハンス・シュモラーに先立つ著名なペンギン社のタイポグラファーであるヤン・チヒョルトによってデザインされた書体だ。チヒョルトは、社内デザインとタイポグラフィーを「ペンギン・コンポジション・ルール」一式で標準化し、1940年代後半ペンギン社にとても大きな影響を与えた。 彼はクロード・ギャラモン(1480-1561年)による15世紀のフランスの書体を元にしてサボンを作った。 いつものように、大胆な表紙のアートワークはモダン・クラシックスにおけるデザインの基本的な特徴だった。そして、1990年の1月、このシリーズにカラーのイメージが加えられた。そのデザインは次の10年間変わらずにいた。
The series got its next face-lift in May 1989. It was renamed ‘Twentieth-Century Classics’ and the back cover and spine became bright blue-green. Striking black and white photographs filled the front covers, with a floating Penguin logo in its own roundel and a moveable white title box with text in Sabon. Sabon was designed by Jan Tschichold, the legendary Penguin typographer who preceded Hans Schmoller. Tschichold had been extremely influential at Penguin in the late 1940s, standardising in-house design and typography with a set of Penguin Compositional Rules. He based Sabon on a 15th-century French typeface by Claude Garamond. As always, bold cover artwork was the principle feature of the Modern Classics design, and in January 1990 coloured images were added to the series. The design remained unchanged for the next decade.


* Jan Tschichold ‘Penguin Composition Rules’
http://malwi.hotglue.me/penguin

Jan Tschichold's Inspiring Penguins
http://retinart.net/graphic-design/jan-tschicholds-inspiring-penguins/
チヒョルトによるペンギン・ブックスのペーパーバック・デザイン刷新についてをわかりやすくまとめている記事。



PenguinModernClassics-cover-2000-2004.jpg
左) 2000年、シリーズ名が「ペンギン・モダン・クラシックス」へと戻り、ジェイミー・キーナンによるデザインに変わった。
中・右)2004年、「クラシック・シリーズ」のデザインを反映させ、モダン・クラシックスのフォーマットも若干マイナーチェンジする。 (* 画像は上記ペンギンHPの記事より。)



新しい世紀を迎えると、「20世紀クラシックス」は新しい名前が必要になった。2000年2月に、ペンギン・プレスのアートディレクター、パスカル・ハットン監修の元、このシリーズは本来の名前であるペンギン・モダン・クラシックスに戻った。さらに、デザイナー、ジェイミー・キーナンの手によって新たな装いとなった。 バックカバーと背は光沢のあるシルバーになり、本のタイトルと著者名はシルバーのパネルの中へ移された。 キーナンの意図はカバーに様々な書体を使うことだったが、実際には3つの書体だけが使われた。それはフランクリン・ゴシック、トレード・ゴシック、そしてクラレンドンの3種だ。
With the arrival of the new millennium, however, the Twentieth-Century Classics required a new name. In February 2000, under the supervision of Pascal Hutton, Art Director at Penguin Press, the series reverted to its original name, Penguin Modern Classics, and was given a new look by the designer Jamie Keenan. The back cover and spines became glossy silver and the book title and author’s name were moved into a silver panel. Keenan’s intention was to use a variety of typefaces on the cover, but in practice only three were used: Franklin Gothic, Trade Gothic and Clarendon.


3書体はすべてアメリカに関連がある。フランクリン・ゴシックとトレード・ゴシックは、それぞれ1902年と1948年に、共にアメリカで作られた。「ゴシック」はサンセリフを表す20世紀はじめ頃の用語だ。 クラレンドンはロンドンでデザインされ、一般的にはアメリカン・オールド・ウェストを使った「(指名手配風)ウォンテッド」のポスターを連想させる太いセリフ(=飾りのある書体のこと)を持つ19世紀の書体だ。2004年1月、キーナンのデザインは改良された。銀のパネルとカバーイメージの間に、ペンギン・ロゴとモダンクラシックスの文字を含めた白い帯が加えられた。これは前年度に導入されたクラシック・シリーズの新しいデザインを反映したものだ。
All three have American associations: Franklin Gothic and Trade Gothic were both created in the States, in 1902 and 1948 respectively, ‘gothic’ being an early 20th-century term for sans-serif. Clarendon is a thick, serif, 19th-century typeface, designed in London, commonly associated with ‘wanted’ posters from the American Old West. Keenan’s design was refined in January 2004: a white band was added, running between the silver panel and the cover image, containing the Penguin logo and the words ‘MODERN CLASSICS’. This reflected the new design of the Classics series, which had been introduced the previous year.


■ 3書体:フランクリン・ゴシック、トレード・ゴシック、クラレンドン。
Font-FranklinGothic-TradeGothic-Clarendon.jpg
* 画像は右リンクより: http://tagong-boy.tumblr.com/post/167235425171/



(3)へつづく

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2017年11月14日

Pink Curly Hair

PinkCurlyHair-Nov.2017.png
Pink Curly Hair
(Nov. 2017 / 210 x 297mm) Ink and Digital Effects


画像大きめ版: (PNG - 1.3MB) http://tagong-boy.tumblr.com/post/167439560116/

Draft-PinkCurlyHair.jpg
下絵。




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