2018年10月06日

bright sunny day

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bright sunny day
(Oct. 2018 / 210 x 297mm) Ink and Digital Effects

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(PNG - 0.8MB)http://tagong-boy.tumblr.com/post/178762928051/
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2018年09月22日

Paperback Cover Design Gallery (8) カフカ「変身」を最高のタイポグラフィで

Kafka-Metamorphosis-WWNorton.jpg
W.W. ノートン版、カフカ「変身」のブック・カバー。向かって左が初期のヴァージョンで、右側が現在のもの。新しいヴァージョンはタイトルに「The」が加えられ、翻訳者バーノフスキーと序文を寄せたクローネンバーグの書体が変更されているのと、著者名「FRANZ KAFKA」がより目立つようになっている。
(*画像は下記サイト「Creative Review」より)



INTRODUCTION


今回取り上げるのは、カフカ「変身」のペーパーバック・デザイン。主人公が " Transform " する物語の -New- " Translation " 版のカバー・デザイン記事を Translate したものが中心になっている。

まずはじめに「変身」のドイツ語原文を見てみよう。ある朝、この小説の主人公であるグレゴリー・ザムザが目覚めると、巨大な虫に変身していたという、冒頭の有名な一節だ。続けて(英語の)新訳版を並べてみる。多分、このドイツ語を見て、ふむふむナルホドとすぐに読解できる人はそう多くはないだろうとは思うけれど、ドイツ語と英語を言語的にみると「ゲルマン語派」という一つの系統で括られているわけだから(例えば数字の数え方などは、12進法で共通する)、二つを同時に見比べてみるともしかすると何か発見があるのかな、とか思ったり。まぁ、一行程度で、そういったものを見通し出来たりはしないか。



Als Gregor Samsa eines Morgens aus unruhigen Träumen erwachte, fand er sich in seinem Bett zu einem ungeheueren Ungeziefer verwandelt.

Franz Kafka: Die Verwandlung ( German text )
http://www.digbib.org/Franz_Kafka_1883/Die_Verwandlung

*

WHEN GREGOR SAMSA WOKE ONE MORNING from troubled dreams, he found himself transformed right there in his bed into some sort of monstrous insect.

from "Metamorphosis" by Kafka (English translation by Suzan Bernofsky)



カフカの小説は著作権切れになっているので、ドイツ語ならネットで簡単にテキストを見ることはできる。もちろん、読めるかは別だ。多少ドイツ語をかじっていれば、ある程度理解できるのかもしれないが、僕なんかはドイツ語特有の重々しい綴りのシルエットを見ただけで、もうたちまち、手をあげて降参。といって、何も諦める必要はない。「変身」の邦訳バリエーションはすでに数多くある上、新たな訳も刊行されているので(これは名作である証みたいなもんだ)、僕たち読者は選択の機会には恵まれている。個人が翻訳した昨今の Kindle 版までを含めると、一体どれほどの種類が存在するのか把握するのは相当に難しいだろう。当然、英語翻訳版も数多く出回っている。同じ言語系列から枝分かれした英語翻訳の方が、単語のルーツなどを考えると原文の雰囲気をより近く感じられるのかもしれない。英語訳のヴァリエーションについては、いい記事があるので、それはまた今度やってみたい。ここから先は、W.W. ノートン社、新訳版のカバー・デザインについて、を進める。


この新訳版を知ったのは、ネットで偶然見たのがたしか最初だった。古めかしい黄ばんだ紙色の上に、クラシカルな装飾書体による「Metamorphosis」のタイポグラフィが表紙一面を大きく飾っていたブック・カバー。瞬間に、カフカ「変身」のイメージを見事に表しているなぁと、心奪われた。そして、これ絶対に欲しいと思って勢い調べてみたんだけど、その頃はまだ アマゾン.co.jp では取り扱ってなくて、海外書店からの取り寄せだけだった。今では、「ブック・デポジトリー」や「アマゾン」のマーケット・プレイスで買う技(というほどのものでもないが)を覚えたので、何なく手にすることは可能だが、少し前までオンライン上の海外ショップで洋書を買うには、やや気合いを入れないとできないように感じていた。なので、すぐに買うぞ! という熱気はいく分冷えてしまうことになっていたが、「欲しい本」リストにはしっかり記していたので、思い出したときにちょこちょこ売ってないかを調べていた。そのうちに、 アマゾン.co.jp でも買えるようになったので注文し手元に届いた。商品説明では、わずか126ページという薄さがやや気になってはいたが、実際手に取るとペーパーバックにしては、ややいい紙質のもので、明るいクリーム色と上下左右余白を十分にとった文字の組み方でとても読みやすい。デザインをしたのは、ジェイミー・キーナンという人で、2000年にペンギン・モダン・クラシックスのデザインを一新したデザイナーだ。ペンギン・ブックスでのキーナンの仕事を見たい方は以下記事をどうぞ。

