2018年04月22日

最近読んだ本と読んでる本(2018年3-4月)

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「The Finger」ウィリアム・バロウズ
1989年に出版された短篇集「Interzone」から6篇を抜粋し収録した" Penguin Modern "シリーズのミニ・ブック〜2018年版〜。表紙カバーは「ナイルの水」カラーとアヴァンギャルド・フォントを使ったものでかっこいい。今回のこのシリーズはラインナップがめちゃくちゃ良くて、G.オーウェルの「Notes on Nationalism」はじめケルアックや、スーザン・ソンタグなどが出ている。
寝る前に一ページづつ訳しながら地味に読み進めているところ。この頃のバロウズは、さほど難解な文章ではなく、けっこう読みやすい。「Interzone」って邦訳が多分出てないんだよな。


「まるで天使のような」マーガレット・ミラー
これは評判どおりのいいミステリーで、すごくよかった。いや、ものすごくいい。買ったはいいものの二年ほど本棚に入れたままだったけれど、ふと急に手にとって読み始めたら止まらず、一日で読み終えた。
カジノですっからかんになった主人公クインが友人の車に同乗し、途中、知らない場所に降ろされてしまう。近くにあったのは<塔(タワー)>と呼ばれる新興宗教の修道院、そこに寝床と食事を求め入ったところ、ある修道女から人探しの依頼を受け、その人物を見つけようとするが…というはじまりで、プロット、話の展開、セリフ、等々何をとっても読ませてしまう魅力に満ちた文章。ここまでクオリティの高い小説は、そうそう出会えないので嬉しい収穫だった。舞台は冒頭の森の中の修道院から、誰もが顔見知りの小さな町「チコーテ」へと移り、閉鎖的なこの町で起こった過去の事件を掘り返すことになる。アンナ・カヴァンの「氷」とピンチョンの「インヒアレント・ヴァイス」なんかも彷彿させるところがあって、現実的なスリリングさと寓話性の混じったトーンにすごく緊張感があり、読んでいる最中にだれる箇所が一切なかった。ミュージシャンズ・ミュージシャンという言葉があるように、小説家が読む小説、といった感じの完成度の高さ。いや、ほんとすごい。


「謎解きゴッホ」西岡文彦
ゴッホの半生と、絵に秘められた謎を分かりやすく書いた本だが、充実した内容。ゴッホは、激情の感情を持った絵描きだというイメージを持っていたけれども、確かに性格面ではそういった要素があり、それが生き様と奇行エピソードにも現われてはいるが、絵に関していえば、実は超理論派であの激しいタッチの筆使いも厳密な色彩理論を忠実に守ることで生まれていたんだ、というあたりは意外な事実だった(プロテスタント育ちの環境がある種、言動の根っこになってもいた)。そういや本当の天才って、みな理論派で論理的なんだよな。ピカソにダリ、岡本太郎も、マイルスも。


「おもいでエマノン」鶴田謙二・梶尾真治
鶴田さんの絵につられて読んだコミック。原作は梶尾真治さんの小説らしいが、未読。でも、このコミカライズはきっと成功しているだろうなと思えた。旅と時空ものSFファンタジーがうまく混ざっていて、郷愁感と人間の存在って何? っていう哲学的なテーマが読後にじんわり広がり、そうした余韻がたまらない作品。何度も読み返したくなる。


「サンデーとマガジン」大野 茂
サブカルものの軽い新書だと思って、さらっと読むつもりがけっこう密度の高い内容でびっくりした。当時の社会状況、そして今に至る日本の漫画文化の形勢のされ方が、漫画作品とその背景と共に書かれていて、俯瞰すると日本人の嗜好性のようなものも垣間見えて面白い。互いに部数を競い合ういいライバル関係であったからこそ、数々の名作が誕生したのだと。
ぼくは小学校の頃はジャンプ派だったので、サンデーとマガジンはちょっとお兄さん的な存在がして、あんまり読みたいのがなかった記憶がある。この二冊、ジャンプより古かったのかと、いまさら知る。少年ジャンプや他青年誌が誕生する流れに時代が傾いていくあたりまで。


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2018年04月20日

Paperback Cover Design Gallery (5) 古典は「繰り返す」

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"Treasure Island and The Ebb-Tide" R. L. Stevenson (Penguin English Library)
南国のトロピカルな島を連想させるイメージと色使い。


先月、スティーヴンソンの「宝島」と映画「ブレードランナー2049」の事を書いたとき、このペーパーバック本のブックカバーについても一緒にまとめようと思っていたんだけど、関連画像が多くなりそうなのでまた改め別に書くことにした。「ペンギン・イングリッシュ・ライブラリー」というシリーズ名で出ているペーパーバック・カバー・デザインからスタートし、他古典文学作品の表紙デザインについてを少し。

R.L.スティーヴンソン「宝島」とブレードランナー2049 (2018年03月17日)
http://tavola-world.seesaa.net/article/r.l.stevenson-and-bladerunner2049.html


