2020年09月20日

感想:劇場版「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」9/18公開初日(2020年)

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上映時間よりも一時間ほど早く劇場へと行く。前回「外伝」のときは、グッズ類を買い求める行列が出来ていた上に、欲しかったものはほぼ品切れになっていて、パンフレットぐらいしか買えなかった。その悔しさがあったので今回は早めに行ったんだけれども、昨今のインフルエンザもどきが多少影響しているのか、去年のように殺到するような感じではなかった。ちょっと肩透かしをくらった格好。


intro
待ちに待った劇場版「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。公開初日にするか、舞台挨拶のある9/19にするかで迷ったけれども、やはり早く観たい! という気持ちが勝って初日の9/18に行くことにした。二日連ちゃんで観ればいいんじゃない? って思うかもしれないが、上映時間が140分もあるので、二日続けて観るとなると、集中力、そして体力がきっと持たないだろうと感じ、初日を選ぶ。やはり、その選択はあっていた。映画を観終えうちに戻ると、けっこうくたくたで、その日の夜はもう頭が働かずぼーっとし、ちょっと横になると寝てしまう。映画の感想を当日に書いておきたかったが、どうも考えがまとまらずな状態が続いて結局力尽きてしまった。観ている間は、思ったほど"長い"という感じは受けなかったが(体感では2時間くらいの感じ)、気づかぬところでじわり効いていたようだ。「ブレードランナー2049」のときもあとでぐったりきたもんね。

翌日。目覚めは悪くないが、意識はまだくっきりとはせず。買ったパンフレットも机の上に置いたまま、なかなかページを開く気力が生まれない。なんというか、身体中が「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」で満ちていて、これ以上「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の情報を受けつけない感じだった。昼過ぎ、ようやく昨日観た映画のことについて考える余裕ができた。いろんな意味で長い長い作品だった。思い返せば、去年の同じ時期にも「ヴァイオレット〜」を観ていたんだな。

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観客の6割強が女性で年齢層も幅広く、20代中盤のオシャレな女の子から年配の女性まで、男性は20代中盤から30代にかけてが多かったように思う。


 初見の感想
まだ公開したばかりなので、内容の詳細には触れないようにして大枠なことを少し。とはいっても、まだちゃんと作品を消化できていないこともあって、正直、この作品については何を書いていいのかさっぱりわからない。前回の「外伝・永遠と自動手記人形」と比較すると、映画としてのまとまりは「外伝」の方にあるように思えた。今回の劇場版は、二つの大きな軸があって、その二つをつないで一つの映画としてまとめるために、プロローグとエピローグのパートが入っている。なお、この映画を観るにあたって原作小説は読んでない。

プロローグとエピローグは「ヴァイオレットという人について」を語っていて、近い未来の話。そして、主たる二つのエピソードは「ヴァイオレット本人」を描いていて、これは現在の話(ヴァイオレット・エヴァーガーデンが主人公だから、時間軸もヴァイオレット目線でみている)。映画のはじまりは未来からヴァイオレットの生きている現在へと移る。その時間の逆走は、美しい風景のなかを手紙が飛んでいくシーンで描いていて、ファンタジー間溢れる描写が印象的だ。そして今作は、ちょっとコミカルな場面が割合多く和ましてくれる。
映画は60%ほど進んだあたりでひとつのピークを迎え、ここで、会場全体が涙をすする音で溢れる。だが本来一番のクライマックスとなるはずのラスト・シーンに差しかかっても、観客の反応は先ほどのようにはならず落ち着いた状態。感情のスイッチングがどうも途切れた風になっていた。物語から受け取る涙の琴線の種類が違っているせいなのか、それとも、はじめで涙を流しすぎてしまったせいなのかはわからない。ただ、僕は最後の場面で一番揺さぶられたかった。もう一度観にいくつもりなので、そのときにもう少し詳しく観てみたい。
この劇場版「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を一枚で表すとこんな感じだ。観たひとならわかるかな。

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*画像は右リンクより:https://tagong-boy.tumblr.com/post/624939682167488512/


*これまで映画館の座席はひと席おきに間隔をあけていたが、9/21(祝・月)以降は、それもなくなり全席販売になる模様。
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2020年09月12日

いよいよ来週公開!「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」


『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』本予告第2弾 2020年9月18日(金)公開
( KyoaniChannel / 2020.09.11 )