海外記事訳:「ペンギン・モダン・クラシックスのデザイン史(2)」(2017年11月17日)
http://tavola-world.seesaa.net/article/penguin-modern-classics-design-history-2.html



M - E - T - A - M - O - R - P - H - O - S - I - S

キーナンのデザインした「変身」のカバーの何がよかったのかというと、タイトルの「METAMORPHOSIS」を上手く並び替え、補足的に「足」を付け加えることで、見事、昆虫の形にしたことに尽きる。しかも、中世ヨーロッパの暗黒的な一面を感じさせる不気味な様相をたずさえて。彼は、13文字ある単語の中から、「M・T・O・H ・I」がシンメトリーであることに気づいて、さらに、この5文字を縦一列に並べると残りの8文字が、ちょうど(2文字おきになり)一文字づつ左右に振り分けられるという偶然を知り、おそらくその段階でそれぞれの文字が視覚的に同じボリュームになるような書体を連想し、非シンメトリー形状の文字をなるべく同じバランスで見せるように工夫を施した。その発想のひらめきは、これまで誰も気付かずにいたまったく新しい発見だったようにみえる。

この素晴らしいタイポグラフィについて書いている記事や、もしかしたら制作過程の話をインタビューしたものがあるかもしれないと思い、調べてみたら「クリエイティヴ・レビュー」というサイトの中で取り上げていて、具体的にどんなプロセスでデザインをしたのかや、制作の背景を知ることができた。またキーナンがブック・カバーのデザインをするに際し心がけていることや、自身の考え方なども語っている。以下後半は、その記事を日本語に訳したので紹介したい。

と、その前にひとつ脱線を。「変身」の主人公、グレゴリー・ザムザが一体どんな虫(あるいは生物)になったのか? というのは、実のところはっきりしない。パブリック・イメージでは、人間大の巨大な甲虫というのが一般的で、本の表紙でもそういった姿で描かれているし、グラフィック・アイコンでもそうしたイメージが定着しているように思える。今回取り上げたW.W. ノートン版のカバー・イメージも、見事に六本足を持った昆虫だし、下記インタビューの中でキーナンは「beetles」だと言っているので、そうした昆虫の形態をイメージのよりどころにしているのがわかる。しかし、小説のなかでカフカは実在する具体的な虫だとは言ってない。ドイツ語では「ungeheueren Ungeziefer(ばかでかい害虫)」という表現を使っていて、また「たくさんの足が彼の目の前に頼りなげにぴくぴく動いていた(新潮文庫・高橋義孝訳・P6)」とも書いている(この部分、英語訳では「His many legs, pitifully thin compared to the rest of him, waved helplessly before his eyes. (W.W. Norton)」、あるいは「His numerous legs, pathetically frail by contrast to the rest of him, waved feebly before his eyes. (Penguin Modern Classics)」という訳になっている)。虫の形態や状態について子細に書いているのに反し、足の数だけは漠然とした数でしか示していない。このことから、生えている足の本数は、6本、8本といった簡単に数えられるような数ではなく、団子虫のようなうじゃうじゃしたものなんではないだろうかと思える。そして、細かな指摘になるが「そのあいだも目はつぶったままであった。(新潮文庫・高橋義孝訳・P6)」という表現は、この生き物に「まぶた」があることを示している。いわゆる昆虫には、まぶたはないので、目をつぶったり開けたりはしない。もちろん、この箇所は擬人化した表現として受け取るべきだろうが、シャーロキアン的な探り方をしてみるのも面白い。ナボコフは、小説のなかで足の数がはっきりと記されていないことに釈然としない様子で、やや投げやり気味ながらも昆虫説をとっている。


