2017年06月27日

New wave 好きにはたまらない二冊の本

book-BushOfGhosts-Charlotte.jpg
Amos Tutuola "My life in the bush of ghosts" and Penelope Farmer "Charlotte Sometimes"


いや、やっと届いた。エイモス・チュツオーラの「マイ・ライフ・イン・ザ・ブッシュ・オブ・ゴースツ」。一応イーノのファンだけに、この本はずっと読まなければ、と思ってはいたものの、絶版の邦訳本は復刊しそうな気配がなく中古本でも見たことがなかったんで途方に暮れていた。さすがにこのまま、ずるずると読まずじまいで終わるのもどうかと焦りはじめ、この際、いい機会だから英語で読むことにした。ただ、最近岩波文庫から処女作「やし酒飲み」に続いて「薬草まじない」も出ていたりもしているので、もしかしたら近いうちに復刊するのかも、なんて淡い期待を傍らに抱きつつ。

チュツオーラはアフリカ、ナイジェリアの作家。だから、てっきり彼の小説は現地(ヨルバ)語で書かれ、それを英訳しているのかと思っていた。ところが実際はそうではなく、チュツオーラ自身がヨルバ語を英語に置き換え、はじめから英語で小説を書いていたものなんだそう(邦訳本も重訳だと勘違いしていたり)。なもんでいわゆるネイティヴな英語ではなくて、ちょっと変なところがあって、それが1950-60年代に巻き起こっていた新世界文学の流れの中でうまくハマり、もてはやされるようになったとか。T.S.エリオットが出版に一役かっていたという話も意外だった(裏カバーのキャッチコピーより)。英文としては、少しカタコト的な移民文学にも似た感じがありそうだし読むのが楽しみ。最近、英語以外の言語を母語にし育った人が、英語圏で生活したり勉強したのちに、自分の表現言語を英語でどうやって組み立て、構築するんだろうか、というところに興味があって、そんな小説を読みたくなっている。チュツオーラはじめ、他ナボコフだったり、ジュンパ・ラヒリとか(ラヒリは、小説家になってからイタリア語の勉強をしてイタリア語でエッセイを書いている)。こうしたトランス・ランゲージ的なもので、かつ主要言語でないものから派生した文学って、ネットの時代の今、これから先の時代に合っているようにも思え、また新鮮なような気がする。
「ブッシュ・オブ・ゴースツ」を軽くつまみ読みすると、僕のような中学生レベルでもけっこう読めるところがあり、そうだったのならもう少し早くに読んでいればよかったなと少し後悔。やし酒飲みの方は、岩波文庫で読んでいた。森の中をさ迷い歩くところなど、二作の内容は少し似ていて、民話を現代にアレンジしたような話。

もう一冊は、ペネロープ・ファーマーの「シャルロット・サムタイムス」という本。これは、ザ・キュアーのヒット・シングルと同じタイトル。それもそのはずで、ヴォーカルのロバート・スミスがこの本を題材に曲を作り、また物語の一部を歌詞に取り入れている。ロバート・スミスはこの小説が好きらしく、あと2曲、この本から言葉を引用し曲を書いている。このあたりは、そのうち詳しく書くので今回はさわりだけ。ペネロープ・ファーマーは日本ではほとんど知られてないが、英語圏では人気のある児童文学の作家。「シャルロット・サムタイムス」は1969年に出版され、何年か前に40thエディションの記念版が出ていた。これも邦訳が出なさそうなので(昔一度だけ出版されていたがもちろん今は絶版)、勉強がてらチャレンジしようと思った。でも児童文学、向こうではローティーンの子供たちが読むような感じなので、けっこうやさしめな英語だった。寄宿学校を舞台にした物語で第一次世界大戦が背景にある。

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2017年06月25日

雨と雫

EndlessRainRecord-KyoueiDesign.jpg
"endless rain record" rain side and drop side
* 画像は「共栄デザイン」HPより


数日前、ロイヤル・シェイクスピア・シアターで売られている(土産用の)鉛筆がユーモアたっぷりだと、ツイッターで話題になっていた。それでちょっとピンときて、文学関連の名言などに関する面白いプロダクトがないかと探していたら、それとはまったく関係ないけれども、アイデアある素敵な音作品をみつけた。「endress rain record」という名のレコード。ドイツのテクノ・レーベルからいくつか音楽をリリースしているオカモト・コウイチさんを主体にした「共栄デザイン」というユニットがあって、そこのサウンド・アート作品になるのかな? 試聴音源がサイトにはなかったけれど、ただひたすら雨の音と雫が落ちる音がループしていくものなんだろうな。ピッチを変えるとトーンが変わるようなので、いろいろ遊べそう。イコライジングしてスコールになったり、小糠雨になったりしたら音響的にも楽しくなる。


"To be or not to be, that is the question" from 'Hamlet' by Shakespeare

HamletPencil-2BorNot2B.jpg
山崎貴 (Twitter): https://twitter.com/nostoro/status/877118085634727936

2B Pencil (RSC shop): https://www.rsc.org.uk/shop/item/52115-2b-pencil/
一本0.85ポンド。現在のレートで約120円ほど。



endless rain record(共栄デザイン)
http://www.kyouei-ltd.co.jp/endless_rain_record.html
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2017年06月24日

カポーティとアヴェドン

Penguin-Capote-Avedon.jpg
"In Cold Blood" and "Breakfast at Tiffany' " (Penguin Modern Classics)
* 画像は出版社HPより


アマゾンを見てたときにちょっと気になるペーパーバックのカバー・デザインが目に入り瞬間手が止まった。白地にややハイキーなモノクロームの写真、そして淡いミントブルーの文字色が、すごくおしゃれ。著者はカポーティで、彼の小説いくつかが同じフォーマットで数タイトル並んでいて、見ているうちに欲しくなってくる。そこで使われていた文字の色が、モノクロの写真に良くあっていて一段と上品な印象を受けた。カポーティの「ティファニーで朝食を」に引っ掛けたわけじゃないはずだが、たまたま宝石ブランドの「Tiffany」のキー・カラーに近い色だったので、その高級なブランド・イメージと結びつき、きっと読者には、より洗練されたブック・カバーとして受け止められる感じもする。(昔のペンギン・ブックスは、例えばオレンジはフィクション、緑は推理小説、紫はエッセイ等と、ジャンルによってベース・カラーを変えていたようなので、最近ロゴ色がオレンジからライトブルーへと変わったのには何か理由があるんだろうと思う。)

特に「冷血」での、Mugshot風ポートレート写真(Perry Smith と Dick Hickock)の使い方は上手だと思えた。今まで出版されていたこの小説のブックカバーになっていたタイポグラフィやイメージ写真で構成されたものより、断然説得力がある。ペンギンのHPには、新しくモダン・クラシック・シリーズで刊行するカポーティの各タイトルは、リチャード・アヴェドンの写真を使用、との記事があって、ああ、どうりでどれもいい写真だったんだと、妙に納得いった。
アヴェドンの写真は構図が完璧すぎて、一枚の絵としての完成度、あるいは純度が高すぎるという面がある。それゆえ全くの隙がない為、写真の中に文字を入れたりトリミングするのが非常に難しい。はじめから商用目的で撮ったものには(レコジャケや広告など)、まだレイアウトできる余地は残しているが(アヴェドンは意識してやや緩く撮ってはいると思う)、自身の作品であるほどにそうした要素は消えてゆく。そのことが関係しているのか、今回の一連のタイトルではどれも、ネガのふちを入れたフル・フレーミングの写真をそのまま使っている(もしかすると、アヴェドンの写真を管理している財団が D.アーバス財団のようにトリミング等の不可というメッセージを出しているだけかもしれない。ただそうであったとしても、アヴェドンの写真は何かデザインの「素材」として加工することには向いてない)。

まぁ、このモダン・クラシックから新しく出ているものは、写真のセレクションがほんと絶妙で、ヘンリー・ミラーの「Rosy Crucifixion」三部作にはエリオット・アーウィットの写真を使っていたり、物語の世界を表した一枚をほんと的確に、そして今の時代に合わせたものを選び出している。
https://twitter.com/penguinpressart/status/652479205322682369


On Truman Capote and Richard Avedon (Cover story)
https://www.penguin.co.uk/articles/on-writing/cover-story/2017/jun/truman-capote-and-richard-avedon/