今年は、これ観れたらもう十分だ。



アニオタローランドが一番号泣したアニメ「湖ができるくらい泣いた」ヴァイオレット・エヴァーガーデンを語る(THE ROLAND SHOW【公式】 / 2020.08.29)

なんだローランド、いいやつじゃないか。
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2020年09月05日

劇中曲「リズと青い鳥」は小説でどのように描かれていたか。


【あきすい】吹奏楽で「リズと青い鳥(吹奏楽曲) 全曲版」演奏してみた!
"Liz and the Blue Bird (Wind music version) "【リズ鳥】
(秋葉原区立すいそうがく団!&かんげんがく団! / 2020.04.12)


「あきすい」さんが「リズと青い鳥」の全曲(全楽章)を演奏している。それを聴きながら小説のなかでこの楽曲がどんなふうに描かれていたのか? なんてのを原作から引用しつつ少し考えてみた。「リズと青い鳥」の全楽章がYoutubeで公式(?)に聴けるのは、おそらく、この「演奏してみた! ver. 」ともう一つ「【ふこうよ青い鳥】リズと青い鳥【ふこ吹3】」(ユーフォのコスプレを着て演奏している)の2つくらいしかないんでありがたい。

「リズと青い鳥」はユーフォの音楽全般を担当している松田彬人さん作曲による一大組曲。作曲クレジットは、物語の中で登場する架空の作曲家・卯田百合子になっていて、アニメの世界を現実でも再現している感じがあり、こういう細かなところにも出る遊び心けっこう好きだな。小説での「リズと青い鳥」は全12分【引用(3)参照】という設定になっているが、実際に制作された楽曲は約22分と倍くらいの長さになっている。昔の感覚でいうとLPレコードの片面分の演奏時間、なんかYESやELPのプログレバンドの組曲を思い出したり、懐かしい感覚がよみがえる。

映画「リズと青い鳥」では、「リズと青い鳥」が一曲通して演奏するシーンはなかったけれど、劇場版「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」では最後のコンクールのシーンで編曲版がノーカットで聴ける。演奏時間は約9分弱。一年生編(TVアニメ1期&2期)で披露されるコンクール曲「三日月の舞」は一曲丸々を演奏するシーンはなかった記憶なので、約9分弱もある「リズと青い鳥」の演奏場面が映画の後半、ハイライトシーンとしてぶっ続けでスクリーンに映し出されたのは、けっこうスゴイことだと思う。本当にコンサートを観ているような錯覚に陥ってしまうほどだ。また、この演奏シーンだけで上映時間の10%弱を占めていることになるのだが、これは、劇場版でしか再現できなかった流れなんだろうと思える。


◆ 映画「誓いのフィナーレ」のパンフレットのセンター見開きページには監督らの座談会ページがあり、石原立也監督、山田尚子さん(チーフ演出)、池田晶子さん(キャラデザ&総作画監督)、西屋太志さん(総作画監督)の4人が映画の製作エピソードなどを語っている。石原監督がコンクールシーンについてを少し語っていたので、その部分を書き出してみた。

――演奏シーンはいかがでしょうか。
石原:
演奏シーンは難しかったですね! 久美子が1年生のときの自由曲「三日月の舞」はTVシリーズ2本、劇場版2作で段階に分けて少しづつ曲の全体を見せていったのですが、今回の「リズと青い鳥」は、一曲をこの映画の中で一度に作らなければならなかったので大変でした。物語の最後、コンクールでの演奏シーンだけでも200カットもありますよ!




「リズと青い鳥」の各章は以下のとおり。

第一楽章「ありふれた日々」
第二楽章 「新しい家族」
第三楽章「愛ゆえの決断」
第四楽章 「遠き空へ」



僕が映画「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」にのめり込んだのは、劇中で演奏される「リズと青い鳥」という曲があったからこそで、9分弱に及ぶこの楽曲が、「誓いのフィナーレ」に果たした役割は本当に大きいのだと感じる。もし、この曲がもっと違ったものであったのなら、あるいは、演出や時間の都合で部分的にしか聴けてなかったとしたら、映画の印象はがらっと変わっていただろう。いったい、どんなひらめきでこんな素晴らしい音楽が生み出せたのか? どこかで誰かが魔法を振りまいたんじゃないかって思えるくらい奇跡的な名曲だなと。

以下、小説「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」(武田綾乃著)からの引用。「リズと青い鳥」という架空の楽曲が文章で表現されている箇所を選んでみた。誓いのフィナーレの「公式ファンブック」からは、松田彬人さんのコメントを引用。この方はインタビューや製作エピソードの記事などがほとんどなく、あったとしても囲みのコメントぐらいだったりで、作曲時にまつわる話を知るのが難しい。

では、これより小説のなかから「リズと青い鳥」について書いてある箇所を挙げていこう。今回は「どんな楽曲なのか?」といったような、直接「音」に関係のある描写を選んでいる。

「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」前編、より


◆ 引用(1)
 サンフェスが終わり、吹奏楽部は一気にコンクールモードへと突入した。京都大会は八月の初旬。いまが五月中旬であることを考えると、残された時間は多いとは言えない。
(中略)
 『リズと青い鳥』
 五線譜の上に印刷された文字には、なぜだか以前から見覚えがあった。ユーフォニアムにはファーストやセカンドという明確な区分けがあるわけではないが、譜面のところどころに上と下の音に分かれる箇所がある。四小節と短いながら、課題曲にソロもあった。隣に座っていた奏が値踏みするように目を細める。
「コンクールでは定番の曲ですね。三年前にも全国大会で演奏されていましたし」
「奏ちゃん、この曲知ってるの?」
「まあ、有名ですからね。聞いたことぐらいはありますよ」
 暗に知らないことを揶揄されたような気がして、久美子は曖昧な笑みを浮かべた。
奏は顎をさすると、楽譜の一箇所を人差し指で叩いた。
「ユーフォもソロ、あるんですね。オーボエなんてすごい長さですよ」
「そうだね。カットされなければ、だけど」
 吹奏楽コンクールのA部門には、課題曲と自由曲を合わせて十二分以内に演奏しなければならないという制限がある。これを超えた瞬間に失格扱いとなってしまうため、多くの学校は自由曲を時間内に収まるように編曲する。

(p224-225 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> 小説のなかで「リズと青い鳥」という楽曲が登場するのは、前編・第三章から。サンフェスが終わり、吹部がコンクールに向け集中しはじめたときだ。顧問の滝先生がコンクール演奏用の楽譜を配った場面で、まずこの曲のあらましが語られる。
 このシーンは、映画「誓いのフィナーレ」では描かれてない。新入生の奏が勉強熱心で、楽曲に対する知識が豊富なことや他校の吹部情報を良く知っていることなどが、小説では所々書かれている。もし、2年生編がテレビ・シリーズだったら、こうした奏の一面が描かれていたのだろうな。


◆ 引用(2)
「皆さん、楽譜はきちんと受け取りましたね」
 部員全員に楽譜が行き届いたのを確認し、滝が重々しく口を開く。
「今年の課題曲は『ラリマー』、自由曲は『リズと青い鳥』です。どちらも高難度の曲ではありますが、皆さんの実力に相応しいと私は考えています」
 吹奏楽コンクールでは、規定された五曲のなかから一曲を選んで演奏することになっている。滝が選んだ課題曲IVは五曲ののなかでもっとも演奏時間が短く、三分しかない。課題曲よりも自由曲に時間を多く割きたい。そう滝が考えているのは明白だった。

(p226 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> 課題曲「ラリマー」も架空の曲だ。映画ではこの曲は登場しない。「ラリマー」は鉱石の名前で、呼び名や分類上の名前が他いくつかある。誤解されたまま広まった通俗名称が分類をややこしくしているようで、正確に分けるのは難しいみたい。小説の中でも、ちょっとした解説が緑輝の口から語られる。(p229)
http://crystal-hauoli.com/differencebetweenlarimarandpectlight/


◆ 引用(3)
「自由曲『リズと青い鳥』は、吹奏楽部ではお馴染み、卯田百合子さんの作曲です。ほかにも有名な曲がいーっぱいありますが、それらに比べると今回の曲は知名度が低いです。童話『リズと青い鳥』をもとに作曲された、かなり物語性の強い曲になっています。第一楽章から第四章まで、合わせて十二分ほどあるので、滝先生は結構ばっさりカットしはると思います。この曲の目玉は、なんといっても第三楽章のオーボエのソロ! 後半のフルートとのかけ合い部分がめっちゃ素敵で、一時期はその部分だけCMに採用されてこともありました」
(p229-230 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> 低音パートのミーティングで、楽曲に詳しい緑輝がCDプレーヤーで「リズと青い鳥」をかけながら、この曲についてうんちくを披露する。


◆ 引用(4-a)
久美子は次に楽譜ファイルをベッドの上で広げた。なかに入っている曲はもちろん、自由曲である『リズと青い鳥』だ。
 この曲は昼間の輝緑の説明どおり、四つの章から構成されている。それぞれの章は物語の展開に対応しており、話の一連の流れをつかんでさえおけば、譜面がどのシーンを表現しているのか簡単に予測がついた。

(p242-243 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> 自宅に戻った久美子は夜、ベッドの上で(緑輝から借りた文庫本)童話「リズと青い鳥」を読み始める。読み終えるとPCに入っているこの曲を再生し、童話と楽曲のつながりを探ってゆく。


◆ 引用(4-b)
第一楽章の『ありふれた日々』はリズが少女に出会うまでの日常を、そして第二楽章の『新しい家族』はリズと青い鳥が扮する少女との生活を表現している。第二楽章の冒頭部分にあるダイナミックな旋律は、嵐の様子を模したものだ。金管楽器の奏でる不穏なメロディーには、びゅうびゅうと風の音色が混じっていた。楽譜に指定されている楽器の名前は、ウィンドマシン。その名のとおり、風の音を再現することができる。
 第三楽章の『愛ゆえの決断』は、その大半をオーボエのソロが占める。スローテンポなためにこの章だけで四分ほどあるが、おそらくそのほとんどはカット対象となるだろう。第三楽章の後半はオーボエとフルートのソロのかけ合いがメインだ。オーボエの力強いソロの後ろに流れる、木管楽器の柔らかなささやき。オーボエの旋律は静寂を引き連れ、やがては第四楽章へと移る。『遠き空へ』。その章題どおり、青い鳥はリズのもとから飛び立っていく。華やかで壮大なメロディが、二人の別れを盛り上げる。後半に向かうにつれて音楽が熱を帯び、やがては終局を迎える。夜空に残る打ち上げ花火の余韻のように、音のない空間にハーモニーの残滓が漂う。

(中略)
 第四楽章の曲調は、優雅だが力強い。
(p243-244 / 三 嘘つきアッチェレランド)



◆ 劇場版「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」公式ファンブックに作曲家・松田彬人さんのインタビューが少しだけ掲載されている。「リズと青い鳥」作曲のエピソードが少し語られていた。第ニ楽章『新しい家族』の冒頭で登場する紙を巻いたでっかい回転ドラムのような機材がウィンドマシンと呼ばれるものらしく、映画の中でも登場する。

――「リズと青い鳥」作曲時の印象的なエピソードをお聞かせください。
 特殊な楽器(コントラファゴットや特殊パーカッション)を使いたいというオーダーが一番記憶に残っています。そういった楽器は存在自体を知っていても詳しくは知らなかったので、勉強するところから取り組みました。
(ファンブック・p70より)

* * * * * * * * * * * * 

◆ また、同じくファンブックの巻末ページに原作者・武田綾乃さんのインタビューが4ページあり、そのなかでウィンドマシーンを小説で登場させた経緯が語られている。最近の吹奏楽部のトレンド傾向を取り入れながら、視覚的に面白く見えるように、この見慣れない大きな楽器を物語に取り入れたということだ。以前のインタビューで、武田綾乃さんは次のようなことを語っていた。…最初の「響け!ユーフォニアム」を書いたあとアニメ化されたのを見て、それが次回作の執筆に大きな影響があったのだと。(アニメ映像のように)物語にメリハリをつけ、キャラクターの個性をより強調することで、読者をひきつけるのに参考になったそうだ。以下のインタビューを読むと、久美子2年生編「波乱の第二楽章」でも、映像・アニメ化されることがすでに念頭にあるのだな、と思わせる。

――演奏シーンは小説を書く時には、どれくらいイメージして書かれているのでしょうか?
 演奏シーンは抽象的なイメージしかなくて、作曲家ではないので具体的なメロディまでイメージできているわけではないんです。(中略)絶対に使いたい楽器は小説の段階で決めていて、「リズと青い鳥」であればウィンドマシーンを入れたかったんです。絵的にも面白いし、演奏している人も楽しそうだなと思って。ウィンドマシーンを使いたくて「リズと青い鳥」の「第二楽章 新しい家族」の冒頭が生まれたようなものです(笑)。最近、吹奏楽部の演奏では珍しい楽器を持ち込んで演奏するのが流行っているので、そのトレンドを取り入れたいなと思っていました。
(ファンブック・p100より)



◆ 引用(5)
 自由曲の第三楽章の譜面は、休みだらけだった。小節という名の檻に押し込まれた、数少ないオタマジャクシ。その上にちょこんとのったフェルマータが、感情のない瞳でこちらをじっと見つめていた。
(p263 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> 練習の合間、低音部員たちが談笑しているなか、そのときの久美子の心情や状況を例えるような感じで、このような描写がある。


◆ 引用(6)
安堵したのも束の間、次に滝が指定した箇所は自由曲の裏メロだった。音と音の高低差が激しい箇所だ。キリキリと痛む頭に、久美子は我に返る。どうやら無意識のうちに息を止めていたらしい。
(p354 / 三 嘘つきアッチェレランド)


>> コンクールでのユーフォ奏者を選ぶオーディションの場面。3年生の夏紀先輩が最初にオーディションを受ける。夏紀が演奏している間、久美子は後輩の奏と共に外で待つ。上文は、夏紀がユーフォを吹いているときの久美子の意識と緊張の度合いを描写している。



「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」後編、より

◆ 引用(7)
自由曲、『リズと青い鳥』。四楽章から構成されたこの曲は、『リズと青い鳥』という童話をもとに卯田百合子によって作曲された。そのメインは、なんといっても第三楽章にあるオーボエソロだ。後半ではフルートも交じり、ソロのかけ合いとなる。第二楽章冒頭には短いトランペットソロもあった。
(p16 / 一 憧憬(しょうけい)にアウフタクト)


>> この箇所では、特に目新しい描写はなく要点をまとめた感じの数行。今作では一年生編(TVシリーズ1期・2期)に比べ麗奈の登場シーンは多くないが、こんなふうに「トランペットソロ」という言葉を入れることで、少し麗奈の存在をちらつかせる形になる。


◆ 引用(8)
「今年の自由曲は、オーボエのための曲やと思わへん?」
 こちらを見やる麗奈の瞳は、驚くほどに冷静だった。ぱちりと瞬きをひとつ落とし、久美子は静かに首をすくめる。
「まあ、オーボエがメインなのは間違いないと思う。第三楽章なんて、終盤でフルートが入ってくるとはいえ、丸々オーボエソロだしね」
「去年もオーボエのソロで、今年はさらに目立つようになって……。それってさ、滝先生はみぞれ先輩がいまの北宇治のいちばんの戦力やって思ってはるってことやんな」
「いちばんとは思わないけど、戦力なのは間違いないと思う。オーボエのみぞれ先輩も、希美先輩も」

(p23-24 / 一 憧憬(しょうけい)にアウフタクト)


>> 一年生編(TVシリーズ1期・2期)での、コンクール曲(三日月の舞)のハイライトはトランペット・ソロだった。麗奈は今年の自由曲「リズと青い鳥」における主役がオーボエとフルートのかけ合いであることが、少し気に入らない。滝先生がみぞれの吹くオーボエをとても重視し、彼女の才能を期待ていることがまず大きくある。だか、肝心のみぞれがまだ本来の能力を発揮できずにいることで、麗奈はより一層不満を募らせている。これはハイレベルな演奏者同士でしかわからない、才能への共鳴を垣間見せる場面。みぞれとフルート奏者・希美の2人の関係をじっくり描いているのが、劇場版「リズと青い鳥」で、このシーンも映画「リズと青い鳥」のほうに組み込まれている。


◆ 引用(9)
みぞれがソロを担当する第三楽章『愛ゆえの決断』は、リズの少女に対する葛藤の日々を描いている。後半に登場するオーボエとフルートのかけ合いは、リズと青い鳥の対話を表現しているらしい。
(中略)
 クラリネット、サックス、ファゴット、コントラバス。背後に流れる伴奏は、草原をなでる穏やかな夜風を思わせる。演奏に合わせ、みぞれの身体が微かに揺れる。
『リズと青い鳥』のメイン中のメイン、高校生には難度の高すぎる超絶技巧のオーボエソロ。複雑なメロディーはやがて落ち着きを見せ、そこに希美のフルートが流入する。交互に現れるふたつのソロ。

(p82-83 / 二 独白とタチェット)


>> 小説での描写では、第三楽章についてが最も多く書かれている。この場面も劇場版「リズと青い鳥」にあたる。


◆ 引用(10)
『リズと青い鳥』の第三楽章は、オーボエの独壇場だ。控えめに奏でられた木管を伴奏に、オーボエが堂々と主役に躍り出る。後半には希美のフルートが交じり、かけ合いのようにメロディを作り上げる。
(中略)
人気作曲家である卯田百合子の楽曲のなかでも、このソロ部分は圧倒的な難度の高さを誇る。
(中略)
鎧塚みぞれという優秀なオーボエ奏者がいなければ、滝がこの『リズと青い鳥』を自由曲に選ぶことはなかっただろう。
(p189-190 / 三 彼女のソノリテ)


>> 上に同じく、第三楽章についての描写。


◆ 引用(11)
 フルートの奏でる、蝶の羽ばたきのような音のさざ波。静謐さをたたえた木管の旋律から、第一楽章『ありふれた日々』は始まる。
(中略)
 積み重なるクラリネットのハーモニー。二本のマレットが音板を叩くたびに、グロッケンからきらめく音の粒がこぼれる(中略)加速する演奏。急激にかかるクレッシェンド。チューバが咆哮を上げ、地鳴りを思わせる低音が空間を支配する。ビリビリと空気を揺らす振動は、音の塊そのものだ。
(p235 / 三 彼女のソノリテ)


>> 関西大会へ向けての合宿練習。最後の日が近づいた頃、ようやくみぞれが吹っ切れた演奏を見せる。彼女の本気の演奏を目の当たりにした部員はおろか、指導する先生たちをも唖然とさせる。楽曲「リズと青い鳥」の音楽的な描写は、とても詩的になり、読者にはより音のイメージが付きやすくなる。


◆ 引用(12)
 滝がみぞれを見る。視線を受け、みぞれはリードを口に含む。第三楽章、オーボエソロ。合宿時から変わらない、彼女の演奏の圧倒的な完成度。美しさ以外のすべてを削ぎ落とした音色は、聴者の脳内にえも言われぬ快感を引き起こす。そこに、希美のフルートソロが加わる。二人のかけ合いは複雑さを増し、徐々に緊迫感を生む。滝の手が宙を引くような仕草を見せる。極限まで引き延ばされたフェルマータに、みぞれが苦しげに眉をひそめた。麗奈がすぐさま楽器を上げる。
 第四楽章、『遠き空へ』。トランペットのファンファーレが、暗雲が立ち込めた空気にひと筋の光を見いだす。青い鳥はその翼を広げ、空の果てへと飛び立っていく。その壮大さ、その優雅さ。すべての楽器が一丸となり、たったひとつのテーマをつくり上げる。息苦しさに顔をしかめながら、久美子は正確にピストンを押していく。何度も練習した箇所だ。そう思い、練習していない箇所などないことにすぐさま気づく。左側から聞こえる夏紀と奏の音が、寸分の狂いもなくアタックを決める。滝の腕が激しく上下し、音楽は最大の盛り上がりを見せる。思考する余裕も消え失せ、久美子は必死に滝の指揮に食らいつく。
 楽譜なんぞ見る暇はなかった。走り抜けるフォルテシモが、緊迫した空気に風穴を開ける。吹き抜ける一陣の風は、走りゆく青い鳥の羽ばたきだ。爽快さのなかにどこか寂寥(せきりょう)を感じさせるメロディが、やがて物語の終わりを告げた。
(p324-325 / 三 彼女のソノリテ)


>>吹奏楽コンクール、関西大会での演奏シーン描写。北宇治は全国大会への切符を手にすることが出来なかったため、演奏曲を描く文章もここで終わる。が、とても想像力をふくらませるような筆で、音の像が描かれる。

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(left) 劇場版「響け!ユーフォニアム 〜誓いのフィナーレ〜」公式ファンブック
(right) 「響け!ユーフォニアム・北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」前・後編



響け!ユーフォニアムの楽曲一覧(pixiv百科事典)
https://dic.pixiv.net/a/%E9%9F%BF%E3%81%91%21%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%81%AE%E6%A5%BD%E6%9B%B2%E4%B8%80%E8%A6%A7

リズと青い鳥(吹奏楽曲)
https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%81%A8%E9%9D%92%E3%81%84%E9%B3%A5%28%E5%90%B9%E5%A5%8F%E6%A5%BD%E6%9B%B2%29

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