冒頭でいわれている「おびただしい数の小さな脚」というのが、六本以上の脚の意味なら、グレゴールは動物学的見地からいって、昆虫ではないだろう。しかし、仰向きになって目覚め、六本の脚が空中にうざうざと顫(ふる)えているのを見出した男にとって、六本がおびただしい数と呼ばれるのに十分なものとして感じられたとしても、不思議はないとわたしは思う。したがって、グレゴールは六本の脚をもっている、彼は昆虫だと見なしておこう。

「ナボコフの文学講義(下)」ウラジミール・ナボコフ(野島秀勝訳)、より
(河出文庫・P154 / フランツ・カフカ「変身」)


いろんな人の思い描くイメージの最大公約数を表したものが、本の表紙イメージとして、読者にはわかりやすいものだとは思うが、物語を読み自分の頭の中で描くそれぞれのイメージが何であるのかは、100人いれば100通りの解釈があるわけで、それが手にした本のデザインと大きく違っているのか、それとも意外と近いものなのか、読み終わったあとに比べてみると読後の楽しみがひとつ増えるような気がする。
では、脱線したのを元に戻し、以下、カフカ「変身」の新訳版についての表紙デザイン記事訳です。


Front to back: The Metamorphosis (CreativeReview / 16 January 2014)

Japanese translated by Tagong-Boy
Original text by Mark Sinclair
Source: (元記事はこちら) https://archive.fo/tVDJ3
・直リンクでなく「archive.is」で保存したアドレス。元ページは上リンク先に表示されています。



WW.ノートン社版、フランツ・カフカ「変身」の新訳に向け、ブックカバー・デザイナーであるジェイミー・キーナンは「変形」の意味合いを形にするため、古いイタリアの書体に手を加えた。 単発カバーやシリーズものの背景にあるデザイン・プロセスを検証しながら、キーナンがどのように制作したのかを、私たちのシリーズ第二弾で話そう。
For WW Norton's new translation of Franz Kafka's The Metamorphosis, book cover designer Jamie Keenan reworked an old Italian typeface to form the shape of the 'transformation' itself. For the second in our series examining the design process behind a single cover or series, we talk to Keenan about how he made it...



ニューヨークを拠点にもつWW.ノートン社版、カフカの古典物話は、スーザン・バーノフスキーによる新訳となり、映画監督のデヴィッド・クローネンバーグによる序文がひとつのセールスポイントになっている。 巡回セールスマンのグレゴリー・ザムザがある朝目覚めると、自分が虫に変身していたという有名な話だ。 アルバート・タン(W.W. ノートン社のアート・ディレクター)はイギリスのデザイナー・キーナンにカバーデザインの依頼をした。 アルバート・タンによると、彼が要求したことはシンプルで「何かかっこよく、かつ粋で、世の中に出回っている沢山の本の中で目立つもの」というだけだった。
New York-based publishers WW Norton’s edition of Kafka’s classic tale is in a new translation by Susan Bernofsky and features an introduction by film director David Cronenberg. The famous story concerns travelling salesman Gregor Samsa who wakes one morning to find himself transformed into an insect. Norton’s art director Albert Tang approached British designer Keenan with the cover commission. According to Tang his requirement was simply for “something really cool, hip and [that] stands out among the numerous other copies out there.”


「本のカバーは一般的に、その本についてほとんど、あるいは全く知らない人たちに向け、物語や雰囲気、そしてスタイル、アイデア、その他すべてのことを売り込もうとするんだ」とキーナンは言う。 「本のカバーというのは、わずか数秒で本のすべてを伝えなければならないコーポレート・アイデンティティに似ている。そういう理由で、たいてい本がヒットする時には、視覚言語に慣れ親しんだ人たちの関心を掴むために、オリジナル感を真似ている他の表紙カバーを目にすることは稀ではない。 古典作品のカバーを手がける事は、デザイナーにほんの少し違ったやりがいを示す。 「カバー(デザイン)が、本にまつわるすべての事を伝える必要性はもうさほど重要ではないんだ」と彼は言う。
" Generally with book covers you’re attempting to sell a story, mood, style, idea and everything else to someone who knows little or nothing about the book at all," says Keenan. " The cover is like a corporate identity that has to convey everything about the book in a couple of seconds. Which is why, when just about any book becomes successful, it’s not unusual to see covers on other books appear that imitate the feel of that original to grab the attention of people who have become familiar with its visual language." Working on the cover of a classic presents the designer with a slightly different challenge. "The need for the cover to communicate everything about the book is no longer so important," he says.


人々が現在もつ本の知識を信頼し、何らかの方法でその知識を利用する(あるいは乱用する)。ある古典作品がいったん著作権切れになると、数種類の違ったバージョンを買えるようになる。アマゾンにある「変身」の廉価版最安値はわずか1.7ポンドだ。だから自分のバージョンを買う何らかの理由を人々に示そうとしなければならない。 
“You can rely on people’s existing knowledge of the book and use (or even abuse) that knowledge in some way. Also, once a classic is no longer under copyright, you can buy a few different versions of it ? the cheapest version of Metamorphosis on Amazon is just £1.70, so you have to attempt to give people some reason to buy your version.”



カバー・デザインについて、キーナンはすぐに決めたんだと言う。「 "The Metamorphosis" というタイトルをカバー・イメージに変えるというアイデア、それに加え、甲虫がもつあの黒光りする性質と、数多くの這う虫がもつ奇妙で厄介なピクついた要素を理解させたいことも分かっていた」と。
For the design of the cover, Keenan says he quickly decided upon “the idea of turning the title of The Metamorphosis into the cover image - and I knew I wanted to get across that shiny black quality that beetles have and that weirdo, fiddly, twitchy thing that a lot creepy crawly things have, too.


「骨折の折れる作業だと思えるこの試みは、そうした特性をすぐに伝えるとともに、同等の黒光りする部分に対し十分に身のつまった本体部分をもつ古いイタリア書体(*1)のスキャン画像を探させる気にさせたんだ」とキーナンは言う。もう速攻で、このタイプフェイスと雄カブトムシのイメージが与える足の組み合わせは、ほぼ最終的な形のカバーとなった。
“This attempt to get across the feeling of ‘fiddlyness’ led to me finding a scan of an old Italian typeface that instantly conveyed that quality and also had enough solid sections for the shiny black part of the equation,” says Keenan. “Fairly quickly a combination of this typeface and some legs donated by an image of a stag beetle produced the cover that pretty much ended up on the final thing.”


*1)キーナンがカバーデザインに使った16世紀頃の「古いイタリアの書体」
16thCentury-ItalianMS.jpg
16th Century. From Italian MS. [31] from "The Book of Ornamental Alphabets"
Author: F. Delamotte
http://www.gutenberg.org/files/23450/23450-h/23450-h.htm
(上記リンク先の「html版」で見れる)→ http://luc.devroye.org/Delamotte1879/
↓ あるいはこっちのサイトで

https://typesoftypography.wordpress.com/2013/02/09/typography-alphabet-ornamental-renaissance-medieval-27-4/



キーナンが最終的なカバー(デザイン)で使った文字の大半は何らかの方法でひねりを加えている(装飾箇所は文字の違った部分に移されたり、丸ごと取り除かれたりした)、だが「 S 」の部分は甲虫の足を加えた上で、オリジナルフォントがそのまま残っている。
このデザインの本当に優れた箇所というのは、キーナンが甲虫の形を作り出すため、どのようにして文字のバランスをとったかということだ。「M」は左右対称の頭部を形づくり、最初の「O」は胴体の中心部を形成する役目を果たしている。そして他の文字は足として横に置いてある。一方「SIS」部分の構成は甲虫の形状の尻部をきっちりと締めくくっている。
Most of the letters that Keenan used on the final cover have been tweaked in some way - curlicues are moved to a different part of the letter, or removed altogether - though the ‘S’ remains as it was in the original font, with the addition of a beetle leg.
The really clever part of the design, however, is how Keenan has balanced the letters in order to create the beetle shape. The ‘M’ forms a symmetrical head; the first ‘O’ helps to form the centre of the body, with other letters flanking it for limbs; while the ‘SIS’ formation neatly closes off the end of the shape.



「補助的なフォントはややゴシック調にし、すっきりとみせている。直線的にすることで目立なくなるんだ」
とキーナンはカバーに配置した残りテキストの字体についてを補足する。
「そして、最終ヴァージョンはエンボス加工をし、甲虫にほんの少しの光沢をつけるためにグロス(インク)を使っているんだ(*2)
“The secondary font is much straighter with just a hint of the Gothic about it, while being straight enough to ensure it doesn’t fight for attention,” adds Keenan of the type used to display the rest of the text on the cover.
“And the finished version is embossed and uses a gloss to give the beetle a bit of added shine.”



*2)エンボス加工とグロス・インク
Kafka-Metamorphosis-WW.Norton-detail.jpg
真正面から撮った書影では分からないが、文字色スミ部分は、バーコ印刷で光沢感と盛り上がりがあり、凹凸の手触りと角度をつけてみると艶やかな光を放つ。

kafka-metamorphosis-cover-inside.jpg
表紙カバーの裏側。表面とは反対に紙の地のまま真っ白で、凹みがある。一見アール・ヌーボー装飾の鮮やかな色彩を脱色したような感じで、デカダンだけれども、モダンな雰囲気もあって、こういうのも悪くない。



イメージの源泉?

もしかすると、なんだけど、キーナンが作成した「Metamorphosis」のカバー・タイポグラフィは、漠然と頭の中で形づくろうとしていたアイデア・イメージが、偶然、古い書体の資料を探していたときに繋がったんじゃないかと思った。あるいは、以前に見ていたものが記憶の中で眠っていて、デザインの依頼を受けたときに、急に浮かび上がってきたとか、何かシンクロニシティ的なひらめきがやってきたような、そんな感じがしないでもない。
下の絵は、16世紀頃、ハンガリーの画家が描いた(装飾写本風の)ボタニカル・アート画。まるで虫が踊っているようなシルエットをした装飾文字と、絵の中央に描かれた虫の絵。この二つの要素が、文字を並べて虫の形を作るというアイデアの遠因になったとしてもそう不思議ではない。「Metamorphosis」の表紙カバーの背景に敷いた古びた紙のテクスチャーは、確かに遠い時代に描かれたボタニカル・アートの色合いを模していて、自分の中で生まれたファースト・インプレッション・イメージの核を残しているようにも思える。

JorisHoefnagel-GeorgBocskay-16c.jpg
http://tagong-boy.tumblr.com/post/160082410321/
Title: Tulips, Fly, Kidney Bean, and Bean
Artist: Joris Hoefnagel (Flemish / Hungarian, 1542 - 1600)
and Georg Bocskay (Hungarian, died 1575)


他出版社のカフカ・デザイン

The Schocken Kafka Library
Schocken-KafkaLibrary.jpg
(画像は右サイトより) http://www.penguinrandomhouse.com/series/SK3/the-schocken-kafka-library
1931年ドイツで創業したショッケン・ブックス社(現在はペンギン・ランダム・ハウス傘下)のカフカ・ライブラリー・シリーズ。目をアイコンにしたシンプルなデザインで、カフカの各タイトルをグラフィカルに表現している。フリーメーソンの象徴とも言われている「プロビデンスの目」を連想させる。デザインはピーター・メンデルサンド(Peter Mendelsund)。手描き風の英文字は、カフカの直筆を取り込んでフォント化したもの。このシリーズのデザインについては、また今度取り上げてみたい。「The Metamorphosis and Other Stories」の英語翻訳は、Willa and Edwin Muir(エドウィン・ミュアはスコットランドの詩人・小説家で翻訳家でもある。カフカの他作品も訳している。日本では岩波文庫から「スコットランド紀行」が出ている)。1933年に出版され、英語圏ではこの訳が「変身」のスタンダードになっているようだ。新潮文庫から出ている、高橋義孝訳のような感じになるのかな。
冒頭のテキストは以下のとおり。


AS GREGOR SAMSA awoke one morning from uneasy dreams he found himself transformed in his bed into a gigantic insect.

" The Metamorphosis" by F. Kafka (full text, translation by Will and Edwin Muir)
http://archive.is/lAKhe
http://www.zwyx.org/portal/kafka/kafka_metamorphosis.html



Penguin Modern Classics
Kafka-PenguinModernClassics.jpg
(画像は右サイトより) https://www.penguin.co.uk/authors/franz-kafka/9042/
2007年、ペンギン・ブックスの現アート・ディレクター、ジム・スタッダートによってリニューアル・デザインとなった「Penguin Modern Classics」。カバー写真は、チェコの前衛写真家ヤロミール・フンケ(Jaromir Funke / 1896-1945)によるもの。カフカの出身地と同時代性に関連をもつ写真家の作品が選ばれている。カフカと交流があったのかは不明だが、同じ時代に同じような前衛的な作品を作っていた共通性は、カフカのカバー写真として使うのに相性良さそうだ。左が「Untitled (Still Life)/1927-28」で、右の目のあるやつが「Untitled (Time Persists Series)/1932」。どちらも正方形サイズにトリミングされている。
こちらの冒頭部分の英訳は以下のとおり。


When Gregor Samsa awoke one morning from troubled dreams, he found himself changed into a monstrous cockroach in his bed.

" Metamorphosis " by Franz Kafka
(Translated by Michael Hofmann)
from Penguin Modern Classics "Metamorphosis and Other Stories" (p75)



in Print 2002「チェコのアヴァンギャルド:写真とブックデザイン」
http://www.taguchifineart.com/installations/CZinst.html
フンケという写真家の名は日本ではほとんど知られてない(僕も知らなかった)。こちらのサイトでチェコのアヴァンギャルド・アートを紹介した展覧会の様子が載っている。

2018年09月10日

Paperback Cover Design Gallery (7) 「ペンギン・モダン・ミニ」のcoolなカバーデザイン

PenguinModernMini-2018.jpg
ペンギン・ブックスのアート・ディレクターを務めるジム・スタッダートによる「ペンギン・モダン・ミニ」シリーズのカバー・デザイン。伝統的でやや高級路線のブランドに多く採用されている「オウ・ディ・ニル(ナイルの川)」というペパーミント・ブルーグリーンをキー・カラーに配している。また「アヴァンギャルド」というフォントを使うことで、著者名とタイトルをグラフィカルに、リズミカルに見せる。シンプルなデザインだが、このフォントで組んだ文字のシルエットは古代のくさび形文字のように造形的な姿になるため、一見アルファベットではなく、何かの石版に刻まれた文様かと錯覚してしまう。表面はマットPP加工で無光沢、おおよそ 110mm X 160mmと手の平サイズ(日本のハヤカワ文庫トール・サイズと近い判型)。だいたいどのタイトルも60ページ前後で、短篇やエッセイを2、3篇収録してある。知らない作家の作品を少し試し読みしたいときの入門編として最適なシリーズだと思う。


今回のこのミニ・モダン・シリーズはいいタイトルが多くて、ちょくちょく買っていた。ペンギン・ブックスの短篇集やエッセイ集などは、けっこう分厚かったり、コンプリートものだったりするのが多く、よっぽど好きな作家でないと買うのに躊躇してしまうが、こういうコンパクトな形態で、かつ買いやすい値段なら一冊くらい手元にあってもいいかなと思えてくる。もちろん僕の場合、最後の一押しになるのは、カバー・デザインの良さが大きく影響している。


2017年にリニューアルした「ペンギン・モダン」シリーズのデザインについては以前こっちにも書いた。
興味あればどうぞ。

● 海外記事訳:「ペンギン・モダン・クラシックスのデザイン史(3)」(2018年01月24日)
http://tavola-world.seesaa.net/article/penguin-modern-classics-design-history-3.html


PenguinModernMini-2018-2.jpg
センターを区切る白いラインの位置にペンギン・ロゴがくる。

PenguinModernMini-2018-3.jpg
本の価格は英1ポンド。現在の為替レートでは約143円。日本でもそれに近い価格で購入できる。
アマゾン.jpでは、一冊150円から160円前後で買いやすい。