今は何かを読もうとするなら、紙の本だけじゃなく、電子書籍でも読むことができるし、著作権切れのものならさまざまなフォーマットでテキストが用意されていて、特にお金を払わなくとも、また期限の制限なども気にすることなく小説や詩なんかを楽しむことができる。読む側からすれば、こうした選択肢の多さは大いに歓迎すべきものなんだろう。ただ、「いつでも読める」というふうに思ってしまうと、そのうち読もう、いつか読もう、読む機会があったときにでも、とだんだんと意欲のトーンが弱まってしまい、結局読むことすらしなくなり、そのうちに「読みたい、と思っていた気持ち」そのものを忘れてしまったりと、何か執着心のようなものが自分の中から消えていることに、はたと気づき、これがいいことなんだろうか? と思ったり。僕の場合は、モニターで沢山の文字を読むにはどうしても限界があって、無限にあるネット・アーカイヴの魅力やその存在を横目で眺めながらも、結局は紙の本で読むことに落ち着くわけだけど、適度な本の重さや、それぞれが持つバリエーション豊かなカバー・デザインは、脳の中にあるブックシェルフ上でタイトル毎に組み合わさり、こうしたグラフィック・アイコン的なものがインデックスとしての役割を果たしていて、意外と読むための訴求へと繋がっているような気がする。といってもほんと微弱なものにすぎないんだけれど。

こんなふうに、テキストだけならネットでいつでも読めるわけだから、特にパブリック・ドメインになった古典作品などは、「本」という商品として売るのは難しくなっているんだろうと思う。テキストだけを読みたいのなら、書いてある中身は同じなわけだから、そりゃ安いほうがやっぱりいいに決まっている。そうなると粗悪な紙、粗悪な印刷、粗悪な製本といった具合に、品質の悪いものが幅をきかせることになっても不思議ではないけれど、意外や、コストは確かに抑えたものではあるが、デザインを工夫することで材質(紙や印刷)の低さをうまく打ち消して仕上がりのいいものがわりとあったりする。
今の時代に生きている作家が書き、今の時代の人(特定の読者層)に読まれることを求めた本なら、ブック・カバーのデザインは斬新で、そうした「時代感」に合わせパッケージングするべきなんだろうとは思うが、100年、200年以上も前の物語をどんなふうにしてヴィジュアル化すればいいんだろうと考えると、幅広い人に合わせた最大公約数的な、尖がってないデザインに最終的には落ち着いてくるように感じる。そして、その落ち着かせ方が地味になりすぎないように、でも特異になりすぎないようにバランスをうまく取るのは意外と難しいのかもしれない。イラストや写真を使うとパッケージとしての賞味期限が短くなってしまうし、固有感も出てきてしまう。クラシックス本の場合、抽象図形の反復や模様・パターンを上手く使うと、時代を経ても色褪せない物語が持つ上品さと深みが出てけっこういいんだなと、思う。
「ペンギン・イングリッシュ・ライブラリー」は評論家や誰かが寄せた序文、解説などがなく本文テキストだけ、そして表紙の紙も特に厚みもなくまたコーティングしたり下地を敷いたりもせず、けっこう廉価になるように仕上げてあって、これ主は学生向けのシリーズなんだろうなと。
角川からも、日本の古典文学作品の廉価版的なシリーズが出ている。デザインのフォーマットが統一されて、ちょっと揃えたくなる。


The Penguin English Library
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“Where Angels Fear to Tread(天使も踏むを恐れるところ)" by E. M. Forster (1905)
“The Garden Party(園遊会)” by Katherine Mansfield (1922)

“Persuasion(説得 )” by Jane Austen (1818)
“Great Expectations(大いなる遺産) “ by Charles Dickens (1860-1861)
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* 画像は右リンクより:http://tagong-boy.tumblr.com/post/172997106026/



Vintage Classics Austen Series

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* 画像は右リンクより:http://tagong-boy.tumblr.com/post/172472027501/

ヴィンテージ・クラシックスのジェーン・オースティンシリーズから「ノーサンガー・アビー」と「説得」。
かわいい手描きのパターン絵を使ったカバー。



角川文庫×かまわぬ・手ぬぐい柄シリーズ

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「瓶詰の地獄」夢野久作 / 「山の音」川端康成

てぬぐい専門店「かまわぬ」の手ぬぐい柄を表紙絵に使った文庫シリーズ。
凹凸テクスチャーのある紙に印刷されていて、より布地感が出て手触りもいい。

「家出のすすめ」寺山修司 / 「それから」夏目漱石
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* 画像は右リンクより:http://tagong-boy.tumblr.com/post/172469379261/

2018年04月18日

Who's there?

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Who's there? She felt the eerie presence.
(Apr. 2018 / 210 x 297mm) Ink and Digital Effects

画像大きめ版: (PNG - 0.9MB) http://tagong-boy.tumblr.com/post/172994939751/


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下絵



● 下記リンクのフリーフォント " Party at Gatsby " を使った。
Party at Gatsby's font : http://www.fontspace.com/tysmagic/party-at-gatsbys

posted by J at 09:00| Comment(0) | ■ Drawings | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする